信州・長野県で創業し、現在も本社を構えるとともに県内に多くの事業所を置くエプソンの事業や仕事などについて、2回にわたって触れてきましたが、今回は2022年9月に同社と「包括連携協定」(https://www.glocaltimes.jp/9899)を締結した「松本市」について紹介します。同社へのUIターン者の多くが暮らす中核市ですが、最近では居住者の居住環境の満足度も高評価を得ているといいます。「移住と暮らし」という視点から「松本市」について、自然や気候などの環境をはじめ、交通・アクセス、医療や育児・教育といった生活・居住までさまざまな視点から現状や魅力に触れますので、移住を考える上で参考にしていただければと思います。
生活・居住が1位と高い評価を得て8位へランクアップ
森記念財団都市戦略研究所の経済規模や文化度などを都市力として136都市を対象にした「日本の都市特性評価2023」によれば、松本市は8位にランクインしました。生活・居住分野で1位と極めて高い評価を得ており、特に居住者の居住環境の満足度を得たことが要因と考えられています。さらに、環境分野も昨年の7位から4位へ上昇しているほか、文化・交流分野は15位ですが、観光客誘致活動は136都市中、1位を獲得しています。
松本市は、長野県のほぼ中央に位置する県内2位の人口約24万人の都市。北アルプス、上高地、美ヶ原など雄大な自然を有する一方、古くは信濃国府が置かれ、現在でも国宝松本城を中心とした城下町の風情を残す街並みや快適な都市機能を有するバランスの取れた街です。市街地は自転車で一周できるほどコンパクトですが、県内最大の面積を誇るので、エリアによって多様な表情や魅力を見せる都市でもあります。
夏は東京や大阪などに比べ気温が低く、湿度も低いため、カラッとしています。冬は冷え込むものの、四季がはっきりしているだけに、季節感を感じられます。平年の最深積雪は26cmと多くなく、雪が長期間残ることもありません。年間の日照時間の合計値は2134.7時間と日照量も多く、年間の降雨量も1045.1時間と少ないため、過ごしやすい気候です。1991年から2020年までの平均気温は下表のように12.2度で、2020年は13.1度と上がってきています。
同空港近くの信州スカイパーク内にはサッカー、ラグビーなどに使用されるフットボール専用スタジアム「長野県松本平広域公園総合球技場」(サンプロ アルウィン)がありますが、エプソンがスポンサーとして応援しているサッカーチーム『松本山雅FC』のホームグラウンドでもあります。多くの市民や地元企業が支える「地域クラブ」ですが、その活躍により市民にも愛され、活気が生まれています。
東京・新宿まではJR中央東線で約2時間半、名古屋まではJR中央西線で約2時間の距離です。また、新宿と松本を約3時間で結ぶ中央高速バスもあります。松本市内を走る鉄道はJR3路線とアルピコ交通です。バスは市街地循環バスやコミュニティバス、市営バスが運行。車を主な移動手段とする家庭も多く、自動車渋滞の緩和や交通事故のリスク回避、自動車に過度に依存する暮らしを見直すパークアンドライド事業も導入されています。なお、車で東京まで約220㎞、名古屋まで約200㎞の距離にあります。
基本構想2030は「豊かさと幸せに挑み続ける三ガク都」
また、2023年3月に国土交通省から各地の公示地価が発表されましたが、松本市の商業地の平均変動率はマイナス0.1%で3年連続の下落となりました。新型コロナウイルス感染症の影響からは回復傾向にありますが、上昇するエリアと下落するエリアの二極化が進んでいるといいます。一方で、住宅地はプラス0.7%で7年連続の上昇をみせています。同市内では働く世帯が多く、世帯分離も進み需要があると見られています。
働く女性や子育て支援も充実した居住満足度が高い街
松本市は、2001年から2009年まで転出超過で推移していましたが、近年は転入転出が均衡し、2018年からはプラスに転じ、以降は転入超過が続いています。2022年は、転入者数は10,075人、転出者数は9,246人と差引の社会増減は、長野県内最多の+829人(その他増減を含めると742人)となりましたが、県外からの転入超過数は大きく増加しており、首都圏からの転入超過数が増えています。