シェアリングエコノミーとは 今後の展開と課題を考える
浅賀 桃子
2018/11/28 (水) - 12:00

「シェアリングエコノミー」という言葉をご存知でしょうか。日本での民泊の解禁が大きな話題になりましたが、これもシェアリングエコノミーの一種なのです。政府が「新たな働き方としての側面がある」とするシェアリングエコノミーとはどういうものなのか、そして今後の展開と課題について考えます。

シェアリングエコノミーとは

欧米などで急速に拡大しているシェアリングエコノミーは、「個人が保有している遊休資産の貸し出しを仲介するサービス」と称されています。Facebookをはじめとするソーシャルメディア等を利用した個人間シェアによるP2P(Peer to Peer)シェアリング市場が欧米を中心に広がっています。

日本ではP2Pシェアリング市場は未だそこまで広がっていませんが、代表的なものとしては宿泊シェアリングサービスを提供するAirbnbと、タクシーサービスを安く・迅速に提供できる仕組みとして世界300以上の都市に展開しているUberがあげられます。Airbnbは自宅の空き部屋を貸し出したいホストと、部屋を借りたい旅行者等を仲介するサービスで、ホスト数は35万人、通算利用者(ゲスト)数は1500万人以上にのぼっています。UberはスマートフォンやGPS技術の進歩により、世界300以上の都市でサービス展開をしています。タクシー利用者はスマートフォン上でUberのアプリを使い氏名やクレジットカード情報を登録し、サービス提供ドライバーも運転履歴や免許等の情報をアプリ上で登録します。

B2C(Business to Consumer)シェアリングと呼ばれるカーシェアリングやシェアハウスなどは、日本でも広がりをみせています。2016年時点のカーシェアリング車両台数は約2万台、会員数は約85万人となっており、2017年には100万人を超える勢いとなっています。Uber同様スマートフォンのGPS機能や専用アプリを活用し、一番近い車がどこに待機しているか、すぐに検索し予約をすることができるようになりました。シェアハウスも全国に運営事業者が増え、約3000件の立地がある状況です。

このように、余っているものや普段利用頻度の低いものをインターネット経由で共有して、有効活用することを前提とした経済がシェアリングエコノミーです。貸す側が収入を得られるのはもちろん、借りる側も自身で所有せずに利用できることがメリットです。

政府が推進に力を入れる理由

政府は2015年6月に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」および「日本再興戦略改訂2015」にて、IT利活用による円滑な情報流通、それに伴うビジネスモデルの変革等促進に向け制度整備を行い、法制上の措置等を講ずることが盛り込まれました。世界に例をみぬ急速な少子高齢化等、日本が抱える様々な課題解決のために、シェアリングエコノミーサービスが活用できると考えているからです。 2017年1月には、政府の内閣官房情報通信技術総合戦略室内に「シェアリングエコノミー促進室」が設置されました。安倍内閣が推進する「一億総活躍社会」を、シェアリングエコノミーで実現できる可能性を踏まえているからです。個人の所得増加につながることで、副業・兼業がしやすくなることが考えられ、「働き方改革」にも寄与するでしょう。

さらに、地方創生を担う可能性も秘めています。
秋田県の「シェアビレッジ」が好例です。シェアビレッジとは、「村民がいるから村ができる」という考えのもと、“年貢”と呼ばれる3000円の年会費を払った人を村民として認定。村民は好きなタイミングで村に行き、自由に過ごすことができます。年会費は村の古民家再生に活用されます。シェアビレッジの村民は日本各地におり、普段都市部におり自分の村に行く機会が少ない方は、シェアビレッジが定期開催している「寄合」という飲み会に参加しながら村について考える機会が得られます。リアルな交流のみならず、Facebookグループを通じたコミュニケーションも発生しています。

また、「ANYTIMES」は、掃除や買い物、育児、料理などの用事を頼みたい人と助けたい人とを、インターネットを通じてマッチングさせるサービスを提供しています。このサービスを地方活性化につなげるべく、ANYTIMES経由で市のシルバー人材センターやファミリーサポートセンターへ依頼できるようにしている宮崎県日南市のような自治体もあります。

今後の課題

シェアリングエコノミー活用にあたってのネックとなり得るのが「業法」と呼ばれるサービス単位で定められている法令の存在です。たとえば、Uberに対してはタクシー業界からの抗議が少なくありませんし、事故やトラブル時の対応に不安があるとし利用したくないという声も聞かれます。サービス自体の安全・信頼性の確保(含む業法規制面)および認知度の向上が、シェアリングエコノミーがさらに普及していくかどうかのカギとなるでしょう。

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