外の人と地域をつなぐ、新しい「移住」のカタチ
鹿児島移住計画 代表 安藤淳平氏
鳥羽山 康一郎
2018/07/16 (月) - 08:00

移住は数値で計れない豊かさの実現

東京から地方へ移住した際、最も気になるのが年収の落差だ。年収が下がるケースは多い。地方だからと言って生活費が格段に安いわけではないので、これは大きな壁となりかねない。しかし安藤氏は、
「鹿児島のぼくらの周りで言えば、お金が第一の価値観という人は多くないです。フリーランスの方はネット環境があれば東京の仕事もできますし、こっちで仕事をつくっていくチャンスもあります。確かに年収は減りますが、それよりも消費者というよりも仕事でも暮らしでも生産者になりたいという属性です。金額や数値では計れない豊かさを優先させる人たちが多いですね」

団塊の世代が憧れた「田舎暮らし」とはベクトルの違う移住生活が、そこには見えてくる。例えば鹿児島の隣、宮崎県日南市は2回目のドラフト会議と全国版に球団として加わった。IT企業誘致による地域おこしで実績を上げている同市は、「受け皿としては強力」と安藤氏は言う。シャッター通りが奇跡的に復活し、UIターン者をまじえての新しい地域コミュニティが形づくられている。

また、鹿児島県では南九州市頴娃町のNPO法人も注目だ。移住者の住居として再生した空き家を提供。同時に、観光客を呼び込む施策も次々とヒットさせ、新規ビジネスの創出につなげている。

県内では霧島市にも面白い動きがあると安藤氏。もともと大企業の工場など複数や温泉などの観光資源が豊富で豊かな自治体といわれているが、最近では市民レベルでの新たな動きも活発である。現在は安藤氏も霧島に通い、移住者を迎え入れるための受皿づくりや小商いをつくるセミナーなどを開催している。近い将来、この町も球団として名乗りを上げる可能性が大いにあるのではないだろうか。

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ドラフト会議の常連、NPO法人桜島ミュージアムが運営するカフェとショップ

次のドラフト会議に向けて耕していること

安藤氏によると、2018年は移住ドラフト会議の次の展開に向かっているという。その代わり、新たな移住候補者や関心のある人たちの発掘、移住ドラフトで指名された人たちのサポートには時間をかける。

「今後の見込み客を見つけると同時に、移住者も増えてきたので彼らが自分の仕事や生活をつくっていくためのお手伝いもしたいんです。そうやって一人ひとりちゃんとカタチにしていくことがこれからの仕込みや呼び水になると思います」

移住者(ドラフト候補選手)にとっては、移住の入り口から出口までがしっかりと見えていた方が安心感がある。移住という人生の重要イベントを行う上で、先人たちの姿に自分を重ねられることは大きい。
また、移住者の受け皿となる球団では、外からの人に寛容な地域であることも大切なポイントだ。仕事を通じて関わりを持った会社や団体を見ていて、「ここまで来れば大丈夫」と見きわめる。

「現在の球団以外にも、新たな地域をつくっていかなければ発展しません。そういうところが増えるというのは、鹿児島への貢献でもあると思います」
人と地域、両方の増員と底上げを目指して、現在各地を耕している。

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感情を動かすことが、移住計画が進めるデザインであると、安藤氏

仲間が増えることでスケールしていく

鹿児島移住計画は、現在(2018年4月)のところ任意団体だ。他の地域の移住計画も同じく任意団体であったり、母体となる会社の1プロジェクトだったりするが、公的な資金が入っているところはない。鹿児島はこのまま任意団体で続けていくのだろうか。そして、団体としての収益はどうなのだろうか。

「お声掛けもあるので、一般社団法人になるとか、株式会社にするとか道はありますが、悩ましいところです。法人化してまで、という気もありますし。鹿児島移住計画としての収益は、業務委託や企業の採用のお手伝いなどで上げています。でも、移住ドラフト会議での収益はゼロ。言ってみれば宣伝広告費のようなもので、取材を受けたり注目してもらったことで、自分のやれることも増えて別の仕事につながってきますから。デザイン業務や行政の移住施策関連などもですね」

本業にするのではなく、あくまでも本業に役立つという位置付けだ。地域づくりやまちづくりは、キャッシュ化するまでのスパンが長い。そこをいかに耐えられるかが重要だと安藤氏。
「苦しいけれど、結果として事業をつくれるといいなと思います。それがローカルに合ったやり方だと思いますし。貨幣経済も信頼経済も大事で、どっちかが第一というよりも、どちらも自分が実現したい未来を叶えるための手段。そこは大事にしていきたいです」

この鹿児島で、自分と同じ志向・思考を持った仲間を増やしていく。大人数でなくていい。しかし増えることでいつかスケールしていく。その意思の元、動いている。

最後に、地方移住の極意があればと訊いてみた。

「東京など大都市からの場合、いきなり人口の少ないところよりも鹿児島市のような中規模(人口60万人)の町でまず慣れることがお勧めです。都市的な生活もできるしローカル感もある。そこに住みながらより田舎暮らしがしたければ、そっちに入っていけばいいと思います」

正しいことを面白く伝えたい──安藤氏の理念の通り、移住計画の入り口は楽しさに満ち、その内部には真実が厳然として存在する。そうでなければ、ここまでワクワクすることはあり得ない。感情を動かす、それが移住計画の最大の強みなのだ。

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安藤 淳平(あんどう じゅんぺい)さん

&do 代表。福島県郡山市出身。東洋大学大学院修了。東京の都市計画コンサルタント会社、名古屋のシンクタンクを経て2013年に鹿児島市へ。株式会社マチトビラで中小企業の採用支援や定着支援、インターンシップのコーディネートなどを担当後、鹿児島移住計画を立ち上げる。「すべての人を関係者に」がモットー。町のデザイン、地域のキャリアデザインなど、自分で打ち出したいことをデザイン思考の上で成立させる。

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