ウィズコロナ時代に働き方で考える地方創生③ 「新たな人の流れ」促進へ 都市部人材の副業・兼業の現在地
亀和田 俊明
2021/10/18 (月) - 12:00

6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針 2021」(「骨太の方針」)および「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ」で、政府としては 2020年9月に改定された「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の周知や取組事例の横展開など、多様な働き方の実現に向けて引き続き、副業・兼業の普及・促進に向けた取組を進めていくこととしています。「働き方」で考える地方創生シリーズ最終回は、都市部人材の副業・兼業についての現在地です。

副業認めている企業34.9%、「効果あった」企業は33%

8月末にオンラインで「副業兼業サミット2021」が開催されました。人口減少を背景に移住政策に取り組んでいる鳥取県は、「週1副社長」という県内の地方企業で週1回だけ副業・兼業をしてもらうという試み取組を提唱していますが、関係人口を増やすことで地域活性化を図りたいプロジェクトの一環で実施され、首都圏や関西圏を中心に香港など海外も含め約370人(2019年は125人、20220年は253人)が参加。昨年はマッチング成果も60社92人でした。

8月23日にオンラインで開催された「副業兼業サミット2021」
8月23日にオンラインで開催された「副業兼業サミット2021」

さて、4月に発表された東京都の「都内企業における兼業・副業に関する実態調査」では、2852社から回答があり、約3分の1(「全体的に認める」6.3%、「条件付で一部認める」28.6%)の企業が従業員の兼業・副業を認めていることが分かりました。認めている企業のうち、33%の企業が効果は「あった」「ややあった」と回答しています。社内手続きを就業規則に定めているかどうかを尋ねたところ、「定めている」企業は31.2%でした。

また、従業員の副業を認めている理由としては、下表のように「柔軟な働き方による優秀な人材採用」が38.7%で最も多く、「人材の定着(離職率の低下)」が37.8%、「従業員のモチベーション向上」が35.2%でほぼ肩を並べ、「働き方改革の促進」が28.7%で続いています。従業員の兼業・副業を認めている企業における効果については、「あった」が6.6%、「ややあった」が26.4%で、効果を認めている企業は約3割でした。

従業員の兼業・副業を認めている理由

なお、企業における課題・問題点としては、「従業員の健康管理上の問題」が41.2%、「社内業務への支障」が40.3%と半数近いほか、「従業員の労務管理上(労働時間・給与管理等)の問題」が34.7%、「従業員の労務管理上(労働災害等)の問題」が23.3%、「会社のノウハウや機密情報の流出」が22.8%、「人材の流出」が16.7%、「会社の秩序が乱れる」が15.1%で続いています。過重労働リスクが高まる傾向が見られることが心配されています。

一方、厚生労働省の労働政策審議会安全衛生分科会で報告された「副業・兼業に係る実態」把握のインターネット調査では、副業をしている人の割合は全体で9.7%であり、就業形態別では、「自由業・フリーランス(独立)・個人請負」が29.8%と最も高く、「正社員」が5.9%と最も低いものがありました。副業している理由については、全ての就業形態で「収入を増やしたいから」との回答が3割を超えています。

副業をしている理由(本業の就業形態別

「選択的週休3日制度」により地方での副業・兼業を促進へ

冒頭の経済財政運営の指針「骨太の方針」では、雇用・働き方関連については、ジョブ型雇用への転換や兼業・副業、リカレント教育など昨年の骨太方針や成長戦略で重点が置かれた内容と大きな変化はありませんが、今回、新たに加わった内容としては学び直しを促す観点で、希望する労働者に1週間のうち3日の休日を付与する制度「選択的週休 3 日制度」の導入を企業に促すことを盛り込んだことが注目されています。

政府は、「選択的週休3日制度」の柔軟な働き方を選べるようになれば、下表のように育児・介護を抱える人が離職せずに済むほか、仕事とボランティア活動などとの両立も可能になるなどの効果を見込んでいるほか、都市部の企業に勤務する人材が働きつつ地方を訪れやすくもなり、地方での副業・兼業といった形での関係人口増加による地方創生へとつながることも期待しているといえます。

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「選択的週休3日制度」の普及によりワークライフバランスの機運が醸成され、週休2日未満の企業が1週間の給仕数を増やすといった副次的効果も期待されるものの、現時点では導入している企業はそれほど多くなく、導入していても大企業が中心です。厚生労働省の「令和2年就労条件総合調査」によれば、週休3日制以上の休日を導入している企業は未だ全体の8.3%で、週休1~2日の企業が全体の90%以上を占めているのが現状です。

そうしたなか、塩野義製薬が来年度から希望する社員が週休3日で働ける制度を導入することを発表しました。同社はビジネスモデル拡大を目指すなか、人材育成を重視していますが、入社3年未満や管理職を除く約7割の社員を対象とし希望者を募ります。大学院での勉強や資格取得など社員の能力アップを促し、自社のイノベーションにつなげる狙いで、来年4月から開始。副業や介護・育児などでの利用も認めるものの、給与は週休2日に比べ8割程度の模様。

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「選択的週休3日制度」を導入する企業が増えるなか、各社の事情を見ていくと育児や介護、人手の確保、副業・兼業など、導入に踏み切る目的はさまざまであり、企業ごとに異なる特徴があります。現在、上の表のように4~5年前ごろから大手企業では条件つきながら「週休3日制度」を導入する企業が出てきていますが、人手不足に悩む中小企業などでは導入に懐疑的でもあり、少ないのが実情です。

休日が増えることで副業・兼業を考える従業員が増えることが見込まれますが、従業員自身のスキルアップやキャリアアップが企業の業績向上にもつながるため、今後、企業として認めるかどうかの検討も必要となります。一方、企業では、生産性やビジネス機会の損失など、従業員にとっては、給与や昇給・昇進などの課題も挙げられますので、双方にとっても良い形での導入が望まれます。「選択的週休3日制度」など新しい働き方にも柔軟な対応が望まれます。

都市部の副業・兼業人材の活用で関係人口創出と地域活性化

昨今、大手企業や金融機関では、社員や行員に副業・兼業を認める例が増えてきています。また、自治体では、逆に副業人材を募集する例が顕著です。自治体として初めての試みは、2017年11月から戦略顧問を募集した広島県の福山市でしたが、今年に入っても下表のように京都市や静岡県、富山県などで次々に募集されており、テレワークの普及により採用や応募が容易になってきています。

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日本経済を支えているのは、モノや技術はあるものの、一方でヒトと知恵が十分とはいえない日本経済を支えている地方の中堅・中小企業ですが、一定期間、副業人材の知恵や経験などを借りることで業績が伸び、企業自体が様変わりするような地域企業は数多くあると思われます。そうした状況下で、副業・兼業人材のスキルで経営課題の解決を図りたい、人手不足を補いたい、組織内にいないスキルや経験を持った都市部人材を採用したいなど切望する地域企業も多いことでしょう。

また、地方圏の信用金庫や地方銀行などの地域金融機関にとっても地方経済の活性化につながる地域企業にとっての副業人材の活用、特にコロナ禍で打撃を受けた中堅・中小企業においては、重要な取り組みです。地域企業の新規事業開発や業務改善、販路開拓などさまざまな経営課題等を把握している地域金融機関が、人材ビジネス事業者等との連携により企業の成長戦略を全面的にサポートする先導的・モデル的な事業を展開していく例も増えてきています。

実際に地方の中小企業で副業を希望する都市部人材約6500名が登録する副業マッチングプラットフォーム『Skill Shift』を運営する㈱みらいワークスでは、富岡市や「しののめ信用金庫」と「富岡市エコノミックガーデニングプロジェクト~副業人材活用事業」に取り組んでいるほか、長野県では、佐久市やJR東日本が推進する地域活性化プロジェクト『Yoboze!』に協力し、副業・兼業人材の活用による地域活性化と関係人口の推進に協力しています。

コロナ禍で地方にあっては企業を巡る環境が激変し、深刻度が一層増しています。ウィズコロナ時代は、「働き方改革」によって人材流動が加速度的に進むと見られますが、「新たな日常」に対応した強靭な地域経済を構築するために求められる「新たな人の流れ」の促進は都市部から地方へ、大企業から中堅・中小企業へ、新たな人の流れをつくり、次への成長へとつなげるために都市部人材の地方での活用が望まれますし、マッチングの担い手となる地域金融機関や提携先の人材紹介会社の取り組みがさらに期待されています。

副業・兼業への関心の高まりを背景に地域においては人材を活用できる可能性が高まってきています。働き方が多様化するなか、副業・兼業はオープンイノベーションや起業の手段としても有効であるでしょうし、副業・兼業による中核人材の確保や活用という流れを創出することで、地域の企業や産業を支えることにもなるでしょう。都市部人材を誘致し、地方で生かすという動きは今後も期待されますし、さらなる推進が必要でしょう。

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