“多様性”で企業を変える!地方における「人事」の可能性とは!?
シャドウウィングス代表取締役 平岡 純さん
GLOCAL MISSION Times 編集部
2018/09/13 (木) - 08:00

いかに自社のニーズに合う人材を採用し、組織の活性化につなげていくか。「人事」はあらゆる企業にとって常に重要な経営課題だ。札幌に本社を置く「シャドウウィングス」は、そんな「人事」に特化したコンサルティング企業。代表の平岡氏自ら「人事部長」として乗り込むスタイルでクライアント企業の業績を上昇気流に乗せ、注目されている。そんな平岡代表がめざす「成長戦略としての人事」とは?地方における人事の可能性についても語ってもらった。

きっかけは「人事部を作ってほしい」という要望から

―まずは御社の事業内容について教えていただけますか?

地方では今、経営者の高齢化が進んでいて、企業の事業承継が深刻な問題になっています。その解決を促すべく、地方における世代交代や人の流動化を仕掛けていくことが、私の仕事です。
具体的な取り組みとしてはまず、商品としての「人事部長」があります。私自身がクライアント企業の人事部長となり、成長戦略としての人事体制づくりを推進しています。と同時に、地域社会のなかで人の未来を育んでいくための仕組みや、ノウハウを学び合っていくための環境づくりにも取り組んでいます。

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株式会社シャドウウイングス 代表取締役 平岡 純さん

―人事をご専門にされるようになったきっかけは?

大学での専攻は化学でしたので、人事とは全く関係ないところから、現在にいたっているんです。人事に携わるようになったきっかけは、新卒でワイキューブという会社に入り、中小企業の新卒採用をお手伝いする仕事に就いたことでした。学生から社会人になったばかりなのに、仕事の相手は皆さん経営者ばかり。仕事のパートナーとして認めてもらえるように、必死で人事についての専門性を身につける努力をしました。仕事ができるようになれば経済的にも豊かになるだろうし、できる人間に人は集まるだろうと考えていましたから。

―20代は東京でご活躍だったんですよね。札幌に仕事場を移した経緯は?

ワイキューブ時代の同期が作った「I-ARUMAS(アイアルマーズ)」、逆から読んだら SAMURAI(サムライ)なんですが、この会社に入ったのがきっかけです。東京と札幌に拠点があったんですが、札幌のメンバーが辞めてしまい、札幌に代表だけ残るという変な構図ができてしまったんです。「どう考えても東京に代表がいた方が売れるはず」と私は撤退を推したんですが、代表が「1人だけでも札幌に拠点を置きたい」と。そこで当時、営業とコンサルができる人間は自分しかいなかったので、自分が札幌に行くことにしたんです。ですから行きたくて行ったというよりは、必死に会社を立て直すため、という感覚の方が強かったですね。

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―それが2007年なんですね。そして札幌での出会いが大きな転機になられたとか

ええ。札幌に入ってすぐに、今もお取引きが続いている結婚式場の社長とお会いしたんです。「多店舗展開をするから人事部を作ってくれ」というオーダーをいただきまして。僕はそれまで人事部をやったことはなかったんですけれども、やってみようかなという形で始まったのが「人事部長」というお仕事です。1年やってみて、その社長から「うちの仕事に専念してくれ」と言っていただきました。本来であれば、元の会社に収まるべきだったんでしょうが、元の会社もリーマンショックの影響で経営が厳しい時期がありまして。それを救ってくれたのが、結婚式の会社の社長さんだったということもあって、どちらを選ぶべきかすごく悩みました。その結果、独立の道を選び、人事部創設の仕事を軸とした今の会社を立ち上げたんです。
その後、結婚式場の方は、札幌だけでなく、東日本、西は岐阜まで、13店舗に増えました。そのプロセスの中で18年に西日本に進出しようという計画があり、品質強化のためにお花屋さんを買収し、現在はグループ会社として展開しています。結局は全て1社目のご縁から始まったということを最近よく思います。

会社の成長を支える、経験も国籍も多様な人材たち

―「人事部長」としての取り組みを教えてください

力を注いでいるのは、“社内に多様性を確立する”ということです。活用できる人材の幅を広げることで、収益力に比例させたいという考えで、いろんな仕掛けをしています。多様性をテーマに掲げるようになった直接の理由は、労働人口の減少でした。僕は2004年から新卒採用に関わっていますが、最近は非常に人を採るのが難しい時代になっています。シンプルに言うと、良い会社と、そうじゃない会社の二極化が進んでいて、今の学生さんは、良い会社に流れていくという動きが完全に出来上がっているんですね。その点、多様性を推進していると、学生さんたちに好感を持ってもらいやすいんです。

―多様性の重要性に気づいたきっかけは?

私は以前、職人が多い会社を担当していたことがありまして。そういう会社は、勘で仕事をやっている従業員が多いので、あるとき、それを明文化していく作業に取り組んだんです。どの作業に時間がかかっていて、どの作業は切り分けることができるのか。そういうふうに業務を整理していくと、「この仕事はプロの職人じゃなくてもできるよね」と気づいたんです。それが人の多様化を進める1つのきっかけになりました。 もう1つは、「プロって、日本全体で探したらもっといるかもしれないし、世界で探したらさらにいるかもしれない」とシンプルに思いついたこと。採用ターゲットを1億じゃなくて、70億にしたらどうなるのかと考え、やってみたのもきっかけになりました。今、会社を伸ばしてくれているのは、そうした多様性を持った人たちなんです。

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―具体的には、どのような方々が活躍していらっしゃるんですか?

例えば、結婚式の会社の70%はブライダル経験がない、業界未経験者です。新卒採用は15名いますが、60%が13ある勤務地に配属され、縁もゆかりもない土地で勤務しています。
外国人採用も積極的に行っていまして、彼らの活躍で今一番伸びているのが、海外向け事業なんです。香港、台湾、上海の若い人たちに北海道に来ていただいて、結婚式をセットで提供していくという事業をやっているんですが、その責任者は、新卒で採用した中国人の4年目の女の子です。その他にも、秋田ではイタリア人も活躍して地域ナンバーワン店を作ってくれています。またパラレルワーカーの推進も多様化の1つですね。

私もパラレルワーカーの一人なのですが、社員の15%がパラレルワーカーです。例えば学校の先生などをしながら、当社でも働いてくれていたり、先日、映画「探偵はBARにいる3」が公開になったかと思いますが、その撮影場所が結婚式場だったご縁で、当社のスタッフが撮影のお手伝いをしていたり、出演もしたり。また自身の技術を使ってオーダーメイド家具の仕事を受けたり、百貨店のショールームの装飾を受けたり、ライターをしているスタッフもいます。

―まさに多様な経験や感性をもった人たちが働いていらっしゃるんですね。しかし世の中を見渡すと、まだまだ多様化が進んでいない企業も多いように思います

なかなか多様化が進まないのは、やっぱり企業にとっては結構コストがかかるからだと思います。でも僕はそれをコストでなくて、投資と考えているんです。投資することによって新たな流れを作ることができれば、多様性は推進できるんじゃないかなと。 活用する人材を広げるためには、今の流れを変えていかないと、いろいろな人を受け入れることができません。そこで業務の再構築も含めた生産性の向上にも当社は取り組んでいるんです。
特に地方でそういうことを仕掛けていると、PR効果もあります。社員の多様化を進めている結婚式場の会社も、エリアのメディアからかなり取り上げていただきました。

未来を学ぶ場所、未来を変える場所になりたい

―学生さんたちの教育活動にも力を注いでいらっしゃるそうですね

ええ、特に中学生や高校生などの若い世代ですね。僕は「13歳からのハローワーク」という本をすごくいいなぁと思っていたんです。あれを会社で実現できないかなと思っていたところに、たまたま地元の中学校から、「就業体験をさせてもらえませんか?」という話があったものですから、それをきっかけにして、中学校からのインターンを毎年受け入れています。今ではその時に来てくれていた人が、回り回って、就職活動をして、新入社員として結婚式場に入ってくれたりもしています。

―若い人材が「働く」ということを学ぶ機会を提供していらっしゃるんですね

特に地方で働くきっかけを結びたい思いはありますね。例えば岩見沢市や厚真町というところと一緒に組んで、自治体インターンシップをやってみたり。また、レバンガ北海道さん(プロバスケチーム)と組んで、二十代のファンを育成するためのインターンシップも企画しています。経験と出会いを変えていくことで、若い人たちと地域の未来を変えていくことができるんじゃないか、という思いでこうした活動を続けています。

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東京で得た専門性を活かし、地方で経営幹部になる

―地方における人事の可能性はどのように感じていらっしゃいますか?

東京で高い専門性をもって仕事をしている方は、地方の中小企業においては、経営幹部になりうる可能性が十分にあると思っています。そうしたポテンシャルを持った方が東京にはものすごく多いと感じていますね。実際、結婚式場の会社も、マーケティングの責任者も、財務の責任者も、ずっと東京や道外で働いていた人たち。声をかけるとそういう人たちがすぐに来てくれるので、キャリア形成という観点からいうと、地方はすごく可能性があるなと感じています。

―なぜそういう専門性の高い方々が、地方に活躍の場を求めるのでしょう?

皆さんが共通しておっしゃるのは、「歯車になりたくない」ということですね。自分の意思決定で会社を変えていくことができる、というやりがいを一番求めて来てくださいます。特に会社のビジョンが面白ければ面白いほど、「やってみたい」という人は必ず集まります。それが会社を変えていく最初のアプローチ。だからまずは経営者がビジョンやメッセージを打ち出すということがとても重要だと思っています。

―北海道で事業を始める上で感じているメリットはありますか?

自分みたいな仕事をしている人たちって、東京にはめちゃくちゃいるんです。でも札幌だと珍しい。それが一番のメリットだと思うんです。つまり、目立てるし、自分のやりたいことを加速させてくれている気がしています。

―受け入れる地方側も、外からの新しい力を必要としているのでしょうね

結局、会社も地域も、いい意味で変えていくのは、よそ者、若者なんです。しかも、出身や経験を問わない多様性を作っていくことが、企業においても、地域においても大事。この二つを変えていく力になるのは多様性だと、僕は実感しています。

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株式会社シャドウウイングス 代表取締役

平岡 純さん

京都府出身、大阪市立大学工学部卒業。採用・教育・組織活性のコンサルタントを経て、人事コンサルティング会社の取締役、札幌の婚礼式場運営会社、フラワーショップ運営会社の人事部長に就任。2010年に人事コンサルティング会社を設立。現在も自社含む記載の4社で従事。

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