働き方改革がもたらした、育休明け社員のやりがい
久保田 一美
2017/09/07 (木) - 08:00

育児休暇を経て、今年の4月に職場復帰し、初めての夏休みシーズンを終えた方々も多いかと思いますが、生活のリズムは整ってきたでしょうか。筆者が育休明け社員の方々とお話しするとき、「リズムには慣れてきたけれど、まわりの方々が仕事を続けている中、時短をして職場を出るときが毎日心苦しい」という声をよく聞きます。今回は、そのような声を解消し、社員にやりがいまでもたらした企業の実例をご紹介します。

育休明け社員はどんな心境なのか

国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、国内において第1子出産後に退職してしまう女性が約6割以上であった長い歴史から、最新のデータより出産後も働き続ける女性が53.1%に増えている(*1)ことが全国的に伺えます。しかしながら、まだ2人に1人は退職の道を選ぶ現状において、女性活躍社会の実現は道半ばとも感じられてしまいます。

職場経験が長い女性社員が、結婚、妊娠、出産、育児というライフイベントを迎えることで、それ以前とは働き方や仕事に対する考え方、心境が変わってしまうことも少なくありません。特に第1子の育児というのは、すべてが初めてのことで右も左もわからないことが多く、筆者も不安ばかりだった経験をしました。職場に復帰するにも、「本当に仕事と育児を両立できるのだろうか」という気持ちが大きく占めているものです。

現在筆者は企業における女性活躍を支援しており、企業の人事担当者、マネジメント層の方々と話す機会があるなかで、育休中、もしくは育休明けの社員に関しての相談を多く受けます。育休明け社員の心境は様々で、希望の保育所に子供を預けることができたか、ということや、家庭での子育てサポートの有無だけでなく、子供の健康状態や女性社員自身の体調の変化によるものも大きな要因であることに加え、時短勤務をして早く職場を出ることに「後ろめたさを感じてしまう」という精神的な負荷もあります。

時短勤務からフルタイム勤務へシフト

2017年8月9日付の日本経済新聞夕刊に、職場で働き方改革を進めている企業で、時短勤務をしていた育休明け社員がフルタイム勤務へシフトし、やりがいまでをもたらした良い実例が掲載されていました。

SCSK社の事例)
SCSK社では、2012年度から長時間労働の是正に取り組んでおり、働き方改革のおかげで、この10年で一人当たりの平均残業時間が半減。2016年4月に復職した女性社員は、以前のような残業のある働き方はできないので時短勤務を選んでいましたが、同僚がサッサと仕事を終わらせ、夜の会議はないことなどを目の当たりにしたことをきっかけに、時短勤務を返上して、フルタイム勤務へ戻し、育休前と変わらず責任ある仕事を遂行でき、やりがいまで感じています。

このように、まわりの環境が同じであれば、「自分ばかりが早く帰って申し訳ない」という「後ろめたさ」の気持ちが解消され、責任範囲も平等に感じられ、やりがいまで得ることができた良い実例です。

オリックスグループの実例)
育休から2015年4月に復職し、会社の制度では最長10年短時間勤務ができるので、最大限使用するつもりだった女性社員。しかし、職場では今年の2017年4月から所定労働時間を1日7時間に短縮したことにより、会社の終業時間が午後5時に繰り上がりました。

この繰り上げをきっかけに、女性社員はフルタイム勤務に戻し、給料は全額支給になります。その女性は、「もらった分は仕事でしっかり貢献したい」とコメントしており、このケースにおいても仕事にやりがいを感じさせることができた実例です。

午後5時が終業時刻であれば、「子供を預けている保育所へのお迎えが間に合う」という方はとても多いのではないでしょうか。このような職場であれば、男性社員であっても保育所へのお迎えにも気兼ねなく行けることでしょう。

記事には、ほかにも同様の効果を上げる味の素社が掲載されていますが、同社はそれに加え2017年4月からテレワーク制度も拡充。「フルタイム勤務に戻したい」という相談も増えていると言います。

働き方改革がもたらすやりがいに向けて

これらの実例をどう感じるでしょうか?企業として進めている「働き方改革」は、育児をしている社員に対してだけでなく、そこで働く誰もが享受でき、会社としての成長に繋がるものでなくてはなりません。

今回の実例は、その働き方改革が、社会で叫ばれている女性活躍推進の分野にも思いがけない効果をもたらしていると言えます。社員のモチベーションや、やりがいというのは、誰からか強いられるものではなく、このように自発的なものであることが大切です。

そしてこの紙面では男性社員の声は載っていませんが、残業が少なく、所定労働時間が短縮された職場というのは、従来からの長時間労働から抜け出し、業後の時間を有効活用したり、心身ともに健康を保つために活用したりする方がいらっしゃるのではないでしょうか。働き方改革が多様な社員のためのやりがいに繋がる社会を願うばかりです。

(*1)出典:国立社会保障・人口問題研究所 2016年9月公表版
http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/doukou15_sokuho.html

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