女性の働き方を考える上で避けては通れない「M字カーブ」問題とは
浅賀 桃子
2017/07/31 (月) - 08:00

日本の女性の労働力率(15歳以上人口に占める働く人の割合)を年齢階級別のグラフに表した際に、いわゆる「M字カーブ」の形態になることが知られています。女性の働き方を考える上でこの「M字カーブ」の問題は避けて通ることはできません。「M字カーブ」が生じる日本の女性ならではの働き方の特徴と、改善への道を考えます。

「M字カーブ」問題

はじめに、M字カーブの由来についてみていきましょう。
日本の女性の労働傾向として、
・15歳から20代にかけて労働力率が上昇(学校を卒業し就職)
・30代で労働力率が減少(出産・育児のため退職)
・40代にかけて徐々に労働力率が回復(育児がひと段落した後、再就職)
・50代以降、再び労働力率が減少(早期退職等)
となっており、この年齢階級別の労働力率の推移をグラフに表した際にアルファベットのMの字に似ていることから「M字カーブ」と呼ばれています。

一方世界に目を転じると、10代・20代および40代・50代と比べ、30代の労働力率が下がる傾向にある国は韓国くらい。女性25~54歳の就業率は、OECD諸国30ヶ国中22位となっています。一方就業率の高いドイツやスウェーデン、アメリカなどでは特定の年齢層で極端に労働力率が下がることはありません。M字カーブではなく、働き盛りである20代~50代前半くらいまでの労働力率が総じて高い、逆U字の形となっているのが特徴です。

日本のM字カーブ変遷

日本はこの40年余りM字カーブ自体は解消できていませんが、以前に比べカーブは緩やかになっています。総務省による1975年の統計データでは、最も高い20~24歳の労働力率が68.7%に対し、M字の底にあたる25~29歳の労働力率42.6%、30~34歳の労働力率43.9%となっていました。一方直近の2015年の統計データでは、女性の大学進学率上昇などに伴い25~29歳(80.3%)が最も高い労働力率となり、M字の底にあたる30~34歳も71.2%に上昇するなど、30代の労働力率が徐々にあがってきています。

M字カーブがゆるやかになり、30代を初めとする労働力自体の底上げ(労働力率は1975年から2015年までの40年間で約30%の上昇)もなされている理由としては、1985年に制定された「男女雇用機会均等法」による男女平等への意識が徐々に根付いてきたこと、女性の大学進学率向上に伴う労働意識の変化や終身雇用制の実質崩壊に伴う共働き夫婦の増加などが挙げられるでしょう。

女性のライフイベントと働き方

学校を卒業し社会人としてのキャリアをスタートさせる20代、徐々に仕事で責任あるポジションを任されることが増えてくるとともに、結婚・出産・育児といったライフイベントも同時期にやってくることが多く、生活の変化に悩まされることもある30代、子供が就学するなど育児がひと段落することで新たな働き方を考える方が増える40代前後…。結婚や育児は男性も含めたライフイベントですが、妊娠・出産に関してはどうしても女性ならではのライフイベントとなりがちで、男性と比べ大きな変化が生じやすいといえるでしょう。

男女共同参画白書の調査結果によると、結婚に伴い27.7%、さらに第1子出産で36%の女性が離職している現状があります。本データは2013年版のものですが、この10年20年、大きく変わったわけではない点にも注目したいところです。
なぜ結婚や出産で6割近い女性が仕事を離れるのか、仕事との両立が難しかった理由として「勤務時間が合わない」「育児休業がとれない」「職場に両立支援の雰囲気がない」といった項目が上位にきています。つまり、女性側は仕事を続ける意思はあっても、職場環境上難しかったという理由が多いことになります。

40代前後になり、一度仕事を辞めた女性も再び働き方を模索するようになりますが、育児期間中などのブランク期間が長くなるほど正社員での就職が難しくなる労働市場の問題もあり、多くがパート・アルバイトなどの非正規社員での再就職となっている現状があります。

M字カーブ解消と女性の労働力

安倍内閣は2014年の「日本再興戦略」の中で「女性の活躍推進と働き方改革」を掲げており、M字カーブ解消のために女性の労働力をさらに上げていく必要があります。
そのためには法制度を整えるだけでは不十分です。例えば、男性も含めた育児休業取得権利自体は現状法律で認められていますが、先述の「女性が結婚・出産で仕事を離れる理由」で触れたように「育児休業がとれない」(実際は「取りづらい」が現状でしょう)「両立支援の雰囲気がない」(人手不足なのに育児休業では慣れられても困る、といった雰囲気を出され、取得を申し出にくいなど)といった、制度というよりは人の意識の問題に起因する部分が根深く残っているように感じられます。企業の風土改革はもちろん、女性自身の意識改革(家庭だけでなく、社会に出て自身のスキルを活かすことが社会貢献につながる)、男性側の意識改革(育児を含めた家庭のことは女性の役割という意識を変え、育児休業を取得するなど互いに支えあう)がなされることで、現在M字の底になっている世代を中心とした女性の労働力が上昇し、M字カーブの解消につなげていけるでしょう。

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