宮古の食を全国へ!地域と水産事業の活性化をめざすイカ王子
共和水産株式会社 代表取締役専務 鈴木 良太さん(イカ王子)
BizReach Regional
2017/10/18 (水) - 08:00

東日本大震災を機に、一念発起し、会社の再生と水産事業の復興、自らイカ王子と名乗り、イカ王子ブランドの商品を販売すると同時に、SNSやTV等で「三陸宮古」の食文化を発信。宮古市の水産物のブランド化たちあがった「イカ王子」の活動と未来への展望を伺いました。

<前編>宮古の食を全国へ!「イカ王子」地域の水産事業の活性化に奮闘

地域商社となり地産地消を実現。夢は三陸全体を動かすイノベーション

――続いて、地域に対する思いというのを聞かせてください

日に日に宮古を良くしたいという思いが強くなっていて、2年前の2015年に「イカ王子プロジェクト」というものを立ち上げました。三陸宮古を一つの王国に見立てて、チームで地域をよくしていこうというものです。私は王国の王子で「イカ王子」、ほかのメンバーは、印刷業の専務さんや、地元のイラストレーターを妹に持つ女性など、宮古の基幹産業である水産業を異業種を交えながらWIN-WINの関係性を築くとともに、町を盛り上げていこうとしています。観光という視点も視野に、工場見学や地域イベントなど、水産業はもちろん、食を通して地域と人を繋げていく活動をしています。

――イカ王子と名乗ることで抵抗はありませんでしたか?

発信するからには責任を果たしたいなと思っているんです。「イカ王子」と名乗ったのは、決意表明みたいなもので。正直いえば本当は嫌なんですよ(笑)。その名を名乗る以上、何かミスった時に叩かれるのは倍以上。今では宮古ではそこそこ有名なので、飲み歩いた帰りに「あ、イカ王子だ」、コンビニに行っても「イカ王子ですよね」と。私の妻なども、ママ友に水産の仕事をしているイカの会社だというと「もしかしてイカ王子?」と聞かれるそうです。そういうこともあって、やはり生半可な気持ちではやれないですよね。腹のくくり具合が違うと思います。ですので、時には「小学校へ講演に来てください」と言われて行くこともあります。
先日は岩手大学の水産学部ができて、イカ王子として20何人かの学生の前で1時間半の講義をさせてもらいました。私がこういうトーンだから面白がってなのか、先日一人の学生から「イカ王子、私は卒業したら養殖事業をやろうと思っています。今度相談に行っていいですか」と直接電話がきたのです。「いいよ、宮古には日本最大級のサケ・ますのふ化場が津軽石川にあるけれど知っているか?」と聞くと、「ぜひ行きたいです。一緒にお願いします」と話がすすみ、一緒に行って学んできました。
現地にいくと、「放流しているサケっというのは、JANコードみたいなのものがあるんだ。世界のどこで獲っても津軽石川というのがわかるんだ」タバコを吸っているアナログなおじさんが学者みたいに教えてくれるのです。イカ王子と名乗っているからこそ、そういう人とも繋がることができるんですね。

――「イカ王子プロジェクト」の目指すものは

地域商社のような役割になりたいと思っています。私は水産加工会社が販路を獲得する苦しみを知っているので、まずは宮古の水産物の販路獲得をめざして活動を開始しました。プロジェトを通して飲食店のシェフなどにも話を聞くようにしているのですが、「何で宮古のものを使わないのですか」と聞くと、「いや、売りに来ないからだ」と言うのです。かたや宮古の魚屋さんに聞けば「いや、買ってくれないからだ」と。両者の言い分が異なっているわけです。おそらくそれは、どこの産地にもあって、シェフたちは、わざわざ遠くから魚を取り寄せて使用していたりするのです。近いけれど知らないという実態があるので「それだったら宮古で作っている業者がありますよ」と提案をすることで、もっと販路を拡大していけるのではないかと。まず作る側と売る側の溝を埋めていかなければと思っています。
ホテルや旅館などは飲食以外にも忙しいので、シェフ達は食に対しては、企画ごと提案が欲しいわけです。「この月はこのフェアでいきましょう」とか、「旬のこの食材を目玉にしていきましょう」など、そういった提案を求めているのです。今は、単品ごとに売り込みをするだけでなく、企画ごと提案してやらせてもらっています。これがうまくまわるようになれば、宮古にもっと人が来て、宮古のものを食べてもらえるはずです。

一方で、こういう動きをしていると水産業に限らずつながりが生まれてくるんですね。盛岡から宮古に来る途中に1,000円で蕨をいくらでも採ることができる蕨農園があるのですが、これを蕨刈り取り体験という観光のツールとして生かしつつ、刈り取った蕨は共和水産であく抜き加工品を作ったんです。これは来年の春に商品化を予定しています。

サムネイル

――10年先に専務が目指したい夢を教えてください

わが社の場合、今は首都圏への販売が100%。それを10年後には、3割を地元に持ってきたい。そのぐらい宮古の観光と食を発展させていきたいのです。宮古の観光を支えるのは風景ではなくて食。その下支えを共和水産でしていこうと思っています。共和水産の工場を、各ホテルや旅館の料理長が、セントラルキッチンと思って使ってもらえるような企画を打ち出したり、いろいろなイベントにもっと出店することで宮古の食の認知を高めたい。またさまざまなエリアへの展開を視野に入れて、三陸の食を売り込んでいきたいなと。今は沖縄を対象に考えています。海外の方は沖縄が大好きで、毎年沖縄の人口は1万人づつ増えているそうです。移住者たちが困ることといえば、実は食の選択肢が少ないということで、沖縄が47都道府県の食べ物を探しているという実態があります。そこで三陸をうたった笹かまや、オール三陸で企画を打ち出せたら面白いですよね。
また首都圏は、バーベキューが流行っているので、それにあう企画を打ち出すのもあり。さまざまにアプローチをしかけていくのが重要だと思っています。それを実現するには、人のつながりが最も重要なのです。漁火やイカ王子プロジェクトというのは、人をつなぐ媒体として、継続していく必要性があると思っています。
また、私がこういう活動をしていれば、久慈でも誰か現れるだろうし、気仙沼で同じような人が出てくるかもしれない。そうやって人と人が繋がって、みんなで発信できればいいなと思っているんです。プレーヤーがもっともっと出てくれば、多分三陸でイノベーションが起こりますよ。だから、いい意味の破壊をしたいのです。それぞれの産地で頑張っている人が、なにかの場で集まって一緒になって、大きいイノベーションを起こしたい。もう震災の町じゃねえぞ、悲しくなんかねえぞ、と堂々と力強い発信をしていきたいと思っています。

共和水産株式会社

創業1985年。岩手県の宮古港に水揚げされるイカを原料に、イカソーメンを始めさまざまな加工商品を製造・販売。東日本大震災後、地域の復興をめざして、地元水産加工業者4社で“宮古チーム漁火”を結成、販路の拡大と新規顧客獲得、商品開発等を協業することで地域活性を担う。また、自らを「イカ王子」と称し、ネット販売を通じて一般消費者への商品認知アップと地域発ブランドの確立をめざす。

住所
〒027-0021 岩手県宮古市藤原二丁目3番7号
設立
昭和60年7月
従業員数
48名 ※平成28年4月30日現在
資本金
1,600万円
企業HP
http://www.kyowa-suisan.co.jp/

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