カルチュア・コンビニエンス・クラブ時代のやり残しを故郷で
株式会社リージョナルマーケティング 取締役兼最高執行責任者 渡部 真也氏
BizReach Regional
2017/10/02 (月) - 08:00

北海道ドラッグストア業界の雄、サツドラホールディングス社の執行役員であり、子会社にあたるリージョナルマーケティング社の取締役兼最高執行責任者(COO)を務める渡部真也さんは、東京のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)社で働き、Uターンで現職に就きました。CCCでの経験を活かし、北海道限定ポイントカード「EZOCA(エゾカ)」の運用拡大を図るほか、電力自由化にともないサッカーJ1リーグ北海道コンサドーレ札幌と共同で「エゾデン」を設立。地域の人と暮らしをつなぐプラットフォーム作りを通じて、生まれ故郷である北海道の発展に取り組んでいます。

見えている着地点よりもチャレンジの場を選ぶ

今、北海道限定のポイントシステムである「EZOCA」を運営しているわけですけど、そのベースはもちろん、CCC社での経験があります。もともとは、大学卒業後にレントラックジャパンという会社に就職したのですが、そこがCCC傘下に入り、2015年に吸収合併されたことで自分もCCCの社員になりました。
CCCでは経営企画とやっていたので、増田宗昭さん(代表取締役社長兼CEO)にも近いポジションにいました。罵声を浴びながらの仕事もありましたが、離れてみるとその偉大さがわかりました。指導力というか、リーダーとして引っ張っていく力は本当にすごいものがある。今、自分自身が組織を回す責任を負うようになって、身に染みてその力がどれだけのものだったかと感じています。
北海道の上川町というところで育ち、高校を出た後はフリーターでした。20歳の時に、ワーキングホリデーでカナダのバンクーバーに行きました。自分と同じような立場の日本人がたくさんいたのですが、彼らはしっかりとした夢を持っている。一方で自分自身は何かふわっとしていました。異国でそういう環境に身を置くと、自分自身の土台のなさを実感するようになりました。帰国後、建築関係の会社に少しいて、受験勉強をして大学に入りました。この時点で4年の回り道をした計算ですが、自分としてはその後の人生に大きな影響を与えた時代だったと思います。

サムネイル

大学を卒業して入ったレントラックジャパンでは、最初は営業をやっていました。5年目に配置転換があり、管理部門で経営企画の仕事を始めました。以後、M&Aで所属はCCCに変わりながら、合計14年働きました。キャリア上の着地点が見えてきて、これ以上いても自分自身のポジションは頭打ちじゃないかと考えるようになりました。人生の風向きを変えたいなと思って転職を志したのですが、生まれ故郷の北海道には経営企画などという求人はほとんどありませんでした。これは東京での転職になるかもなと思っていたところ、サッポロドラッグストアーから誘いがありました、社長の富山さんから「ぜひ一緒にやろう」と言われたことが大きく、サツドラからの出向という形でリージョナルマーケティングに加わりました。CCC社は大きな組織でしたが、人材の流動性というのはそれほどなくて、仕事も属人的なところがありました。自分が辞めるとなると困るだろうとは思いましたが、地元・北海道へのUターンということで情緒的に言いやすいところはありましたね。それでも、言い出すのには勇気がいりましたが、上司からは「チャレンジするステージを与えてやれなくて、逆に申し訳なかった」との言葉をもらいました。

地域を生かすプラットフォームを作りたい

リージョナルに呼ばれた理由は、新規事業の立上げでした。会社が13年の8月にスタートしていて、私が入社したのは直後の10月でした。CCC社時代に経営企画の立場でTポイントの仕組みも見ていたので、仕事に違和感はありませんでした。ただ、少しおごった言い方かもしれないですが、東京で12年やってきたことに自信を持って、次の10年は、自分のアセットを地元に還元するようにしようと思いました。今度はチャレンジするステージを与えられたのだから、自分の仕事をただ頑張るだけではなく、地域のためになることをやろうと決意していました。具体的に言うと、地域の人をつなぐプラットフォーム作りです。

一例になりますが、札幌はカルチャーという点で、他の大きな都市ほど根づいていないところがあります。アーティストは仙台まで来ても、札幌まではなかなか来ない。逆にアーティストが来たとしても、「嵐」でもない限り埋まらない。原因として、可処分所得が少ないことも関係しているのではないかと感じていて、この地域の給料のベースを上げていかないと、そうしたものが根づかず、若者がどんどん流出していいてしまうと思います。

サムネイル

十勝でも美瑛でも、いいものをいっぱい持っているのに、地域としてそれを生かせていない。都会と直接やって、いいようにやられているというか、ビジネスが下手なのだと思います。雇用や賃金が上げるために、地域として生かせるプラットフォーム作りが重要です。
EZOCAは140万人が600店舗で使うカードで、人と人、店と店をつなぐことが基本マインドにあります。なので、顧客の手数料にあたる部分は大手ポイントカードが2%程度なのに対し、EZOCAは半分以下の0.6%です。なおかつ、還元率は変わらない。使ってもらうことを最優先しています。

地域のための人材を育て 目指すは北のリクルート

ナショナルのポイントシステムにはナショナルの、ローカルにはローカルの特色が必要です。札幌は経営者同士の距離が近い。顧客とも近い。地場に密着した距離感で、ウェットなサービスを切り開いていくことを目指しています。
株式会社コンサドーレさんと共同で立ち上げた電力会社「エゾデン」についても、同じく地域の人とつながるためのプラットフォームです。ポイントカードは買い物の際に使用するものですが、電気は生活にずっと寄り添うサービスなので、もっと身近に感じてもらえるサービスができると思っています。

サムネイル

弊社は全員が中途採用です。Uターン組と道外から来た人が多数を占めています。小売業界自体が固い考えが多い中、土地柄として北海道の人もなかなか外に出たがらない。固定観念に支配されがちな環境で新しいサービスを作るのに、外に出たことがない人が考えるというのでは、客観的な評価はできにくいし、いいところも見過ごしがちです。少なくとも、弊社の現時点では、外から北海道を見たことのある人の目が重要です。

自分としては、道外から来た人が弊社で活躍して、どんどん道内で起業したり他の企業に引き抜かれていったりして、地域の経済を支えていってほしいと思います。例えるなら、ひと昔前のリクルートさんみたいに。そうした姿を見て、後を追うように道外から人材が流入してくるようになることが理想です。弊社での業務とサービス提供を通じて育った人材とそのネットワークも、地域の大きなプラットフォームとしていきたいと思います。

サムネイル

株式会社リージョナルマーケティング 取締役最高執行責任者(COO)

サツドラホールディングス株式会社 執行役員

渡部 真也(わたなべ しんや)さん

1972年、北海道上川町出身。高卒後、フリーター生活やカナダでのワーキングホリデーなどを経て桜美林大学を卒業。レントラックジャパンに入社するが、M&Aなどを通じて同社がカルチュア・コンビニエンス・クラブ社に吸収合併されたのを受け、CCC社の社員となる。2013年に北海道のサツドラホールディングスに入社し、リージョナルマーケティング社に出向する。現在、サツドラ社の執行役員とともに、リージョナル社の取締役兼最高執行責任者(COO)を務める。

Glocal Mission Jobsこの記事に関連する地方求人

同じカテゴリーの記事

同じエリアの記事

気になるエリアの記事を検索