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これって「ジタハラ」?働き方改革と時短ハラスメントを考える
浅賀 桃子
2019/01/10 (木) - 08:00

働き方改革を考えるうえで、セットで語られることの多い「長時間労働」。長時間労働を抑制し、残業を減らそうと組織改革に取り組む企業も増えています。その取り組み自体は当然進めなければならないものですが、その陰で問題になりつつある「ジタハラ」をご存知でしょうか。

ジタハラとは

ジタハラとは「時短ハラスメント」の略です。長時間労働が大きく報じられた大手広告代理店が、労務改善策として午後10時から翌日午前5時までの全館消灯実施を決めたニュースは記憶に新しいでしょうが、実際は持ち帰り残業が増えただけという現場サイドからの声も聞かれます。「残業をするな」「早く帰れ」といくら形だけ強要しても、やらなければならない仕事が山積みの状態では根本解決からは程遠いわけです。

ビジネス手帳でおなじみの高橋書店が2017年11月、ビジネスパーソンを対象に働き方改革に関するアンケート調査を行ったところ、働き方改革(長時間労働の改善)に取り組む企業に勤めるビジネスパーソンの41.5%が「働ける時間が短くなったのに、業務量が以前のままのため、仕事が終わらない」という悩みを抱えていました。まさにジタハラにつながりかねない悩みだといえます。

ここで、筆者が相談を受けたケースをご紹介しましょう。

問題になりつつあるジタハラ

相談者は、20代後半のAさん。部署は10名、部長のBさんは他部署との兼任であまり現場に顔を出さず、課長のCさんに任せきりです。このCさんが、最近Aさんたち現場のスタッフに「早く帰れ」「残業は月●時間までに収めること」「成果はこれまでと同様に出せ」などと強要するようになったといいます。仕事量が変わらないのに、これまでもらえていた残業代ももらえなくなったため、モチベーションが下がってしまっていました。

Aさんからの相談を受け、課長のCさんに話を聞いてみると「経営層の意向を受け、部長のBさんから“従業員の労務管理を徹底しないと自身の管理責任が問われる”といわれていまして。Aさんたちが退勤後自宅で仕事をしていることは知っているのですが、自分の評価も落としたくないし、かといって仕事を減らすことも現状できないし、人手不足のなか簡単に自部署に人員増加を申し出ることも難しいし」とのこと。経営層の意向を元に号令をかけるまではよかったのですが、課長として長時間労働に至る業務フローやプロセスの見直しをするなどの対策はとれていなかったのでした。まさに「ジタハラ」化していたわけです。

「残業をせず早く帰る」という、本来従業員にとって喜ばしいであろうことがなぜ「ハラスメント」になってしまうのか。それは、「働き方改革=時短推奨」のように、表面的な対策になっているからではないでしょうか。

ジタハラにならない長時間労働改善策は

「タイムカード上は定時で打刻されているが、実際のメール送信履歴を見ると深夜まで仕事をしている」など、労働時間の実態を企業が把握できていないケースも少なくありません。長時間労働の改善を根本から行う上で欠かせないのは、この「実態を正しく把握する」ことです。マネジメントができていないといわれると困るからと、定時で申請しつつサービス残業をするケースなど、人事上の数値だけでは把握しきれていない「ブラックボックス」をなくすことが先決です。正しく把握する過程のなかで、どこの部署に仕事が偏っているのか、その長時間労働状態が恒常的に続いているのかどうかなどの原因が少しずつ見えてくるでしょう。原因がわかったところで、どこから手をつけるべきなのかを判断していくことになります。

あるIT企業では、これまでは売上のためならと、「翌週月曜日までに必要な修正を金曜の夕方に依頼される」ような超・短納期の案件でも受注していました。その結果従業員は土日休み返上で対応を余儀なくされ、「粗利が下がる」という管理職からの圧力から残業代の申請もできない状態でした。従業員の疲弊、離職が続いたことから経営層が対応を改め、「売上がたとえ下がっても、従業員の健康のためにそのような急ぎの仕事は今後受けられません」という方針に変えました。その結果、現場の負担がかなり軽減される効果が得られました。一時的に売上は下がりましたが、従業員のモチベーションは回復し業務の生産性が上がるという嬉しいおまけつきでした。

長時間労働改善のためには、「今までやってきたけれどこれからはやらない」業務もときには発生するでしょう。この企業では、経営層が客先に対し理解を求める断固とした姿勢をとったことで改善に向かったのです。現場ではなかなか「やらないでいい」業務を判断できませんので、経営・マネジメント層自ら判断し全社の方針として徹底させていくことが求められるといえます。

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