進む自治体での副業人材採用!DX化の遅れに抱くその危機感とは?
GLOCAL MISSION Times 編集部
2021/12/31 (金) - 16:00

首都圏の自治体はもちろん、地方自治体でも副業人材の採用が加速しています。以前は業者に任せきりだった基幹システムなど、IT系システムの更新を急いでいるためです。自治体がこのように、民間の人材を採用してまでシステムの更新を急ぐのにはどのような理由があるのでしょうか?今回は地方自治体がDXの推進を急ぐ理由と、副業人材の採用が拡大している事との関係を解説していきます。

2025年の崖 

経済産業省は、2018年に発表した『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』(デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会)の中で、日本経済が迎える深刻な経済損失の原因「2025年の崖」について説明しています。

日本の少子高齢化がこのまま進み続けると、2025年には人口の年齢別比率が劇的に変化し、超高齢化社会が訪れます。今まで社会を支えてきた労働層が引退し、労働力不足が深刻な状態になるのです。労働力不足はサービス業などに大きな影響を与えますが、IT業界にも人材不足の影響は及び、既存ITシステムの複雑化や老朽化、ブラックボックス化が進むことになります。この結果、2025年には「セキュリティ問題」や「サポート終了による弊害」、「IT 人材不足」などが深刻化すると予測されています。

上記のようなIT人材の不足によるDX化の遅れは業務の非効率を招き、日本の経済界では最大で年間12兆円の経済損失が生じると推定されています。これが2025年の崖で、この崖を乗り越えるためには、業務のDX化が必須だとされています。

自治体のDX推進計画 

この発表に呼応するかのように、法務省では2020年に自治行政局 地域力創造グループがまとめた「自治体DX推進計画概要」を発表しています。自治体DX推進計画策定の目的は、以下のようなものです。

・自治体の情報システムの標準化・共通化など、デジタル社会構築に向けた各施策の効果的な実行
・本施策を国が主導し、自治体全体として足並みを揃えさせる
・総務省は自治体が重点的に取り組むべき事項・内容を具体化する
・総務省は、総務省及び関係省庁による支援策等をとりまとめる
・デジタル社会の構築に向けた取組みを全自治体において着実に進める

このような計画及び施策は、自治体が自ら担うこれからの行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して住民の利便性を向上させること、デジタル技術やAI等の活用により業務の効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていくことが求められるとして策定されたものです。

民間の企業と同じように、自治体でもDX化による行政サービスの向上と業務の効率化を国から強く求められているのです。

不足するIT系人材と遅れるDX化

ただしいくら総務省が旗を振っても、肝心なDX化を進める開発者やコンサルタントの人材が不足しています。IT系などのデジタル人材は、比較的首都圏に集中している傾向があるのですが、優秀な人材ほど民間の企業間で取り合いとなっているのです。

人材の不足は人件費の高騰を招きます。特に優秀なIT系コンサルタントや技術者は、数千万円の年収で企業と契約するなど、人件費の高騰に拍車がかかっているのが現実です。このような金額を地方自治体が人件費として支出できるわけもなく、地方自治体はDX化の遅れに強い危機感を抱いています。

またDX化のもう一つの方法としてオフショア開発など、海外にシステム開発を委託することも考えられます。ただしこれも、言葉の壁やコミュニケーション、セキュリティの問題などから、積極的には利用されていない状況です。

拡がる地方自治体の副業人材採用

このような状況から、現在地方自治体による副業人材の採用が進んでいます。技術者をキャリア(経験者)として本採用するのではなく、副業を行っている人を時限的に採用しているのです。

新型感染症拡大の影響でテレワークが普通のものとなった状況もこの傾向を後押ししており、首都圏に在住するIT系技術者などを副業人材として活用することができます。フルタイムで人材を採用するわけではないので、採用側は人件費を抑えることができ、働く側も本業の余暇を有効活用できるメリットがあります。地方自治体と技術者が、Win-Winの関係でDX化を進められるというわけです。ある自治体では、実際に副業でのIT系人材を募集したところ、若干名の募集に対して数十倍の応募が集まり選考に苦労したとの話もありました。

地方移住や二拠点生活などで、地方に在住しながら首都圏で仕事をするのが今までの地方副業のスタイルでした。ですが昨今のIT人材の不足は、この状況をまったくの反対に変えてしまったのです。

まとめ

以前は年収や地方移住の難しさで地方自治体と折り合いがつかなかった技術者にとって、今の状況は自らのスキルと余った時間を活用する良い機会となっています。自分の技術がDX推進の役に立てると思う方は、地方自治体の副業採用に応募してみてはいかがでしょうか。

参考

DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html

自治体DX推進計画概要
https://www.soumu.go.jp/main_content/000727133.pdf

首都圏の自治体「副業」OK広がる 民間の知識や情報活用
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFB012CN0R00C21A2000000/

自治体でデジタル人材争奪戦 副業・兼業もOK
https://www.asahi.com/articles/ASP7D4VQLP78ULFA00Q.html

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