オーナーが必要とする右腕/外部人材と共に栄光の時代を築く
鈴木栄光堂 代表取締役社長 鈴木伝
月刊事業構想 編集部
2019/01/28 (月) - 18:00

岐阜県大垣市に本社を置く製菓メーカー、鈴木栄光堂。積極的なM&Aや海外進出で
急速に業績を伸ばしている。外部人材の採用にも従前から積極的に取り組み、
このほど日本人材機構からベトナム進出推進のための人材を採用した。

急成長の原動力は外部人材

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鈴木栄光堂はチョコレートやクッキー、キャラメルなど、様々なカテゴリーで事業を展開。クレーンゲームなどの景品用菓子の製造では最大手

――海外進出のために必要な人材を、日本人材機構からご紹介させていただきました。

鈴木:ベトナムでの展開を任せたいと考えていて、いい方を紹介して頂いたと思います。彼は数字をきっちりと追うことができる。目標が明確で、自分が何のためにベトナムに行っているのかということを理解してもらっています。うちのような田舎の企業では、海外展開が前提の新卒採用ということはあり得ません。お菓子全体の輸出が250億ぐらいと言われていて、そのうち1割強の30億が当社なのですが、そうした海外展開やM&Aなどの際に、自社の育成だけでは追いつきません。

――社員の中で、外部人材に対する抵抗感のようなものはなかったのでしょうか。

鈴木:私は大学を卒業後にニチメン(現双日)で働いた後、家業であるこの会社に入りました。15年ほど前ですが、その時の社員は5人でした。現在はグループ合わせて300人ほどいますが、ここまでになるまでには、多くの外部からの採用をしてきています。
最近では新卒採用も増えましたが、中途採用の社員の頑張りによって成長してきた側面があるので、そういうものはないですね。そもそも、私も東京でサラリーマンをしていたわけですし、入社ですから。

――採用された方には、どのような方がいらっしゃるのでしょうか。

鈴木:最近では、ブランド戦略部長として大手の製菓会社から1人採用しました。彼は53歳で前職では事業部長でした。他の社員ができないマーケティングやプレゼン能力を発揮してくれて、この間のキャンペーンでは売上を1.5倍にしてくれました。航空会社とのコラボなど、彼が来なければできないことばかりです。

優秀な人材を「口説く」方法

――そうした優秀な人々を、次々と「口説く」ことができているのはどうしてでしょう。地方のオーナーの皆さんの悩みの一つに、東京の人材を採用したいけど、どうやったら来てくれるのか分からないというところがあります。

鈴木:うちの事業は、“比較的どこにもない”ものなんです。「ニッチトップとイノベーションでオンリーワンになる」ということを掲げています。やりがいのある分野に映ると思いますし、来てもらった人にはしっかりと任せることも伝えます。よそがやらないことを一緒にやりませんか、そこが面白いですよと。そうした戦略の説明が一番大事なのではないでしょうか。

――オーナーが戦略を明確に伝えることは、採用の最強のキラーコンテンツですね。

鈴木:もう一つ、立地も重要です。岐阜は東日本にも西日本にもアクセスがしやすい。物流を考えても、東西どちらにも同じようなサービスが提供できる。田舎ですからいろいろとコストも抑えられますし、地方企業だからこその優位性もあるんです。

――今後の採用プランはどのようにお考えでしょうか。

鈴木:この2年で6人の幹部人材を採用しました。かなり駒がそろってきたなという印象です。M&Aは1年で1社と決めていて、その際には社長候補となる人材を採用します。ただ私は、採用した人材に(M&Aをした)その会社だけをやらせるという気はありません。5~6年、そこでやってもらって、本社に戻すとか他の会社をやらせるということを考えています。その人に依存するような、俗人的な体制が嫌なのです。ローテーションをすることで、会社の力も上がっていくと思います。

――M&Aごとに経営幹部人材が増えていくわけですね。

鈴木:もっと言えば、自分自身についても同じです。自分はさっさと引退して、より仕事ができる人に譲るというのが一つの理想です。極端に言えば同族でなくてもいいと思っています。専務(大手企業出身の外部採用)は優秀ですから。

――素晴らしいビジョンですね。オーナーでありながら、自分自身よりも会社の将来というのは、なかなかできることではありません。しかしそうなると、鈴木家の伝統の継承はどうなっていくのでしょう。

鈴木:鈴木栄光堂は、2代目の経営者にあたる曽祖父の時が一番大きかったと思います。曽祖父が会社組織にしたので、初代社長となります。「ゼリコ」というブランドもそれなりに知られていました。その後、会社としては縮小してしまったのですが、15年前にこの会社に入った時、曽祖父の時代のようにしようと思ったのです。当時社員5人だった会社がここまで大きくなったし、曽祖父へのコミットとしてはこれで十分かなと思っています。私で経営者として5代目で、鈴木家(当主)としては10代目ですが、もしかしたらもう、鈴木栄光堂ではなくてもいいのかもしれません。パブリックカンパニーにしていかなければならないと思います。株式会社なのだから、やがては上場ということもあるでしょうし。

――そこまでのお考えをお持ちだとは、驚きました。

鈴木:会社のステージごとに、必要な人材は違ってきます。それは自分も同じ。会社が必要とする人材が経営を担うべきです。

――素晴らしいお考えですね。

鈴木:言い方は悪いかもしれませんが、好きでやっているわけではないので、地位にこだわるつもりはありません。会社が成長すること以外に大事なことはありません。優秀な人材に後を任せたら、まったく他のことをやってみたいと思っています(笑)。
 

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鈴木栄光堂 代表取締役社長

鈴木伝(すずき ゆずる)さん

1968年生まれ。岐阜県出身。慶応義塾大学卒業後、ニチメン(現双日)に入社。鉄鋼など様々な商品取引に携わる。2002年に家業である鈴木栄光堂に入社。04年に専務、08年に代表取締役社長に就任。積極的な海外展開とM&Aによって、同社の成長を牽引する。

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