地方創生シリーズ03main.jpg
暖簾分けスタイルで全国に広がるエフビズモデル
富士市産業支援センター「f-Biz」センター長 小出 宗昭さん
GLOCAL MISSION Times 編集部
2018/01/09 (火) - 08:00

中小企業や起業家への支援活動の成功モデルとして、全国的に注目される「富士市産業支援センター/f-Biz(エフビズ)」。今や、その分身ともいうべきエフビズモデルの拠点が、全国11カ所に拡大し続々誕生している。最終回の今回では、独自の「知恵」を出すコンサルティングが求められる理由、今後の展開などを小出センター長に語っていただいた。

<地方創生シリーズ01>出向を転機に中小企業支援の道へ

<地方創生シリーズ02>人・物・金がないなら“知恵”を出す

地方創生を担うエフビズモデルの中小企業支援、全国各地へ拡大中

そもそも、bizのモデルを増やそうというつもりはないんですよ。あくまで、要請があって、それに応えるためにやっています。むろん、こうあればいいなというのはありますが、私の方から「やってくれ」って言うのは、全然言わない。
必要という機関があって、必要とされている所であれば、お手伝いをする感じです。自分たちがやっていることには絶対的な自信を持っているし、地方創生という流れの中では、我々をしのぐモデルはないと思っています。
けどね、それが広がるか広がらないかっていうのは、当事者の危機感だと思うんですよ。ただ、地方はどんどん厳しくなっていくから、そういう流れの中で、増えていっているんだと思います。その流れをみて、更に多くの市長村が意欲を喚起され、トライしてくるんじゃないかなって思っています。

どれぐらい増えるかっていうのは良く分からないですよ。我々が関われる数は決まってるんですよ。粗製乱造なんて絶対できないし、きちんとした人を募集して、選定して、トレーニングしてっていうやり方をしているので、いっぺんに目の前に置いて教えるっていうのは結構大変で3〜4人が限度なんです。それを3ヶ月間ぐらい行うとすれば、おのずと1年間で増やせる限界点って見えるじゃないですか。
だけど、こういう流れをみて、成功モデルだからって質の良くない類似”biz”が広がったら困るなって思っています。条件や形式は似ているんだけれども、全然質が違うようなもの。なので、全国のbiz会議で我々が関わったもの、そうでないもの、と差別化を図ろうと思っています。

FC化でなく、暖簾分け。人材採用・育成にも関わる

ビジネス的に考えればね、一番僕らの会社として儲かるのは、僕の会社をFC化しちゃうことですよ。実際、そういう話もあったけど、それは絶対やらなかった。だって興味がないし、尚且つ質が低下してしまうことも嫌だったので。なにより、これは市町村が自分たちで責任を持ってやることだと思っています。市町村が、覚悟を持ってやらないとダメなんですよ。市町村に覚悟がなく、ただ丸投げされるのでは絶対にうまくいかない。なので、僕は、1つひとつがきちんと立ち上がることが大事だと思っています。言うなれば、めちゃめちゃ流行ってるこだわりのラーメン屋の親父が、暖簾分けさせるようなものですね。弟子たちが来て、「ばかやろう」みたいな感じで厳しく指導して、とうとう一人前になったらようやく「じゃあ、お前に暖簾分けるよ」って渡すようなイメージです。僕には、それしかできないと思ってますよ。それぐらい厳しい世界だと思ってやっているんです。
なぜかっていうと、使う資金は税金だから。市民に税金の無駄遣いって言わせちゃいけない。わざわざ招聘された民間人のプライドとして、圧倒的な成果を出すしかない。圧倒的な成果を出すってすごい大変ですよ。だから、最初からそういう水準に持っていかなきゃダメだろうなって思っています。だからこそ、暖簾分け方式で立ち上げの時には関わるし、人材育成も、選定も手伝う。その後は定期的にお邪魔する。評価を依頼されているところには、きちっと評価もしています。繰り返しになりますが、税金を使っている以上、成果を出せなければ、市民に申し訳が立たないですからね。

エフビズモデルの評価基準とは?

具体的にどういう場合に成果を出せたか、ですね。そもそも質が良くなかったら相談にも来ていただけないわけですから、相談件数は評価のバロメータではあるんだけれど、むしろ、具体的にどんな成果を生んだかということを見ています。その人の知恵で具体的にどれぐらいイノベーションを起こすことが出来たかっていうのが最も重要ですね。

自治体の観点では、今まで膨大な税金を費やしていても評価なんてあまりしていないんです。地方都市で大企業が撤退した際の落ち込みといったら、法人税なんて億単位でバーンと落ち込んじゃうんです。雇用だって、千数百人一気に落ちる。なので自治体全体で成果を見える化するのは、ものすごく難しいんです。

だから、我々の取り組みとしては、「具体的に何が起きたか」を見える化することだと思っています。どれぐらいイノベーションを起こすことが出来たか、ですね。
また、これからトライしようと思っているのですが、自分たちが関わった企業の法人税の納税額を全部集計して、それを見れば何パーセント上がったかっていうのを可視化できるかなと考えています。実際、自分たちが支援にあたり成果が出た企業の法人税の納税額はかなり増えているんです。

ただし、そういったことだけじゃないものもあります。小さなイノベーションが次々起きて、それが連鎖するっていうことの「重み」。次から次に前向きな人たちが出てくる。しかも既存の企業からですよ。「あいつも頑張るんだから、俺も頑張ろう」っていう雰囲気にさせることが大事なんです。一社だけが頑張るとか、特定の商品が単発で受けるような地域おこしではダメなんです。地域の中で、雇用を支え、経済を支えるのは、地域の中の中小事業者、小規模事業者。その人たちの中から、1人でも多くの前向きなチャレンジャーを増やすことが、地域活性化の唯一の道なんです。
それが出来るモデルは我々の取り組みしかない。他は「地域全体」という面で捉えていないんです。我々は面で捉えられる。「どーんとこい、チャレンジャー募集」という感じです。ただ、ここに相談に来たら自分はこうなるっていうイメージがつかないと、人は来ないんですよ。だから我々は積極的に成功事例を発信しているんです。

小出氏01.jpg

情熱をもって続々集結。エフビズモデル新拠点のリーダー

新拠点のリーダーを選定するにあたり、審査は厳しいですよ。まず書類審査は、大きく分けて質問項目が2つあります。
たとえばまず、「これはf−Bizモデルです。それを研究した上で、あなたは邑南町で何をやりますか。木更津で何をやりますか」と聞くんです。これは、リサーチ力の確認ですね。
もう一つは、具体的な相談案件を2件ぐらい出して、具体的にどういった提案をするのか、というのをみています。
たとえば、具体的な相談案件として…
「市内で木工業を30年やっています。小物の家具中心で、具体的にはこんな製品があります。売り方はこういった方法でやっています。ですが、売り上げがどんどん下がっています。」
「町の洋菓子屋を30年やっています。この10年減収が続き、いろんなことをやったけれどダメでした。商品の売りはチョコレートケーキとショートケーキとシフォンケーキでしたが、これも翳りが見えています。」
みたいな感じです。特に発想力を見ているんです。クリエイティビティですね。
その上で、例えば壱岐だったら応募者391名から僕と僕の一番弟子で岡崎市OKa-Bizセンター長の秋元君、市の担当の3者で、面接する候補者を20〜30人ぐらい選出しそれをさらにすり合わせして、最終的に5〜6人に絞って面接しました。
面接は通常、僕と秋元君、さらに、地元の中小企業者が3人ぐらいいます。主に商工会議所の会頭とか、女性の部長さんとかに来てもらっています。その3人に、それぞれ経営者として自分たちが今持っている悩みをその場でぶつけてもらうんです。
40分の面接で、5分は自分のプレゼン自己紹介があり、残りは矢継ぎ早の質問の応酬ですよ。僕らは今f-Bizが抱えている案件をボーンと投げて、どう答えるかを見ています。
最終的に、地元の中小企業者が一体誰に相談したいかを選んでもらうんです。そこでの選定目線は、我々がこの候補者が一番良い、という評価とほぼ一致するんです。こんな面接している所なんてほかにはないと思いますよ。

応募者は首都圏が4割ですね。結構いるんですよ、地域の中で汗かきたいって思っている人材は。第二の人生っていうご年配の方も一部いるけど、若い人が多いですね。30代、40代もいます。たとえば、2017年8月に長崎県壱岐市に開設された、壱岐市産業支援センター「Iki-Biz(イキビズ)」のセンター長の森俊介さん。新しいスタイルのブックカフェで有名となった「森の図書室」(東京・渋谷区)を運営していましたが、そこを後継者に託して壱岐の住人になるんです。(参考記事:長崎県壱岐市──「行列のできる相談所」Iki-Biz(イキビズ)センター長が決定

ほかにも、たち吉の前社長である岡田高幸さん。福岡県直鞍ビジネス支援センター「N-biz(エヌビズ)」のセンター長として頑張ってくれています。福山ビジネスサポートセンターFuku-Biz(フクビズ)の池内精彦さんは元バリーの社長。転職市場でも引く手数多だったのに、Fuku-Bizに入りました。良いポジションにいる人材が地域のために貢献しようと応募してきてくれるんです。彼らはみんな年収ダウンですよ。そういう人たちが振り向いて来てくれてるんだから、日本っていい国になったなと思いますね。彼らの情熱、情熱って言っても、半端ない情熱なんですよ。上っ面な情熱じゃないんだよね。腹のくくり方の度合いが違うな、と感じています。

彼らが応募してくるきっかけは、働くことに大きな疑問を持ったからかもしれません。そういったときに、例えば僕の記事を偶然見て、こんな仕事あるんだ、って思って来た人もいるし、様々な事情でいかに生きるかということを考えていた時に募集を見て、チャレンジしてくる人もいる。だから、働くこと、生きることに大きな疑問、深く考えている人が多いんじゃないかなと思います。「生きること」「働くこと」に真剣だし真面目。だから「社会」にとってもためになることをしたい、と考えるんだと思います。

16年間現場主義。様々な期待や応援を活力に中小企業を支援

よくある経営者セミナーなんかに行くと、高額な受講料を払って来ている中堅企業の経営者がいます。みんな人材で悩みがあるんです。「右腕となる幹部人材がいない」とか。そんな時思うのは、「あなた自身は本当に命賭けて自分の仕事やってますか?」ということ。自分自身をもっと磨いて、経営者がもっと汗をかいて仕事したらみんなついてくるんじゃないのかなって。
そういったところに気付いていない経営者が多いんじゃないかな。今の厳しい事業環境の中で、もしただ居座っているだけの社長だったら、尊敬の念を持ってついてくるようなことはないと思うよ。意識が低いなんてことは言わないけれども、あまりにも人のせいにするような経営者が多いような気がします。うちに相談に来てる人たちは、そういうことは言わないですね。だって、本当に何とかしようと思って来てる経営者だからだと思います。

ああいった東京のホテルを使って、高いお金を使って来てるような経営者は、勉強好きかもしれないけれど、そういったところに行く経営者と、我々の現場に相談に来る経営者とは明らかに違います。彼らは、ギリギリの中で、何とか頑張ろうとする人たちです。そういった経営者は、何も考えてない、おんぶに抱っこの依存型ではないんですよ。国や県の補助金をあてにする、なんて人はいない。なんとかして生き残りたいっていう人ばかりだから。必死感がすごいんですよ。社長もすごく働いている。

私自身はずっと現場の人間です。16年も公の中小企業支援の現場で張ってる人間なんてなかなかいないと思う。私以上に、中小企業と会っている人はそういないと思います。これには自負を持っています。そんなきっかけを与えてくれた静岡銀行には、とても感謝しています。静銀じゃなかったら、こんなチャレンジはさせてもらえなかった。この仕事を通じて、起業家や中小企業の方に教えられた部分って大きかったし、本当に彼らに教えられたと思います。こんな真面目に、働くことについて考えられて幸せだなと思うし、ほんとに真剣になって社会のことを考えられるようになったと思います。だから常に真剣にやらなくちゃならないんです。
独立した後の9年間、何回入院したんだろう。いろいろなところを痛めたり、手術したり。去年は、1ヶ月入院して。静岡日赤で僕のことを知らない人はいないくらいですよ。
それをやり抜けているのは、この仕事があるからだと思います。この仕事がなかったら、仕事よりも自分の健康を優先していたかもしれないですね。ナースもドクターも、みんな「頑張れ、頑張れ」って励ましてくれたんです。
2005年、治療の副作用で苦しんでいた時があったんですが、翌日には、浜松で400人が集う講演があって、その翌日には沖縄で50人が集うセミナーがあって。私はあまりギブアップしないタイプなんですが、さすがにその時はきつかったので、「先生、入院を続けさせてください。400人が来てくれるセミナーがあるからこれだけは出て、沖縄は50人なのでキャンセルします」って言ったんです。そうしたら、ドクターに「応急は俺たちが何とかするから、キャンセルするのはダメだ」って言われました。あなたには待ってる人がいるんでしょうって。
そんな風に、みんなが応援してくれるから頑張れる。頑張れるって思える自分がいるのって、幸せですよね。だからこの仕事を続けているんです。みんなが注目している、期待している。だから、やり続けなきゃって思うんです。私は本当に良い経験をさせてもらってきました。私は本当にめちゃくちゃ幸せなんだろうと思います。だから、これからもいろいろな形で返していかないとダメだと思っています。

<地方創生シリーズ01>出向を転機に中小企業支援の道へ

<地方創生シリーズ02>人・物・金がないなら“知恵”を出す

小出宗昭氏

富士市産業支援センター「f-Biz」 センター長

小出 宗昭さん

59年生まれ。法政大学経営学部卒業後(株)静岡銀行に入行。M&A担当などを経て、01年 創業支援施設SOHOしずおかへ出向、インキュベーションマネージャーに就任。起業家の創出と地域産業活性化に向けた支援活動が高く評価され、Japan Venture Award 2005(主催:中小企業庁)経済産業大臣表彰を受賞した。08年 静岡銀行を退職し(株)イドムを創業。富士市産業支援センターf-Biz(エフビズ)の運営を受託、センター長に就任し現在に至る。静岡県内でも産業構造の違う3都市で計4か所の産業支援施設の開設と運営に携わり、これまでに1,300件以上の新規ビジネス立ち上げを手掛けた。そうした実績と支援ノウハウをベースに運営しているエフビズは、国の産業支援拠点「よろず支援拠点」や愛知県岡崎市のOKa-Biz、広島県福山市のFuku-Biz、熊本県天草市のAma-biZなど各地の地方自治体が展開する○○-Bizの原点となるモデルでもある。

GLOCAL MISSION Times 編集部

同じカテゴリーの記事

同じエリアの記事

気になるエリアの記事を検索