地域の暮らしと文化を次世代につなぎたい
森野和彬さん
GLOCAL MISSION Times 編集部
2023/09/20 (水) - 00:00

神奈川県藤沢市出身の森野和彬さんは、2019年に生活の拠点を石川県七尾市に移し、東京の設計事務所の仕事に従事しながら、古民家の再生・改修に携わっています。どのようにして、七尾市に住むことになったのか、現在の活動やその想いについてお話を伺いました。

まず、自己紹介をお願いします

妻と8歳の娘、5歳の息子との4人家族です。東京の設計事務所で歴史的な建物や文化財建造物の保存修復・活用の仕事をしながら、今後、七尾市を拠点に地域に根差した設計活動をするために動き始めています。

古民家は、冷暖房器具を使ってもなかなか効かない現状があります。冬は特に寒さが厳しいです。伝統的な建物の価値を尊重しながら、省エネで心地よい住まいに改修することで、次世代に繋いでいきたいという想いがあり、能登でこの仕事を始めることにしました。

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なぜ、能登を選んだのでしょうか

2017年に、能登半島へ家族旅行で訪れたことがあります。妻は能登の食が身体に合い、田舎に住むなら海の近くを望んでいましたし、当時2歳だった娘はキリコ祭りを見て大好きになりました。

私のなかでは、能登の人々が、今でも当たり前に古民家に暮らし、身の周りの自然と共に生活を営んでいる姿に驚きまして、この場所なら、古い民家を残す意味があると感じました。家族それぞれにフィットするものがあったんです。

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森野さんにとっての「七尾市らしさ」とは?

私が住んでいる中島町は農林漁業の地域で、目の前に海が広がり、早朝からカキを養殖する漁師さんたちの姿が見られます。海と山に囲まれた美しい景色があるだけでなく、東京では味わったことのない「自然と共に生きる姿」を感じる場所です。それが、日常の中で子どもたちの目にも入ってくるのです。

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おすすめスポットは?

良いところはたくさんありますが、自分の家のまわりが一番です!
海の岩場では、貝やカニを取って遊んだり、釣りができたりします。子どもたちは、隣のおじいちゃんおばあちゃんが栽培している畑や果樹へ行くことも。 

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今後について教えてください

地域での人口減少や空き家増加とともに、地域の文化や暮らしも薄れつつあります。そのため、私は建築を通して、地域に残る民家の価値を伝えていきたいと思っています。古民家を見て「いいな」と思っても、室内が冬の外気と同じ0℃になるような家に住み続けるのは難しいですよね。断熱の性能を高めることで、心地よく、しかも環境にも優しい暮らしができるようになります。民家は生活の基盤なので、民家が残ることでそこにあった技術や人々の営み、集落の景観などあらゆることが残り、それが今後は、その地域にしかない価値につながると思っています。

実際に民家に住みたいという方々とお話される機会はありますか?

古い民家に住みたいと考える方と一緒に、家を見て回っています。私自身、文化財修復の仕事もしているので、家のどこが傷んでいるのか、どのような手入れをするとよいかなど、建物を見ながらアドバイスできます。ですから、住むことへのリアリティが生まれるんです。

実際、私たちが毎晩通っている温泉のマスターが、古民家を探している30代の常連さんに私のことを紹介していただき、一緒に何軒か見て回りました。家を買うことが決まり、私が改修計画もお手伝いするという話が今、始まろうとしています。

実は、私の家(築140年以上の古民家)も改修工事をしている最中で、みなさんに、そのプロセスを見ていただいたり、ワークショップで関わってもらえるようにしています。完成したら、温熱環境がどれだけ改善できるかを体感できると思います。「寒さは改善できますよ」「心地よくなりますよ」と口で説明するより、実際に家に入っていただくのが一番。自分の家をモデルハウスのように役立てたいと思っています。

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古い民家を次世代に繋ぎたいと考えるようになったきっかけは?

2つあります。1つは、私が社会人になって初めての仕事が、廃校になった北海道の木造小学校を改修して宿泊研修施設にするプロジェクトでした。そこで、古い建物が蘇っていくことの素晴らしさを知りました。これが原点です。2つ目は、伝統技術を学んでいるうちに、日本の各地域にある古い民家は、木や竹、草や土など身近なものを使い、地域の職人さんの手で建てられていて、最も持続可能な建築だと気づいたのです。
ただ、古い民家は断熱性能が低く、虫や小動物が侵入してくる等、弱点も多くそのままでは残していくことが難しい時代になっています。循環可能な材料を用いて改修することで、その弱点を克服できれば、能登地域の民家は木軸構造が強く適切な対策を施せば、まだ十分長く住むことができます。

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移住を考えている方々へメッセージをお願いします

移住とは、地域に入り込み、地域の方々と暮らしを共に支えあうことだと思います。
住む前に地域の方と会ったり、話したりするチャンスをつくってほしいですね。

私たちの場合、七尾市に来たのはコロナ禍前なので、地元の方たちと普段通りのつき合いができ、移住前から近隣の方々に色んな事を教えてもらいました。私たちの家は築150年くらいなのですが、次の150年も使えるように現在大規模な改修をしているところです。それは、七尾の人たちに感謝の想いがあるから。自分にできることでお返しをしたい、長く住み続けたいという気持ちが芽生えたのです。

最初に惹かれたのは環境でしたが、それ以上に「人との関係・自然との日々の営み」が価値あるものだと気づきました。お世話になった方たちのこの地域で受け継がれてきた生活や文化を少しでも吸収して、次の世代に残したいと思いました。

人とかかわることで、移住に前向きになれたり、自分に合っていないと気づいたりします。地元の方々の雰囲気が自分や家族と合っているかを知ることはとても重要ですから、移住者と地域を繋ぐ役割が必要です。自分もそういった役割を担えたらと思っています。


アトリエ モリノト
Instagram|atelier_morinoto
web|https://morinoto.jp

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【七尾市移住支援サイトはこちら】
「七尾暮らし 私が輝く、もの こと じかん」

https://www.nanaogurashi.jp

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