都会から地域への幹部人材の還流-事例を通じて見えてきた新たな課題-
GLOCAL MISSION Times 編集部
2017/06/01 (木) - 09:00

地域企業の人材ニーズがなかなか満たされない理由は、ともすれば「首都圏で実績を積んだ人は、給与や居住地等の問題から地域に行きたがらない」という定説に一蹴されがちですが、日本人材機構の岩崎氏は地域企業の課題と向き合う過程で、様々な“気付き”が得られたとおっしゃいます。それは「人材を受け入れる側の地域企業にも、人材還流の障壁となる要因がある」というものでした。

複合的な要因が、人材還流の妨げになっている

「都市で活躍する人材と、地域に根づいた地域企業を結び、人材の力で地域を元気にする」。この日本人材機構の理念に基づき、私も全国各地の企業を訪問し、地域企業が直面する様々な課題と向き合ってきました。

当初は私も「都会から地域への人材還流が進まないのは、給与や居住地の問題から都会の人材がなかなか地域転職に踏み切れないためである」と考えていました。しかし、実際に地域企業を訪問し様々な経営者の方々とお話をするうちに、「なぜそのような人材がほしいのか?」、「そもそも今後どのように事業展開していきたいのか?」といった基本的な部分がかなり曖昧な状態で人材ニーズが先行し、結果として思うような人材の採用につながらないといったケースが非常に多いと感じるようになってきました。つまり、給与や居住地といったよく言われる「人材サイド」の問題だけでなく、人材を受け入れる「企業サイド」にも問題があり、そうした双方の複合的な要因が人材還流の妨げになっているということがわかってきました。そこで今回は、私が携わった二つの事例を共有することで、人材還流の一助となれば──と考えています。

事例①/工作機械関連の老舗部品メーカー・A社

■事例①■「事業戦略策定支援を通じた幹部人材の紹介」
最初にご紹介するA社は、長い歴史をもつ工作機械関連部品メーカーとなります。詳細はつまびらかにできませんが、同社はそのニッチな分野では国内有数の実績をもつ老舗メーカーです。

初めてA社にうかがった際、先方からは「製品開発部長を外部から採用したい」というニーズが提示されました。しかし、よくよくお話をうかがううちに「なぜ製品開発部長が必要なのか?」、その大前提として「そもそも今後どのように事業を展開して(会社を成長させて)いきたいのか?」といったコアとなる部分があまり整理されておらず、言語化できていないことがわかってきました。A社のニーズに応えるためには、求める人材像及びその前提となるA社の経営戦略の「整理・言語化」が必要だったのです。

事例①/求める人材像を整理・言語化していくプロセス

A社のニーズを整理・言語化していく作業のアウトラインをご紹介すると……。
 ? A社を取り巻く事業環境、A社が有する経営資源等の現状を把握する
 ? 現状把握を踏まえ、社長・役員陣とともに、経営戦略を練り上げていく
 ? 経営戦略を実行する上で不可欠な人材像を炙り出し、要件(スペック)を絞り込む

調査・分析に基づく現状把握や経営陣とのディスカッションを通じて、A社は今後「顧客企業の課題を解決するような製品の開発・提案」に注力したいと考えていること、少し抽象的に言い換えると「『モノ売り』から『サービス売り』への事業モデルの転換」を目指していることが明らかになりました。当初のニーズだった「製品開発部長」は、実は顧客企業の課題を丁寧に聴き取り、その課題を解決する製品を開発し、提案できるような「ソリューション営業部長」だったのです。

こうして、ぼやけていた将来ビジョンや人材ニーズの解像度が上がったことで、人材探索の精度は格段に向上。A社には「ソリューション営業部」という部署を新設していただき、そのトップとして、無事40代の男性をご紹介するに至ります。新たに就任したソリューション営業部長は大手メーカーで「提案営業/技術営業」として高い実績をもつ方なので、今後の活躍に私どもも大いに期待を寄せているところです。現在はA社、ソリューション営業部長、日本人材機構が三位一体となり、定期的にコミュニケーションを取りながら、経営戦略の着実な実行に向けて取り組んでいます。

事例②/食品系企業・B社

■事例②■「課題解決支援を通じた幹部人材の紹介」
こちらの事例もA社と同じく詳細はつまびらかにできませんが、アウトラインだけご紹介しますと、B社は食品系企業であり、県下でも有数の規模を誇る地域密着型企業です。B社が抱える課題は「社員の慢性的な危機感不足」にありました。

B社社長から当初うかがった悩みは「前回の中期計画は未達で終わってしまったが、今回新たに策定した中期計画はなんとしても達成したい。しかし、今の社員の危機感の無さでは今回の中期計画もおそらく達成できない。どうしたら社員にもっと緊張感を持って仕事に取り組んでもらえるのだろうか。」というものでした。

そこで日本人材機構は、B社の中期計画達成に向けた「社員の危機感醸成プロジェクト」を立ち上げます。

事例②/経営的視点をもった人事部へ

プロジェクトのアウトラインをご紹介すると……。
 ? 社内要路への徹底的なヒアリングを行い、まずは現場の現状を把握する
 ? 現状把握を踏まえ、社員の危機感が欠けている原因を構造的に把握する
 ? 構造的に把握した原因を除去するための施策の基本方向性を検討する

このプロジェクトの内容の詳細は割愛しますが、プロジェクトを通じて明らかになったことの一つとして、「B社社員の危機感を醸成するためには『人事制度の再構築』が必要である」ということがありました。しかし、B社の人事部は「給与計算等のオペレーションをこなす部署」という位置づけで、経営的視点で戦略的に人事システムを考えられる人材などおらず、そのようなノウハウも全く蓄積されていませんでした。
そこで、大企業で人事制度改革を何度も経験してきた「人事のエキスパート」を、日本人材機構からご紹介し、B社の人事責任者として採用されるに至ります。

戦略課題を「整理・言語化」した上で、必要な人材像に落とし込む

ここまで二つの事例をご紹介してきましたが、「幹部人材が足りない」/「外部から人材を採用できない」という課題を抱える地域企業のオーナーや経営陣の方におかれましては、まずは「そもそも会社をどのような方向に持っていきたいのか」/「どのような経営課題を解決しなければならないのか」といったあたりをしっかりと「整理・言語化」した上で、「それを実現するためにはどのような人材が不足しているのか」を導き出していくことが、問題解決の端緒となるかもしれません。

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