島根県の県庁所在地であり、最大の都市である松江市。市街地の中心には大橋川が流れ、西に宍道湖、東に中海が広がる「水の都」です。プログラミング言語「Ruby(ルビー)」をキーワードに企業誘致に力を入れており、ワーケーションを通じた関係人口創出にも取り組んでいます。そんな松江市の魅力や移住・関係人口対策について、松江市 定住企業立地推進課の須田佳孝さん・岩田輝さんにお話をうかがいました。
―松江市の概要・特徴を教えてください。
人口20万人の城下町で、奈良、京都に次いで全国 3番目に国際文化観光都市になりました。松江城は全国に現存する12天守の一つで、国宝に指定されています。江戸時代から続くお茶処で、日本三大和菓子処の一つになっています。明治時代にはお城の近くに小泉八雲が住んでいたこともあり、文豪ゆかりの地としても知られています。
日本で7番目の大きさを誇る宍道湖から眺める夕日は有名で、ヤマトシジミの水揚げ量は日本一です。
また、東出雲町には大手農業機械メーカーの本社があって企業城下町のようになっており、製造業が集積しています 。
宍道湖と夕景
―松江市の暮らしはいかがでしょうか。
心穏やかな方が多く、人との距離感がよいです。何かをしたいときに相談に乗ったり人を紹介してくれることを「よい意味でのたらい回し」と表現した移住者もいます。人の顔が見えるというのは、コンパクトな松江市ならではの魅力であると感じています。また、30分ほど車で走れば、海、山、川、島などの自然もあり、県庁所在地で都市機能も兼ね備えているので、暮らしには不便はありません。
―「Ruby」で特徴的な施策があるようですね。
「Ruby」の開発者、まつもとゆきひろ氏が松江市に在住していることもあり、2006年から、“Ruby City MATSUE(ルビーシティマツエ)プロジェクト”という、Rubyを核としたIT産業振興を島根県と二人三脚で取り組んでいます。具体的には地元でのITエンジニアの育成や雇用の場の創出のための企業誘致、企業支援を行っており、これまで約40社が進出しています。
Rubyはオープンソースで、みんなでブラッシュアップして進化している言語ですから、コミュニティが大切だと考えています。エンジニアさんが継続的に社外で勉強したり、仲間作りをしやすいように、行政とタッグを組んで、場所の整備やイベント開催の支援をしています。
―関係人口や移住のために何か施策はされていますか。
ワーケーションに力を入れていまして、松江滞在型テレワークプログラムの開発・受入れを目的とした「ワーキングヘルスケアプログラムMATSUEコンソーシアム」を設立し、「ストレス計測」を取り入れたパッケージプログラムを企業向けに提供しています。松江市に滞在する1週間前からウェアラブルデバイスでバイタルを計測していただき、島根大学でデータを分析しています。松江市に滞在中にストレス値が下がる結果が出ているんですよ。マインドフルネスや地域の人との交流プログラムもワーケーションに取り入れています。
きっかけは、Ruby City MATSUEプロジェクトの一環で、2017年から整備している「お試しサテライトオフィス」です。利用者に松江市に来た感想をきいたところ、「ストレスフリーな環境で働けた」という声があったことから、2019年に島根大学と実証実験を行ったのがきっかけで始まりました。
―関係人口に繋がった事例はありますか?
ワーケーションプログラム後のオンライン交流会を通じて、“enun(縁雲)”というコワーキングスペースが誕生した事例があります。ワーケーション後も地元の事業者さんの計らいで、継続してオンライン交流の場を設けていたのですが、地元のゲストとして参加していたホテルの社長と意見交換をするなかで、コワーキングスペースの開業が決まりました。ロゴやコンセプトづくりなど、ワーケーションの参加者が副業として参画し、多い方は3ヶ月に1回のペースで松江に来ていただくなどの事例が生まれたんです。
―松江市の課題があれば教えてください。
空き家の利活用、中心市街地の活性化、人口減少問題等の課題があります。大学進学のタイミングで県外に出る人が多く、若い方に帰ってきたいと思ってもらえるようなまちづくりが必要だと考えています。
中心市街地や水辺空間の活用などの実証実験を行い、人々がまちなかを歩く動線をつくる動きもあります。
京店商店街周辺のカラコロ工房
―まちづくりへの想いをお聞かせください。
自然や歴史、住民の気質など松江が守り続けてきた昔からあるものとDXやSDGsなどの最先端の要素をかけ合わせて、松江に来たら夢を実現できると思っていただけるようなまちづくりを目指しています。外から想いを持って来ていただける方たちは、私たちが気づかない松江市の魅力を教えてくれると思います。移住者や関係人口の方たちと一緒にこの地を盛り上げていきたいですね。
―最後に、移住を考えている方へメッセージをお願いします。
松江市は仕事とプライベートの境界がいい意味で曖昧で、そこが人との繋がりが深くなる理由だと思います。ぜひ、一度遊びに来て雰囲気を感じていただき、フィーリングが合えば、移住などを含めて考えていただけたら嬉しいです!
▼松江市の移住関連情報はこちら!
「Life in Matsue まつえで暮らす」 https://www.city.matsue.lg.jp/iju_teiju/index.html