東京都の転入数が再び増加!今までとは違うデジタル田園都市国家構想が必要になる?
GLOCAL MISSION Times 編集部
2023/04/21 (金) - 20:00

2021年、東京都への転入超過数は比較できるデータのある2014年以降で最小となりました。ところが新型コロナ感染症の行動制限が緩和されはじめた2022年、東京都への転入数は再び増加傾向に。総務省が公表した住民基本台帳に基づく人口移動報告によると、2021年の転入超過数である5433人から3万8023人へと、2022年は大幅な転入超過となっているのです。政府は地方創生の戦略として、2015年からの5年間で地方から東京圏への転入超過に歯止めをかけることを目標に掲げていましたが、このまま転入超過の傾向は続いていくのでしょうか?今回は、現在まで政府が推進してきた地方創生とデジタル田園都市国家構想の課題について考えてみました。

■デジタル田園都市国家構想とは?

デジタル田園都市国家構想とは、2021年に岸田内閣の下で始動した政策です。デジタル技術の活用により地域の個性を活かしながら地方の社会課題を解決、魅力向上のブレイクスルーを実現して地方活性化を加速させることを目的としています。つまりはデジタル技術の普及・活用により「全国どこでも便利で快適に暮らせる社会」を実現し、地方活性化や地方創生を加速させようという政策なのです。

デジタル田園都市国家構想には「地方移住を促す国の支援金拡充」の他、「デジタル基盤の整備」、「デジタル人材の育成・確保」、「地方の課題を解決するためのデジタル実装(交通・農業・医療・教育・防災などの各分野について、デジタル技術を活用するための支援)」「サテライトオフィス整備などによる転職なき移住の増加」、「企業の地方移転促進」などが盛り込まれています。

■東京都の転入数がコロナ後に再び増加

「転入超過数」とは転入者数から転出者数を差し引いた数で、「転入超過」とは一定期間における転入者数が転出者数を上回っている状態を指します。冒頭でも書いたように、2021年に5433人まで減った東京都の転入超過数は、2022年には3万8023人に増えました。2020〜2021年はコロナ禍であったこともあり、「密」を避けるため都市圏への一極集中が緩んだとも言われていますが、再び東京都の転入超過は続いていくのでしょうか?総務省が発表した「住民基本台帳人口移動報告(2022年)」によれば、全国の市町村の中で転入超過となっているのは全体の32.8%。都道府県別で転入超過となっているのは東京をはじめ、神奈川、埼玉、大阪、福岡など11都府県しかありません。

政府が2014年から地方創生を開始し、2021年からはデジタル田園都市国家構想で戦略を加速させているにも関わらず、全国の約7割の市町村では住民の転出超過が続いているのです。

●地方移住に興味はあるが、移住には課題も多い

それでも地方移住への関心は、年々高くなっていると言われます。これは働き方改革への意識が高まり、テレワークが普及したことにより、以前から言われていた仕事を続けることへのハードルが下がっているからだと思われます。それにも関わらず、地方への移住が増えないのはどのような理由(課題)があるのでしょうか?

あるキャリア調査機関の調査によれば 、地方移住を検討する上でハードルになっていることの上位は以下のようなものでした。

・環境が変化することへの抵抗    35.9%

・移住にかかる費用         35.2%

・地方での生活がイメージできない  30.8%

・家族の仕事の関係         27.3%

・家族の同意            25.1%

移住にかかる費用については以前からあったハードルですが、共働きが増えている昨今の家族では配偶者の仕事についても悩むことがあり、また他の家族への同意も高いハードルとなっていることがわかります。そして1位となっている「環境が変化することへの抵抗」についても、家族の意思は入っていると思われます。つまり単身で地方移住するならまだしも、家族で地方移住をする場合には移住したい本人はもちろん、他の家族の不安を取り除く施策が必要になっているのです。

■デジタル田園都市国家構想の課題

地方創生からの流れをくむデジタル田園都市国家構想に対しては、主に以下のような課題があると指摘されています。

中央集権的な仕組み

地方創生やデジタル田園都市国家構想は国の関与が濃い中央集権的な形で実施されており、地域の主体性が発揮されにくいとの指摘があります。つまり旗を振っている側が細かな施策にまで口を出すので、地方自治体や地域が地方創生を自分の事柄と捉えにくくなっており、指示待ち状態になっているのです。

財政支援が尻すぼみ

当初は多くの予算を付けた地方創生策の予算が、尻すぼみになっているとの指摘です。確かにデジタル田園都市国家構想によって施策が増え、やらなければならないことに対して予算が不足がちなことは事実です。また助成金の支給に対する条件が厳しく、必要としている人が助成を受けられない、という指摘もあります。たとえば国が用意している移住支援金は、東京23区の居住者か、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)から23区に通勤している人が対象で、東京と同じように転入超過となっている大阪や福岡などは対象外なのです。

デジタル人材(DX人材)の不足

デジタル田園都市国家構想の実現にはデジタル技術の活用が必須となっていますが、デジタル化を推進するデジタル人材は地方では圧倒的に不足しています。優秀な人材を採用しようとすれば高額な報酬が必要となり、そのような人材は東京圏や関西圏などに集中してしまうからです。国がいくらデジタル化の旗を振っても、地方では人材不足でデジタル化を推進する施策が進められないのです。

■まとめ

国が理想として掲げる地方創生やデジタル田園都市国家を実現するためには、「地方に権限を委譲する」、「地方創生の予算を増やす」、「移住に関わる助成の条件を緩和する」、「デジタル人材を国が派遣する」などの対策が必要です。再び転入超過となった東京都への一極集中を緩和するためには、国と地方が一体となった課題検討と早急な対策の実施が求められているのです。

<参考>

【Japan Data】東京の転入超過3万8023人 ―総務省人口移動報告 : コロナ危機感薄れ、吸引力を取り戻す

https://news.yahoo.co.jp/articles/a45873355a1ed8d2bfda90b0950ea42b9b4d2273

地方移住のハードル 「移住費用」「家族の同意」を上回る1位は?

https://news.yahoo.co.jp/articles/7ea802bd880e51d6fb166a9c5cdb709bee412e8f

東京の転入超過、3万8023人=活発移動背景か―22年人口移動報告・総務省

https://sp.m.jiji.com/article/show/2887742

【新田園都市構想】看板掛け替えではだめだ

https://www.kochinews.co.jp/article/detail/621950

「デジタル田園都市国家構想」とは?3つのポイントでわかりやすく解説

https://www.e-xtreme.co.jp/topics/48527/#:~:text=%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E7%94%B0%E5%9C%92%E9%83%BD%E5%B8%82%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E6%A7%8B%E6%83%B3%E3%81%AE%E8%AA%B2%E9%A1%8C%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E6%8C%99%E3%81%92%E3%82%89%E3%82%8C,%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%8B%E3%82%82%E3%81%97%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82

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