信州大学
【信州大学】実践型リカレント教育プログラムを始動/働き方の最前線
月刊事業構想 別冊「ポスト平成の働き方」/監修 (株)日本人材機構
月刊事業構想 編集部
2019/01/16 (水) - 18:00

信州大学など4法人は、地域企業を舞台としたリカレント教育プログラムをスタートする。首都圏人材が6カ月間、信州大学の客員研究員として経営を研究・学習しつつ、地域企業に入って経営課題解決を実践する仕組みだ。“学びの場”としての地域企業の可能性とは。

首都圏と地域企業の接着剤に

信州大学は日本人材機構、Lamphi、SCOPと共同で、『信州100年企業創出プログラム』を2018年10月から開始した。本プログラムでは、首都圏の人材に対して信州大学がリサーチフェロー(客員研究員)としての立場を提供する。さらに、これらの人材と長野県内の企業をマッチング。企業の短期的な課題解決から中長期的な構想立案、新規事業の推進などに取り組み、実践的な知識を得ていく。

「大学を“首都圏人材と地域企業の接着剤”として使えないかというのが、発想のきっかけです。地域企業を舞台としたリカレント教育は、全国でも例を見ない取り組みだと思います」と話すのは、同プログラムの旗振り役である信州大学の林靖人准教授(産学官連携・地域総合戦略推進本部長)だ。

林靖人教授
林 靖人 信州大学准教授

1つの会社に留まらず、キャリアアップや副業・兼業などの新しい働き方を志向する人は日本でも増えているが、新たな環境や新たな職場への転身は依然としてハードルが高いことも事実だ。

「“研究員として大学でもう一度学んでみる”という選択肢は、一歩踏み出す上で有効な理由となります。今までの知見や経験を活かしながら、それを地方でさらに伸ばしていくというのが、今回のプログラムのポイントです」

同プロジェクトは、長野県の次代を担う〈100年企業〉創出を目指す、新しい地域活性化事業としても位置づけられている。

「高度経済成長、人口増加の中で100年続いてきた企業は多くありますが、変化の激しい中で、次の100年企業を目指すのは相当に大変です。新しい発想を持った首都圏の人材を県内企業に送り込み、マッチングさせることで、次代の100年企業創出にトライします」

地域企業で課題解決に挑戦、松本山雅などが参画
 

松本山雅
松本山雅などの長野県内企業が参画(松本山雅FCの試合を開催す るスタジアム・アルウィン)

プログラムでは、信州大学が首都圏で活躍する人材10名をリサーチフェロー(客員研究員)として受け入れる。10名は大学内に設置されるゼミに所属しながら県内企業10社に派遣され、各企業の経営課題の解決に取り組む。週3~4日は企業に出向き、1~2日は大学のゼミで各企業の課題解決に必要な知見を教員や外部講師から学ぶ。

プログラムは6カ月。人材を受け入れる地域企業が所定の費用(180万円)を支払い、人材側はそれを活動費として月額30万円を受け取る。企業側は、一定の経験を持った首都圏で活躍する人材を自社の課題解決に活用でき、プログラム終了後に双方が合意すれば、その人材を採用(フルタイム雇用や副業契約など)できる可能性もある。

「地域企業にとって180万円の費用は決して安くありません。しかし、競争の厳しい首都圏で活躍してきた人材の知見やアイデアを活用できるだけでなく、6カ月という長期をかけてマッチングの可能性を得られる機会はほとんどありません。加えて、応募されてきた方も名だたる大企業の現役社員を始め、しっかりとした実力を持った人達です。通常のリクルーティングよりも効率は極めて良いでしょう」。

プロジェクトの趣旨に賛同し、いち早く企業として名乗りを上げたのが、地元で圧倒的な人気を誇るプロサッカークラブ『松本山雅FC』を運営する松本山雅。「地域資源と総合運動施設を融合した地域活性化事業の立案と実行」などをテーマに首都圏人材を活用する。 
この他にも、医療機関向けリネン具レンタルサービスを展開する一部上場企業のエラン、プラスチック部品メーカーのNiKKi Fron、精密板金加工業のタカノなどがプロジェクトに参画する。サービス業や小売業などの参画も見込まれている。

首都圏人材の募集・審査においては、日本人材機構の有するネットワークやノウハウを活用。プログラムに参加する地域企業の発掘、大学でのゼミでは、地域活性学会の研究成果の社会還元を目指すLamphiや、長野を代表するシンクタンクのSCOPがサポートする。

地域と首都圏を繋ぐエコシステムに 

「信州100年企業創出プログラム」のスキーム
「信州100年企業創出プログラム」のスキーム


首都圏への人口集中が加速すると共に、地域企業では人材の流動性が低下している。その状況下で、地域企業が新しい発想を生み出すことは簡単ではない。「今回のプログラムが成功すれば、そうした地域企業に新しい風を入れ、新陳代謝を促すことができると考えています」と林准教授は意気込む。

首都圏人材の募集は30~40歳代を中心に、現在まで首都圏の企業で働いてきた人を募集した。

「業種や職種は限定していません。地域企業の課題や構想に対して、チャレンジしたいかどうか、将来地域にどう関わっていきたいのかを重視します。プログラム期間終了後は、課題解決にあたった企業への就職(移住)やこれまでの会社との兼業、あるいは信州で他の企業に就職したり、起業して協業するなど多様なキャリア形成を期待しています。また、同時に本事業で優れた研究成果(要論文執筆)を残した人材は、ステップアップして客員教員として信州大学に関わってもらうことも考えています」

今年度は中小企業庁の補助金を活用してプログラムを運営するが、来年度からは企業側だけでなく、プログラムを受ける人材側からも参加費を徴収し、事業として自立させることを目指す。
 
「“課題先進地”とも言われる地方は、新しいチャレンジや発想が最も必要とされており、実践型リカレント教育の場として最適だと思っています。まずは『信州100年企業創出プログラム』を成功させ、将来的には自走体制を確立し、各地の大学と連携して全国展開することも視野に入れています」と林准教授。地域企業と首都圏人材を繋ぎ、双方のニーズを満たすエコシステムとして、本プログラムに期待が集まる。

Glocal Mission Jobsこの記事に関連する地方求人

同じカテゴリーの記事

同じエリアの記事

気になるエリアの記事を検索