外からの力を借りて、指宿が生き残るための一歩を踏み出したい 花つ月 今柳田 弥生さん
花つ月 今柳田 弥生さん
GLOCAL MISSION Times 編集部
2023/03/01 (水) - 17:00

鹿児島県指宿市で市内初のシェアオフィス兼コワーキングスペース「Share Office wacca.」を運営しながら、グラフィックデザイナーとして活動している今柳田弥生さん。ご自身の仕事や指宿市の魅力、想いについてお話を伺いました。

今柳田様ご自身のキャリアについてお聞かせください。

生まれも育ちも指宿市です。地元の学校を卒業してから、東京で3年ほど動物病院に勤めました。体調を崩して指宿に戻り、地熱発電所の展示館でのアテンド業務、派遣人材などを経て、職業訓練校でデザインの勉強を始めたんです。知り合いから声をかけてもらうようになり、気づいたらフリーランスのデザイナーになっていました。

個人事業主になろうと決心したきっかけは?

最初はお金が発生しない仕事もありました。いつまでもボランティアは続けられませんから、お仕事としてお引き受けしたいと考え開業しました。屋号の「花つ月」は3月の別名で、「これから花が咲き続ける季節」という意味です。私の名前が弥生なのでつけたのですが、実は6月生まれです(笑)。

指宿では、フリーランスのデザイナーに会ったことがなく、仕事の進め方を含め、ゼロから地盤を作っていきました。

フリーランスになってから生活の変化はありましたか?

働く時間や場所を自分である程度決められるスタイルが合っていると思います。会社勤めの頃は、週休2日ではないところが多くきつかったのですが、今は仕事が楽しいし、連休がなくても辛いと感じなくなりました。

どのように依頼がありますか?

知人からの紹介やInstagramでのメッセージ経由が多いです。指宿市内の方からの依頼がほとんどで、私が作ったショップカードやロゴを見てご連絡をくださる方もいらっしゃいます。指宿市の人はInstagramから情報収集をしている人が多いような気がします。知り合い同士がつながっているからかもしれませんね。

どのような作品を作っていますか?

ポスターやチラシ、名刺などの印刷物が多かったのですが、ロゴや商品パッケージ、ホームページ、SNSの運用など、デザインに関することは何でも対応するようになりました。“何でも屋さん”と思われています。

好きな指宿市のイベントのポスターを作らせていただいたことがあり、これが人の目に触れる仕事としての「転機」になりました。デザインの仕事で楽しいのは、話し合いをしながら形にしていく過程です。私はアーティストではありません。依頼してくださる方の想いがあって、それを形にしていくのが仕事です。お客様によって出来上がるものが全く変わるところが面白いと思います。

仕事をする上で大切にしていることは何ですか?

しっかりと話を聞くことだと思います。はじめは「かっこいいものがいい」「可愛いものにしたい」といったざっくりとした依頼でも、掘り下げていくと、本人の中にしっかりとしたイメージがある場合が多いんです。そこを掘り起こして、その想いをデザインに反映させていくことに気をつけています。また、その人の考えと世の中のニーズとにズレが生じている場合は、「こうした方が伝わりやすいのでは?」とご提案するようにしています。

ただ、親身に話を聞きすぎると、本人の中で迷いが生じて立ち止まってしまうことがあります。時間をかけたのに、結局、仕事自体がなくなったこともありました。

「Share Office wacca.」とは、どんな場所でしょうか。

幼馴染が運営している福岡のシェアオフィスを見学したことがあります。そこではリノベーションに関連する人が集まって、チームでプロジェクトを組んで仕事をしているんです。そして、そこを卒業した人から、今度は「こんなことができる人がいないかな?」と、そのオフィスに声がかかるという、いい循環ができていました。こんな場所が指宿にもあったらいいなと。

私自身、家で仕事をしていて閉塞感があった時期でしたので、人が集まる場所が必要でした。「wacca」は丸い「わっか」が由来で、「空間をシェアする、想いをシェアする」がコンセプトです。仕事をするだけなく、勉強会やワークショップなど、その人がやってみたいことをサポートできればという想いで作った場所です。旅行中の方も利用されていて、そういった方とお話しできるのも楽しいですね。

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「Share Office wacca.」内観

もし、ここを作っていなかったら、私自身、仕事を続けられなかったと思います。ここがあるから、いろいろな人に出会えて情報がつながっていくんです。ここからたくさんの仕事が生まれてほしいですね。

指宿の魅力は?

半径10キロ圏内に、山・海・湖・温泉と何でもあります。車さえあれば5分、10分で日常とは違う景色が見えます。指宿港からは種子島、屋久島行きの高速船が出ていて、屋久島には75分で行けます。

港で釣りをしたり、キャンプをしたり、さまざまなアクティビティが楽しめ、好きな過ごし方を探せるのも魅力です。私は煮詰まったら、海をぼーっと眺めて過ごします。海の音が好きですし、人目を気にせずゆっくりできますよ。

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困っているところはありますか?

県外に出るときは移動が大変です。また、地方は人との距離が近いので、いい話も悪い話もすぐに口コミで広がりやすいところはありますね。

地方で活躍できる人はどのような人だと思いますか?

一緒に地域を良くしていきたいという気持ちがある人です。

「自分の力を試したい」というより、自分ができることで困っている人の手助けをしたいという信念が大切だと思います。「儲かりたい」から始めるとくじけてしまいます。

観光を盛り上げることについてどう思いますか?

指宿は普段の生活の中にあるものが魅力的です。観光に来られた方には、もっと町に出て地元の人たちと話してほしいですね。そうすることで指宿への想いが残ると思います。

ワーケーションで来られた方たちは、地方のコワーキングスペースの方が個性があって面白いとおっしゃいます。都心部では1日中、誰とも話をしないことがありますが、地方に来たら土地のことや、地元の人たちが行く場所を聞くことができます。彼らはお客様としておもてなしされたいわけではなくて、仲間になりたくて来ているとおっしゃっていました。

「地方で働く」を考える読者に向けてメッセージをお願いします。

都心では何でもないようなことが、指宿にとっては、発見や気づきになったりします。そういった新しい知識や考え方を伝えて広めていってほしいと思います。人材不足を解決できる糸口になりますし、人が育てば企業も育って、もっと豊かな町になると思います。

副業人材といい関係をつくれたら、指宿にとってプラスになると思いますし、雇用形態が見直されるきっかけになると期待しています。指宿が生き残る力を育むためにも、皆さんの力を借りて一歩を踏み出したいです。

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「Share Office wacca.」外観<HP:https://waccallc.wixsite.com/share-office-wacca>

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