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地方における事業成功の鉄則。先回り営業・逆算開発を徹底せよ
木下 斉
2019/02/22 (金) - 08:00

全国各地で、自ら投資して事業に挑戦する方は確実に増加しています。これは本当に素晴らしいことで、予算があるからやる、のではなく、自ら事業を考え、実践する人が増加しているということでもあります。

しかしながら、ふと訪問した地域などでご質問をいただくことの多くは、すでに投資をしたあと、の場合です。「こんな拠点を作ったんですが、どうしたら良いでしょうか」といった話なんですね。すでにお金を使ってしまったけれども、思うようにお客さんが集まらない。どうしたらよいかという問題を抱えているわけです。

コワーキングスペースを作った、ゲストハウスを作ってしまった。その後で、どうするか、と質問されても、売上不振で困ってしまっている状況に対して、打ち手はかなり限られてきます。何より、既に手元資金がほぼ枯渇してしまっている方も多く、なぜやる前に相談してくれないものか、と思わされることが幾度もあります。

投資をするその前に、「先回り営業」と「逆算開発」を徹底すれば、相当に事業の確度は上がります。今回は、地域での事業を始める際に原則とすべき「先回り営業」の徹底と、投資回収計画における「逆算開発」について解説したいと思います。

PHASE1 投資の前に「先回り営業」を徹底せよ

事業の立ち上げにおいて何が一番大切か。
精密な事業計画を組み立てること、多くの人からのアドバイスをもらうこと、先行事例を視察することなど色々と想起されるかと思います。しかし、本質的に大切なのは「営業」です。

結局のところ、自分が勝手に商品やサービスを作っても、それを使い対価を支払ってくれる人が皆無であれば、持続しません。どんなに綺麗で良い事業計画が組み立てられても、多くの人からのアドバイスが得られても、先行事例を視察しても、実際、営業しなかったら話にならないわけです。

営業せず、顧客が集まらず、売上がなければ、いくら補助金や創業支援金などをもらったとしても、すぐに必要な資金は枯渇してしまいます。何はともあれまず一歩は、全てのことに優先して、考えた商品・サービスを使ってくれる人を見つけるための営業を行う必要があります。

このときに、「まずは商品や・サービスがないと営業できない」と思い込んでいる人がいるのですが、それは間違いです。どんな商品でも、いきなり生産ラインを作ってやらなくとも、まずは試作品を少量作って試すところからスタートします。
もしも空き家・空き店舗をリノベーションして新しい店を開こうと思っているのであれば、まずは投資して、店を開業する前に地元で開催されるマーケットに半年から一年間出店して、固定客を掴むところからスタートしましょう。マーケットが無いのであれば、地元で仲間と共に立ち上げて試行錯誤するのも手です。
もしゲストハウスを始めるのであれば、多額の投資をする前に、自らの手で地元の日帰りツアーを開催するなどのアクティビティから企画したり、友人を集めて宿泊体験プログラムなどを開催し、実際にそこに人が泊まるときにどんなサービスが可能かを考え、口コミで広げてくれる仲間を増加させていきましょう。そもそも、単に宿を作ってそこに泊まるだけでは、地方の良さなどは伝わらないわけです。ハードの前にソフト面での営業を積み重ねていき、その上で「必要なハード」が明瞭化され、さらに具体的なターゲット顧客が見えたときにハードへの投資という段階に入るほうが合理的です。
小さなところからスタートすることを馬鹿にする人もいますが、関係ありません。何事も、小さなことを積み上げた先に大きな物事は成立します。積小為大ということを忘れずに、いきなり向こう見ずに商品や拠点を作るよりも、先にできることを一つひとつ積み上げていきましょう。

実際に過去に失敗しているプロジェクトをみると、初期段階の、一見すると地味で面倒だと思われる「営業」を疎かにしてしまっています。いきなり予算を獲得して大量に商品を作ってしまったり、固定客ゼロの状態からいきなり店を作ってしまったり、自分の想いだけで高い値段で物件を取得しデザインの凝ったゲストハウスを作ってしまっています。開業してはじめて「営業不足」であることに気づいても、修正は容易ではありません。だから、準備段階の営業次第でやることを変えたり、そもそも中止すべきか判断する必要があるわけです。

むしろ初期段階で適切な軌道修正を行いながら、しっかりと先回り営業をすれば、「適切な投資」も可能になります。先回り営業が行われ、一定の顧客を掴み、固定的な収入が見えてきたら、次なる逆算投資の段階に入ります。

PHASE2:「逆算投資」を徹底せよ

営業をして一定の売上が確保できるようになったら、様々な事業が設計しやすくなります。
「逆算開発」です。営業して収入をある程度見込める段階になったら、その収入をもとに投資回収期間を設定し、投資金額を算定するわけです。

悪い投資とは、「こういう事業には相場的にいくらかかる」といった情報を鵜呑みにしたり、「私はこうしたい」という主観で決めてしまうことです。

逆算開発とは単純化して言えば、月に20万円利益があり、2年で投資回収したいのであれば、20万×24ヶ月=480万円を投資すると判断することです。自ら先回り営業することで獲得した売上をもとに逆算すれば、適切な投資回収計画が組み立てられます。売上があり、そこから利益が生まれているからこそ、その利益をベースにして初期投資をする。その上でもっと売上が上がれば、さらに追加投資をする。この循環を作ることができれば、徐々に事業は大きくなっていきます。何より既に先回り営業をして売上があり、そこからしっかり利益を生み出せていれば、金融機関からの融資、他の方からの投資も自信を持って受けることができます。逆であれば、あくまで見込み、予想でしか物事を語ることができません。

逆算開発は物件再生でも同様で、まずはテナントを全て確保し、その家賃金額から投資回収期間を算定します。リスクの高い衰退地域の場合には、「ハイリスク・ハイリターン」に設計しなければ民間資金では事業はできませんから、2-4年程度の投資回収期間を設定します。地域の再生に寄与するリノベーションプロジェクトでは、しっかりとリスク応分のリターンを作り出し、民間資金を誘導できるようにします。これは先回り営業を行い、逆算開発をすれば可能です。

とある都市にある、10年ほど放置された鉄骨造2階建ての物件再生の場合ですが、当初は4000万円近い予算が「相場」で設計されていました。しかしながら、先回り営業をかけて、この都市に必要な“成長性”の高く、既にマーケットや自宅で営業を開始して実績を持つテナントを選定したところ、彼らが支払える年間家賃合計額は350万円、不動産オーナーの期待するプロジェクトとしての投資回収期間は4年間という結果になりました。こうなると4000万円の予算では、10年以上のプロジェクト期間が必要となり、成立しません。結果として、年間家賃合計額をもとに4年間の投資回収計画で組み立てをし直し、1400万円の初期投資と決定。当初の改修計画を抜本的に変更し、1400万円で収まるだけの計画に組み立て直しました。逆算開発は実際の先回り営業の状況に応じて投資金額を修正し、計画や設計をやり直すことを躊躇してはいけません。結果的に本プロジェクトは初期投資を回収し、利益を出し続けています。

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過去の成長時代には、まずは資金を調達し、誰より先に投資した者が勝ちましたが、今は必ずしもそうではありません。巨大企業が地方に進出して数年で撤退することも多くあります。まずは先回り営業をし、その数字をもとにして逆算開発をする。必要な計画変更などはためらわずに行うというのが、事業を軌道に乗せるための第一歩と言えます。

想いは大切ですが、想いだけでなく、算盤という客観的なプロセスをもって事業の成功確率をあげるための工夫が必要なのです。

【参考文献】
稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の鉄則 (NHK出版新書) https://amzn.to/2EbUIgc
まちで闘う方法論:自己成長なくして、地域再生なし https://amzn.to/2S3C5i

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