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日本の未来を拓く企業を、長野から!「信州100年企業創出プログラム」(後編)
国立大学法人信州大学
GLOCAL MISSION Times 編集部
2019/06/20 (木) - 08:00

国立大学法人信州大学が中心となって立ち上げた新たな地域活性化事業が注目を集めている。その名も「信州100年企業創出プログラム」。初年度の2018年には、首都圏の大手企業などで経験を積んできた9名が参加。首都圏などで高度な専門性を持って活躍している人材を、信州大学の「リサーチ・フェロー(客員研究員)」として受け入れ、受入企業の課題解決と持続的成長に向けたシナリオ作成に挑戦する本プロジェクト。後編ではその具体的な成果や今後のビジョンなどについて、発起人である信州大学・林靖人准教授にうかがった。

>>>こちらも合わせてご覧ください。
プロ人材が地方企業の活性化を担うリサーチ・フェローに!「信州100年企業創出プログラム」(前編)

もう一つの仕掛け。月30万円の投資が、効率的に中小企業と優秀な人材を繋げる

―優秀な方々がリサーチ・フェローに応募されていましたが、募集方法について教えていただけますか?

各企業の課題を解決することをミッションとして募集しています。募集は専用のウェブページを作成し、ミッションページとエントリーフォームを設置しました。それを本事業構想に共感をしてくれた人材紹介等の協力企業(パートナーズ)が、自社の人材データベースに向けて発信してくれて、コンタクトポイントを拡大することができました。もちろん、データベース間で重複して登録されている人もいると思いますが、約37万件にアプローチした形になります。その後、応募者の適性については、先にお話ししたように本事業のコンソーシアムメンバーでチェックし、受入企業と応募者のキャリアマッチングをしていく、という流れです。

―今回の募集方法は、リサーチ・フェローと受入企業には、どのようなメリットあるのでしょうか

研究のメリットですが、先にもお話ししたように、一般的な転職という表現ではなく、大学の「研究員(リサーチ・フェロー)」として、キャリアを高めるようなイメージを用意したことが1つ目だと思います。アカデミックな志向を持っている人が、将来的にリサーチ・フェローからさらに客員教員になっていって、仕事をしながら一方で教員のような立場にもなれる。それを目指せることが大きなメリットとなっていると思います。
2つ目は、これもお話ししたとおり、6ヶ月(10月〜3月というタイミングも重要)をかけてチャレンジできることですね。リサーチ・フェローにとっても、企業にとっても心理的プレッシャーを軽減できることになると思います。
さらに3つ目としては、企業から活動費という形で月30万円がリサーチ・フェローに付与されることです。現在の仕事を辞めてこのプログラムに参加する人は、収入がなくなります。それは大きなリスクですが、この仕組みによってそれが軽減されることになります。なお、企業にとってはコストと見えるかもしれませんが、相対的に見れば実はかなりローリスク・ハイリターンの投資となります。通常、中小企業で今回のリサーチ・フェローのような人材を確保するためには、人材派遣会社などにかなり多くの費用をかける必要があります。しかも、払ってもマッチングがなかなかできなかったり、一発の面談で極めなければならない。それに対して本事業はその課題をクリアできる。もちろん絶対値として半年間で180万円の投資を安いとは言えないかもしれませんが、半年間雇用する中で得られる成果もありますので、企業側にはかなりのメリットがあるのではないかと考えています。

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国立大学法人信州大学 林 靖人 准教授

プログラム後に就職。共同研究の夢も膨らむ

―3月30日に行われた最終報告会では、9名のリサーチ・フェローによる報告が行われました。林先生が特に印象的だと思われるものは?

自分が直接に担当したということもありますが、一つは、半年で一定の事業化を実現した藤尾さん(株式会社タカノ)の例です。当初、タカノ様の課題は「経営の見える化」をテーマにしていました。しかし、企業側と相談する中で半年間という期間・受入環境・会社の資源等を考えた結果、「金属3Dプリンターの事業化」というテーマに取り組むことになりました。金属3Dプリンターは、長野県では「株式会社タカノ(http://www.takano-s.co.jp/company/)」だけが持っていると聞いています。しかし、新たな事業展開に向けての計画や時間をかける人材が不足している状況だった。そこで今回はそれを使って、「精密板金事業とのコラボレーションや新しい事業分野を金属3Dプリンターから考える」ことがミッションになったんです。一方、リサーチ・フェローの藤尾さんは、プリンタ等の製造販売を行う大手メーカーに勤めていて、営業職をされていました。大学院でMBAも取得され、その知識やこれまでのネットワーク等が有効になると考え、マッチングをしています。
今回、半年間の間に彼は、3Dプリンタの市場分析から事業発展モデルを社長と頻繁にディスカッションをしながら描きました。彼が企画した展示会では、これまでの記録を超える1,000人以上の来場者があり、コンタクト先から受注が生まれ、事業の損益分岐となる目標値も達成しました。

―100年企業創出プログラムでのモデルケースが誕生したということですね

成果という意味では、彼は株式会社タカノに就職をしていますので定着まで達成をしました。しかし、本プログラムの狙いはもう一段階あり、そこの第一歩も実現しています。本プログラムでは、リサーチ・フェローたちの中から実践研究・実践教育を担える人材を生み出し、「客員教員」として迎えたいと考えています。それら人材は、産学連携を学生に教えたり、キャリア教育、インターンシップ等のメンターなどをお願いしたいと思っています。藤尾さんは客員教員へのステップアップにも希望があって、今年の4月24日にはキャリア教育の授業で講師を担当してもらいました。

―それはすごい。まさにプログラムの理想的なモデルになりつつあるんですね

今後は、大学と共同研究を一緒に生み出していくことや連携事業などについて、高野社長や藤尾さんと話をしています。実際、連携の間に入れる人(コーディネーター)がいれば、会社の全体を見ながらも大学の研究も意識して、組織対組織の共同事業が可能になります。既に、色々と話は出てきているので、今後、具現化できることを期待しています。

信州100年企業創出プログラムの各研究・実践活動成果についてはこちらをご覧ください。
FILE.01/信州からイノベーションを。ものづくりベンチャーの未来
FILE.02/地域資源とスポーツの融合で地元に永続する夢のあるクラブへ
FILE.03/マーケティングとチームビルディングで組織の強化とさらなる地域貢献を
FILE.04/自動車ビジネスの大転換期に向け企業の組織化から持続的成長へ
FILE.05/社内のコミュニケーション活性化と人材育成で生き残る地方中小企業へ
FILE.06/金属3Dプリンタの事業化から柔軟性と多様性のある組織へ

 
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信州大学学術研究院 総合人間科学系 准教授(博士:学術、専門社会調査士)

林 靖人(はやし やすと)さん

1978年生まれ、愛知県出身。信州大学大学院総合工学系研究科修了(博士:学術)。専門は感性情報学。修士課程在学中から大学発ベンチャーの立ち上げに参画し、社会調査や行政計画等の策定に従事。現在、信州大学産学官連携・地域総合戦略推進本部長、キャリア教育・サポートセンター副センター長として研究・教育に関わりながら、地域貢献活動として地域の地方創生総合戦略等の策定や地域活性化活動に多数関わる。

ベンチャー企業を支援するリサーチ・フェローも

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