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データから読み解く地方転職のいまと、地域経済における役割とは
亀和田 俊明
2019/10/16 (水) - 08:00

今年の4月に地方への移住をテーマにコラムを書いたことがありますが、今回はUIJターンを通じて地方都市の中小企業や小規模事業者への転職についての現状などから中核人材の転職の可能性と地域の活性化について考えてみたいと思います。

中小企業等が大企業人材の雇用に携わった経験は約3割

2008年に約1億2,800万人あった日本の人口は2053年に1億人を割り、2065年には約8,800万人になると試算されています。これほどの人口急減は今までに経験したことのない事態で、税収減による財政悪化に悩まされる自治体も少なくありません。少子化や高齢化が進む地方都市においての懸念は若年層を中心とした人口流出です。地域経済を支えなければならない産業の担い手不足による衰退が深刻化しています。

さて、地方創生への機運が高まるなかで、都市部への人口集中を緩和する取り組みとして注目されているのがUIJターンです。この形態を実現する上で移住先における環境整備に加えて、地方都市において就業先を確保することが重要です。UIJターンを促進する施策により大都市圏の人材を地方都市の中小企業や小規模事業者が確保し、人材不足を補うことにつながるほか、地域経済の活性化にも寄与することになるでしょう。

■UIJターン
主に大都市圏の居住者が地方圏に移住する動きの総称のことで、Uターンは出身地に戻る形態、Jターンは出身地の近くの中規模以上の地方都市に移住する形態、Iターンは大都市圏で生まれ育った者が地方圏へ移住する形態を指します。

最近では、景気の回復基調に伴う労働需要の増加や雇用のミスマッチ等を要因として、中小企業・小規模事業者の人材の量的な不足感は強まってきています。いずれの職種でも不足感が強く、「研究開発・製造」や「国内営業」という人材のみならず、とりわけ企業の事業活動で事業上のさまざまな業務において中核的な役割、つまり経営戦略の立案や事業展開を担う中核人材の需要が高まっているといいます。

特に最近、注目されているものの一つに大企業からの人材確保があるといえます。大企業で経験を積んだ高度な技術やノウハウを有する人材を採用することは、中小企業・小規模事業者の中核人材を採用する一つの手段として有効と考えられます。2014年に実施された中小企業庁の下表の調査で、「検討したが雇用はない」と「雇用したことがある」を合わせ約3割の中小企業・小規模事業者が大企業で就労する人材の雇用に携わった経験があることが分かりました。

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(資料:中小企業庁委託「中小企業・小規模事業者の人材確保と育成に関する調査」より作成)

大企業から人材を確保した中小企業・小規模事業者の人材採用の手段としては、「知人・友人の紹介」が14.7%と最も高く、次いで「取引先・銀行の紹介」(12.8%)や「ハローワーク」(12.5%)と続きます。なお、大企業の人材を雇用することについては、「大変満足」が12%、「満足」が45.6%となっており、約6割の企業が大企業人材の雇用に前向きな評価を下しているといえます。

中小企業や大企業から地方の中小企業への転職は75%

前述の調査よりUIJターン者の側から転職の実態を見ると、転職経験者は全体の44.8%と半数近くを占めていますが、そのうちUIJターン転職の経験者は6.5%となっています。中小企業から中小企業へのUIJターン転職者が41.5%、大企業から中小企業へのUIJターン転職者が33.6%となっており、中小企業・小規模事業者がUIJターンを伴う転職における雇用の受け皿として重要な役割を担っていることが分かります。

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(資料:中小企業庁委託「中小企業・小規模事業者の人材確保と育成に関する調査」より作成)

UIJターン経験者が感じた課題としては、「賃金収入の低下・不安定化」が32.4%、「就職が見つけづらい」が15.3%、「移住に伴う生活基盤の確立」が12.4%と高い割合となっています。実際には過半数の人が減収となっているものの、「減収していない」も44.8%を占めています。一般的にUIJターン転職によって収入が減収すると思われますが、実態としては必ずしも減収を伴うものではないようです。

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(資料:中小企業庁委託「中小企業・小規模事業者の人材確保と育成に関する調査」より作成)

また、就職先を探す際の課題としては、「候補となる転職先の情報がない/集められない」が23.7%、「年齢の制約」が15%となっているものの、一方で「特に課題はない」も18.5%と高い割合となっています。このような課題に直面するなかで、UIJターン者はどのように就職先を見つけたか、では、「知人・友人の紹介」が32.1%で個人的なつながりによる転職が最も多く、次いで「ハローワーク」が17.9%、「就職情報サイト」が8.4%となっています。

そして、「移住に伴う生活基盤の確立」については、UIJターン転職に関する自治体からの支援は「補助金・助成金」が33.2%、「住宅提供・斡旋」が19.1%、「子どもの就学・相談」が3.5%と続いています。その一方で、「特に支援は受けていない」が44.2%と最も高いものとなっていますが、現在、東京23区から東京圏以外へ移住し、移住支援事業を実施する都道府県が選定した中小企業等に就業するなどした場合には交付金が支給される制度もあります。

都市部からの中核人材の採用が地域産業の活性化へ

地方都市においては、人口減少に伴う産業の担い手不足が深刻化しており、特に一次産業や伝統産業などが主要な地方の自治体では産業の衰退が問題となっています。経済活動を支える人材の不足は経済や産業の維持、成長への壁となることが懸念されます。地方都市の中小企業は地域に根差したものも多く、地域のさまざまな経営資源をうまく生かしてもいますが、こうした時代だからこそ変革を求められてもいます。

産業は時代に合わせて移り変わり、変化に合わせた産業の見直し、新たな産業の創出を図らなければならない時もあります。地方都市の中小企業は既に成熟化している市場環境にありますので変革が求められます。それを推進するためには地域外からの新たな人材のスキルや経験が必要となりますし、価値観を受け入れたり、多様な働き方に対応できる場を設けたりすることが重要です。

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「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太方針)では東京一極集中の是正が掲げられていますが、地方都市への新たな人の流れを創出するためには、中核人材を呼び込むことが必要です。地方の中小企業は地域経済に対する比重が大きいので、事業が発展し、利益が上がれば地域経済も良くなります。大都市圏から新しい中核人材が来ることによって、社内が変わり、会社が変わり、地域が変わって、その街の活性化にもつながることでしょう。

UIJターンの促進には、大都市圏で働く人を地方都市への転職を伴う移住を促進することが重要です。そのためには、地方圏への転職に関する不安を解消する必要がありますが、多様なライフスタイルのニーズに応じた受け入れ環境の整備、大企業では味わえない能力を発揮できる仕事や魅力的な仕事の提供により、将来を担う中核的な役割を果たす人材の採用がさらに望まれます。

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