無期転換と正社員は別もの。正しい理解で転職チャンスを見極めて
那須 由枝
2017/09/21 (木) - 08:00

2013年に施行された改正労働契約法。5年を超えて働き続けた契約社員や派遣社員、アルバイト・パートの方たちは、希望すれば「無期労働契約」に転換できるというものです。ただし、無期転換は必ずしも「正社員になる」ことではありません。自分自身の希望の働き方を再確認し、進むべき道を決める好機です。

5年を超えて働き続けた契約社員は、無期契約に転換できる

2018年4月。契約社員や派遣社員として働いている方にとっては、大きな転換点がやってきます。「無期転換ルール」によって有期労働契約から無期労働契約に転換する方が出始めるのです。

「無期転換ルール」とは、通算5年を超えて有期労働契約を繰り返した労働者に、「無期転換申込権」が発生するというものです。権利が発生した労働契約期間中に、労働者から会社に対して「無期契約を希望します」と意思表示がされると、会社は労働者の申込みを受け入れた(承諾した)ものとみなされ、労働者を無期契約に転換させなければなりません。

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この際、特段の定め(無期労働契約社員の就業規則等)がなければ、無期労働契約の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は、直前の有期労働契約と同一です。実際に無期契約を希望した労働者が無期転換する日は、今締結している労働契約の期間満了の翌日からです。

無期契約社員は「正社員」とイコールではない?

2014年、ユニクロやスターバックスが有期契約労働者を正社員化して話題になりました。人手不足を背景に、飲食業や小売業を中心に正社員化を検討する会社が多いのは事実です。しかし、正社員と契約社員などではかかるコストが大きく変わります。「有期契約の時と条件を変えるつもりはない」すなわち、契約期間だけを無期にしようという会社が37.3%と、もっとも多いのです(下表参照)。つまり、無期転換によって必ずしも正社員になれるわけではなく、勤務条件や待遇は変わらないまま、契約期間だけ無期となる可能性が高いのです。
その他にも「多様な正社員」という選択肢もあります。いわゆる地域限定社員、職務限定社員のこと。勤務地や仕事内容、勤務時間などの労働条件に制約を設けた正社員のことです。転勤がない、残業時間に制限を設けるなど、働き方に制約がある方向けの仕組みです。

■どのような形態で無期契約にするか

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無期契約社員のメリット・デメリット

では、条件が変わらないまま無期転換する、すなわち無期契約社員になるメリット・デメリットにはどんなものがあるでしょうか。
○メリット
・契約期間が無期限となるので、雇用が安定する
・仕事内容自体は変わらない
○デメリット
・仕事内容はそのままでも、責任が重くなる可能性がある
・正社員への道が遠ざかる可能性がある
企業に対して正社員登用の制度を作ることが推奨されていますが、無期契約社員として固定化されてしまうと正社員への転換は難しくなる可能性が高いのです。正社員と契約社員では年齢を重ねるごとに賃金差が拡大し、企業のコスト負担のインパクトが大きくなるせいです(下表参照)。同様にマネジメントなど求められる職務要素が拡がり、適応しづらくなることも考えられます。

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「無期転換ルール」は雇用安定という視点ではとてもよい制度です。正社員のように責任をおってバリバリ働くのは難しいけれど、雇用の安定は欲しい、という方にはピッタリです。
大切なのは「どのような働き方をしたいか」です。「正社員になって処遇を改善したい」「働く上での制約があるため限定社員が望ましい」など、希望の働き方は人それぞれです。会社の無期転換の方針によっては希望に合わないこともあるでしょう。その場合は無期転換しないという選択肢もあります。これを機に、転職活動に本腰を入れるのもいいでしょう。5年後、10年後を見据えて自分自身が望む働き方はどんなものか。キャリアについて考え、理想に向けて一歩踏み出すチャンスです。

参考:
http://muki.mhlw.go.jp/
有期契約労働者の無期転換ポータルサイト(厚生労働省)

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