日本にはふるさと納税という制度があり、自身の出身地や応援したい自治体などに寄付をすることで、税金の控除を受けたりお礼の品を受け取ったりできます。ふるさとを活性化する取り組みとして、完全に社会的認知を得ていると言ってもよいでしょう。
ところで「ふるさと副業」という言葉をご存じでしょうか。これは最近になって新たに始められた1つの働き方ですが、まだふるさと納税ほどには知名度が高くありません。そこでこの記事では、多くの人にふるさと副業を知ってもらうため、その仕組みについて解説します。
副業に関する意識の変化
新型コロナウィルスによる社会変化は、日本国内での働き方にも大きな影響をもたらしました。オフィスに出社しなくても、オンラインで仕事ができてしまうという発見と、本業以外に副業を始める人が増えたことは、その中でも特に大きな変化だといえるでしょう。
厚生労働省が2020年7月に行った「副業・兼業に関する労働者調査」によると、調査に参加した労働者159,355人のうち約10%の人が実際に副業をしていると回答しています。政府としても副業を推奨する姿勢をとっているため、今後はさらに割合が増加すると考えられます。
2020年に登場したふるさと副業
ふるさと副業という働き方は、2020年2月に、ある人材派遣会社が提案した新しい副業の形です。その考え方にはふるさと納税と共通する部分があり、副業の求職者が自身の出身地や、応援したい地域の企業に雇用の場を求めることがコンセプトです。
この取り組みを促進するために、求職者と地方企業とを結ぶマッチングサービスや、副業のプロジェクトを立ち上げる動きが徐々に広がっています。認知度が高まれば、多くの求人サイトが参入する可能性もあるでしょう。
ふるさと副業の仕組み
ふるさと副業には、特に決められた定義はありません。業務形態や勤務日数などにも規定はなく、非常に幅広い業種業態が含まれます。自由度が高い反面、ポイントがつかみづらいので、ここからステップを踏みながら解説しましょう。
ふるさと副業が生まれた背景
あえて「ふるさと副業」という名称で、ほかの副業との違いを明確にしているのは、地方の産業を活性化するという目的があるからです。現在の日本では地方の産業と、それを担う企業や事業者が慢性的な人材不足に悩まされていて、そのために経営規模を拡大することが難しくなっています。
一方で本業での収入が減少するなど、さまざまな理由から副業を検討する人の数は増えています。しかもオフィスに通勤しない働き方が可能になり、個人が自由に活動できる時間も増えました。このように、地方からのニーズと副業求職者の意向がマッチしたことで、ふるさと副業が可能になったといえるでしょう。
ふるさと副業で得られるメリット
人材を確保する地方企業の立場からすると、優れた人材に業務の一部を任せられるというチャンスが生まれます。それが業務の質を高めることになり、経営規模の拡大につながるかもしれません。または、単純に人材不足の解消にも結びつくでしょう。
次に、副業をする側から考えると、自分が応援したい地元や地方に貢献できることから、仕事に対するやりがいと満足感が得られます。しかも収入アップにつながるのみならず、本業では得られない働く楽しみを見つけられるかもしれません。
最初は月に数日から週に数日、短時間の副業から始めることも可能です。本業とのバランスを調整することで、今までよりも自由で充実した生活ができるのではないでしょうか。
ふるさと副業の具体的事例を紹介
ふるさと副業をさらに拡充して、地域産業に貢献するプロジェクトを立ち上げ、副業の求職者と企業とのマッチングを図る取り組みも始まっています。この事業では地方企業やNPO団体を軸にして、さまざまなプロジェクトを提案しています。その一部を紹介してみましょう。
〈ふるさと副業プロジェクト事例〉
・ローカルスーパー商品開発プロジェクト
・グルメスポット紹介サービス開発およびマーケティング戦略企画プロジェクト
・製材企業の新規事業開発プロジェクト
・老舗鮮魚店のECブランディングマネージャー募集
・町工場の取引先拡大ディレクター募集
こうしたプロジェクトの募集要項では、リモートワークが可能なケースも多く、シフトにもかなりの柔軟性があります。自分が持っているスキルを、本業以外で活用できるチャンスになるかもしれません。
ふるさと副業の課題と将来
新しい働き方として、今後の展開が期待されるふるさと副業ですが、やはりいくつかの課題が浮かび上がっています。1つは募集そのものが、まだそれほど多くないことです。参考になる事例が少ないという問題もあります。これらの点は、今後の広がりが解決のカギになるでしょう。
もう1つの課題は、根本的な地域産業の人材確保にはつながりにくいことです。リモートワークになると、実際に雇用先を訪れることもありません。地方企業としては、副業から本業に転向する人を増やせるよう工夫が必要です。
こうした課題はあるものの、ふるさと副業に興味を持つ人の割合は増加しており、求人件数も着実に増えています。これから副業で自分のスキルを生かしたいと考える人が多くなれば、ふるさとに貢献するという働き方が全国に広がるのではないでしょうか。
(参考資料)
「副業・兼業に関する労働者調査」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000660780.pdf
「都市部にいながら地方の仕事!話題のふるさと副業とは?」wework
https://weworkjpn.com/contents/knowledge/case116/
ふるさと兼業
https://furusatokengyo.jp/
「2020年キャリアトピックふるさと副業」リクルート
https://www.recruit.co.jp/newsroom/recruitcareer/news/pressrelease/2020/200203-01/