pixta_20596258_L
【木下斉】東京よりパフォーマンスの高い、地方発の上場企業を見極めよう!
木下 斉
2017/06/02 (金) - 09:00

日本経済の問題は地方衰退より、東京低迷のほうが大きい

先日とあるシンポジウムに参加した際に、レオスキャピタルワークスの藤野さんとご一緒しました。そこで、日本経済の問題と地方企業についての議論で、「実は日本経済の問題は、地方の衰退ではなく、東京に本社を置く大企業の業績低迷のほうが問題」というお話をされていて、ハッとしました。

確かに考えてみれば、ニトリは北海道の札幌、ファーストリテイリングは山口からスタートして最初の店舗は宇部市、ジャパネットたかたは長崎の佐世保、ダイソーは広島での移動販売からスタートして常設店舗一号店は高松市丸亀町商店街、などなど今となっては全国区で知られるこれらの企業が全て地方発なわけです。つまりは、この10-20年を見ても地方から生まれているものが多数存在しているわけです。

中央区・千代田区に日本全体の上場企業の15%以上が集積していると言います。それら誰でも知るような企業よりも、2016年末を基本とした5年、10年間で見た株価のパフォーマンスはいずれも地方上場企業のほうが高いと言う訳です。つまり地方の上場企業のほうが業績を確実にあげ、成長期待も高いというわけです。逆をいえば、東京本社の大企業の成長期待は低く、場合によっては株価が大きく値を落としてきているというわけです。

人口でばかり測るので「地方は大変だ」「もう終わりだ」みたいな論調で「地方創生」なんて言われますが、経済的な視点でみれば決して地方企業は終わりではなく、むしろその厳しい環境を前提として勝ち抜く中で、高い経営力を獲得し、成長力のある上場企業がどんどん生まれているとも言えます。

なんでも人口で考えず、より経済や個別企業で見ていけば、地方が違う見え方をしてきます。

今後も地方から生まれる成長企業の可能性

それでは、地方都市から成長企業が生まれ、今後も期待できる5つの理由について整理したいと思います。

(1)似通った地方都市環境を活かしたドミノ戦

東京都市圏のような大規模内需は未だ世界トップクラスで、そのような規模の市場環境のほうが世界的にも特殊です。むしろ日本の地方都市で勝ち抜けば、多数存在している類似する別の地方都市でも勝ち抜ける可能性が高く、ドミノ方式で全国区で勝利を収める企業が出てくることは当然とも言えます。

(2)小規模市場だからこそ樹立する筋肉質経営と顧客志向

小さな規模でも利益を出せるよう、無駄な間接コストを取り払い筋肉質な経営組織が樹立できます。さらに、一定の規模感があっても人間関係の濃密な地方都市だからこそ、目に見える身近な顧客適合によってビジネスを成長させることができるとも言えます。結果として、勝ち抜いた際には筋肉質な経営によって利益率高く、再投資サイクルを早く回せるようになり、絞り込まれた顧客志向は多くの支持を集めます。変なコンサルに委託して理屈から入る経営よりも、より地に足の着いた経営と言えます。

(3)生産年齢人口減少による積極的な生産性改善

地方の場合には前回も触れたように生産年齢人口がいち早く減少に転換していますので、ますますもってオートメーション化など含めた生産性改善のインセンティブが強く働き、経営の合理化が進みます。不必要な大量の正社員を抱え込み、飼い殺しせざるを得ない大企業よりも経営合理化が進めやすい状況にあります。

(4)いち早く市場縮小が始まっているため、海外進出も待ったなし

当然地方市場は縮小していくため、国外に活路を見出すという方針にも積極的な企業が出てきています。そもそも今後、急激な高齢化などを迎える東京に今更進出するよりは、若い世代が急速に所得も高めていく海外に狙いを定めて展開することも待ったなしです。「海外にも市場がある」のではなく、「海外に出なければならない」という背水の陣のような構造こそが積極的な海外進出へのトライを支えています。

(5)創業系社長などによる意思決定の速さと挑戦意欲

地方成長企業の多くは、創業系社長や創業家によるガバナンスなどが強く働いています。時にこれらがマイナスに作用することもありますが、数年の任期で終えるサラリーマン社長ばかりが占める企業よりは、創業者や創業家などは保有する資産や家業的な意識から長期的な成長を目指して絶えず挑戦して経営されます。

サムネイル

海外進出の点から言っても顕著です。先日、シンガポールに行ってきましたが、ダイソーは大変うまく経営していました。シンガポールを足がかりに周辺アジア諸国にも積極的に進出していっているとのことで、広島からいつの間にか海外進出へと力を入れ始めているわけです。しかも商品が100円ではなく、2ドルショップ。店舗デザインも日本よりシックで、何より日本語パッケージのまま販売されているのが信用になるということで大人気です。内需系企業は市場規模の大きい日本国内のポジションで安心してしまいがちですが、そうならないのも、冒頭説明したような企業価値成長の要因と言えます。

もっと会社四季報などをみていけば、地方企業でも優良業績かつ、企業規模としても売上数百億〜一千億円オーバーのものも存在していますから、それらをしっかりと見ていくと、かなり多くの地方企業が出てくるのがわかります。海外で活躍したいという希望を直接的にかなえられるのも、東京本社の大企業ではなく、地方発の成長企業である可能性さえあります。

地方創生は「地方が可哀想」ではなく、「地方にあるチャンスを見極めろ」が本筋

このように、人口減少でみると「地方が可哀想」となりがちですが、決してそんなことはありません。その環境の中からたくましくも、東京ど真ん中の上場企業を超える企業成長率を誇り、多くの人にとって活躍の場がある企業群が地方から生まれているわけです。そういう意味では、地方にあるチャンスをいかに見極めることができるかどうか、が地方転職の鍵とも言えます。

そして今後は地方発の成長企業が、東京進出ではなく、むしろ世界展開を優先し成果をあげていけば、日本の新しいカタチができるかもしれません。政策よりも経済の面から地方分権が進む可能性が生まれることがあれば、それこそ地方創生に繋がる大きな変化と言えます。

kinoshita_profile

木下 斉

一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事

1982年東京生まれ。1998年早稲田大学高等学院入学、在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業の後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学、在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2007年より熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地でまち会社へ投資、設立支援を行ってきた。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。 主な著書に「地方創生大全」(東洋経済新報社)、「稼ぐまちが地方を変える」(NHK新書)、「まちづくりの経営力養成講座」(学陽書房)、「まちづくり:デッドライン」(日経BP)などがある。毎週配信のメルマガ「エリア・イノベーション・レビュー」、2003年から続くブログ「経営からの地域再生・都市再生」もある。

同じカテゴリーの記事

同じエリアの記事

気になるエリアの記事を検索