雇用保険法改正! 賢く使おう「教育訓練給付金」
2017/12/06 (水) - 08:00
浅賀 桃子

会社員の方は通常加入している「雇用保険」。失業した際の手当くらいしか意識してないなぁという方もいらっしゃると思いますが、せっかく加入しているのですから失業時以外でもうまく活用したいものですよね。
2018年1月から雇用保険法が改正されることになり、「教育訓練給付金」が拡充されることをご存知でしょうか。

教育訓練給付金とは

雇用保険は失業時の給付のみならず、現在働いている方の主体的な能力開発取り組みやキャリアアップ、中長期的なキャリア形成を支援するためにも使われています。
そのために厚生労働省が提供している制度が「教育訓練給付制度」です。厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講し修了すると、本人が教育訓練施設に支払った訓練費の一定割合相当額がハローワークから支給されるというものです。現職者はもちろん、退職された方も条件を満たせば利用することが可能です。

教育訓練給付制度には「一般教育訓練給付」と「専門実践教育訓練給付」の2種類があります。以下で詳しく見ていきましょう。

一般教育訓練給付
現職者または退職後1年以内に厚生労働大臣が指定する一般教育訓練を受ける場合に支給されます。対象となる訓練講座は1万を超えており、プログラミングやウェブデザインなど情報関係や医療・社会福祉関係、事務関係など幅広い講座が指定講座となっています。

支給要件は雇用保険の被保険者期間が3年以上(初回支給の場合は1年以上)となっています。受講費用のうち20%が「一般教育訓練給付金」として支給されます(上限金額は年間10万円)。社会保険労務士や司法書士、簿記、宅地建物取引主任者など人気資格受験に対応している講座も多くありますので、講座費用が高いと受講をためらっていた方も一歩を踏み出す機会になるかもしれません。

専門実践教育訓練給付
看護師や調理師などの業務独占資格または名称独占資格の取得や、MOT(Management of Technology:技術経営)などの専門職学位の取得、大学院でのMBA取得など、専門性の高い講座として2017年11月現在の指定講座数は2000以上にのぼります。日中は仕事をしながら、週末や夜間にこうした給付対象の講座を受講することも可能です。

この専門実践教育訓練給付制度は、主に中長期的なキャリアアップ支援を目的として2014年10月に創設されました。
2017年11月現在、支給要件は訓練受講開始日に雇用保険の被保険者期間が10年以上(初回支給の場合は2年以上)となっています。
また、給付内容は以下の通りです。
・受講費用の40%を6カ月ごとに、原則2年(最大3年)まで支給(上限年間32万円)
・訓練修了1年以内に資格取得等し正社員等に雇用された場合、追加で受講費用の20%が支給(上限年間16万円)

しかし、2018年の雇用保険法改正に伴い要件が以下の通り変更になります。

<改正に伴い変更になる主なポイント>
支給要件の緩和
・被保険者期間10年以上→3年以上に短縮
・妊娠、出産等の理由により受講開始できない場合の給付金対象期間延長が最大4年→20年まで可能に

給付内容の変更
・受講費用の40%→50%へアップ
・上限金額が年間32万円→40万円へアップ

上記の変更は、2018年1月1日以降に受講開始する専門実践教育訓練から適用になります。

改正の狙いとは

支給要件のひとつである雇用保険被保険者期間が10年から3年に短縮されたことによって、対象者が一気に増えることが予想されます。また、妊娠や出産、育児、疾病などの理由により教育訓練を開始できない場合の延長申請期間が大幅に伸びたことにより、出産・育児、病気等で会社を辞めざるを得ず、その後ブランクが長期間に及んでしまった方も、雇用保険に加入していた期間が3年以上あれば、教育訓練を活用して学びなおし、新たなキャリア形成に役立てることができるようになったといえます。

政府を中心にして「働き方改革」が推し進められるなかで、生産性向上のためには人材育成が不可欠であるというフェーズに入りつつあります。人生100年時代が現実のものになりつつあり、会社で定年を迎えた後も十数年働くことが求められうるなか、所属する会社で1つのキャリアを極めるだけでは不十分といえるでしょう。そこで皆様にはぜひ、在職中から「キャリアの複線化」を考えていただくことをおすすめします。複線化させるキャリアを見定めるうえで、2018年1月からこれまで以上に利用しやすくなる教育訓練給付金を活用していくことも、選択肢のひとつに含めていただければと思います。

浅賀 桃子