転職10回、51歳で大学院へ。総決算は老舗企業改革(前編)
GLOCAL MISSION Times 編集部
2022/07/20 (水) - 18:00

茨城県水戸市に本社を置く「亀印製菓株式会社」は、創業は1852年(嘉永5年)、江戸時代から水戸藩御用達のお菓子を作り続けてきた水戸を代表する老舗企業です。そんな亀印製菓の経営改革に奔走しているのが、数々の大手企業で活躍後、51歳で大学院に進みMBAを取得した吉川康明さんです。10度目の転職、キャリアの総決算として選んだ老舗企業の再生とはどのようなものだったのでしょうか。

ゼネラリストの冒険。51歳で大学院へ

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吉川康明さんは、新卒でスーパーに入社。その後、百貨店、コンビニ、アイスクリーム、ドーナツなど、大手企業の営業現場でキャリアを積み重ねてきました。そんな吉川さんは51歳の時に慶應義塾大学大学院経営管理研究科に進みます。「早期退職すると退職金が増えるセカンドキャリアプランの制度があり、以前から興味のあった大学院で経営学を学ぶことにしました。慶應の授業は単なる座学ではなく、さまざまな企業の事例を題材に、毎日何件も勉強して意思決定するという実務的なものです。大学院では2年間、朝から晩までマーケティングや財務・会計管理、組織マネジメント、生産管理などを勉強し、経営全体を見られるようになりました。」

経験が活かせる場所を求めて

大学院を卒業後、吉川さんは喫茶店の全国チェーンに転職し、物流システムの整備を担当しました。しかし、物流だけでは経営の根幹に携わることができません。さらなるキャリアアップを目指していたとき、日本人材機構から紹介されたのが「亀印製菓」でした。亀印製菓は歴史もあり、茨城県有数の企業でしたが、当時、数年間売り上げ不振から経営難に陥っており、40代の新社長のもとで経営再建を行っている最中でした。そこに、吉川さんはキーマンとして招かれたのです。2019年2月に転職。吉川さんにとっては10社目の企業でした。

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亀印製菓株式会社 マーケティング本部 本部長 吉川 康明さん

「亀印はポテンシャルが高く、お客様の立場に立って商品や店舗運営、対外的な営業活動を見直して質を向上させれば再建できると思いました。自分のキャリアをすべて活かせると思い、決断に至ったのです。」と吉川さん。

企業再生といういうミッションを任された吉川さんは、製造部門と営業部門を一体化したマーケティング本部を発足しました。「製造部は作って、それが売れないと困る。一方の営業部は、お客様に合わせなければならない。生産計画と営業計画はうまく噛み合わないのが世の常みたいなところがあります。そこで組織を一緒にしてしまったんです。製造と営業が話し合って決定したことは必ず実行する理想のスタイルの実現を目指しました。」

しかし、実際に現場を変えるのは苦労が多かったと言います。「新設したマーケティング本部で毎週月曜に製販会議を行うよう決めたものの、なかなか定着せず、会議では言わなかったことを後になって言ってくることもありました。そのたびに会議の意義を説き、チーム全員で情報を共有する大切さを辛抱強く伝えてきました。」

「また、製造と販売の風通しをよくするために、吉川さんのデスクの側に、製造の工場長、隣に営業部長というレイアウトに変え、必ず自分から話に行くように心がけています。ちょっと面倒くさい上司ですが、こうした「自分から行く」姿勢こそが、人間関係を築いていくうえで大いに役立っています。」

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商品・販路開拓にも奔走

吉川さんは商品の開拓にも注力しています。「実は最近では、洋菓子にあずきや抹茶などの和の食材を取り入れるようになり、逆に、クリームを使った和菓子がヒットするなど、和菓子と洋菓子が融合し始めています。元来、和菓子屋はとても保守的です。だからこそ改革できるチャンスがある。難しく考えず、まずは行動。きっちりと見極めて商品戦略をしていきたいと考えています。」

「取引先の開拓にも奔走しています。取引先が限定されると、社内のムードも停滞していくものです。私は大手にいたので、良い取引先に恵まれていました。そこで自分から働きかけて、亀印との取引をお願いしています」

展示会は社長が来ていることの多い初日に出かけ、社長に直接名刺を持って挨拶すると、ほとんどの方が覚えてくれているのだといいます。

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自分で持っている引き出しが必ず何かの役に立つ

「自分は今こういうことをやっているので、力を貸してくれませんか」と吉川さんがお願いすると、社長さんが担当者を呼んでくださり、話が進むことが随分あるのだといいます。こうした人間関係も、吉川さん自身が築いてきたもの。

常に目の前の仕事に全力投球し、行動するからこそ人脈がひろがり、鋭いアンテナが必要な知識をキャッチできるのだと言います。

「入社後に打ち出した改革案のすべてが、増やし続けてきた「引き出し」から生まれています。いろんな問題に出くわしますが、そのときに、自分の引き出しが必ず何かの役に立つのです。」

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