東大卒でも! 一般職への就職を希望する女性増加 女性が活躍する社会とは
浅賀 桃子
2017/08/21 (月) - 08:00

企業によっては雇用管理方法として「コース別雇用管理」を採用しているところがあります。コース別雇用管理の始まりは、1986年に施行されたいわゆる「男女雇用機会均等法」を契機に、男女別の雇用管理制度から企業が設けたコースごとの採用を実施する制度へと改められたことにあるとされています。大企業を中心に導入されている「総合職」「一般職」といったコース別の選考がその代表です。企業の基幹業務に携わり、将来の幹部候補として採用される総合職に対し、総合職の補助的な仕事や定型業務が多く、昇進も限られる傾向の一般職は、今や四年制大学出身者の女性にも希望者が少なくありません。その理由と、女性が活躍する社会について考えていきます。

高学歴女性が自主選択する一般職

バブル時代の採用では、一般職と言えば高校・専門学校・短大卒の女性が大半でした。その後就職氷河期と言われる時代に入り、女性の(一般職)就職枠自体が激減。それまで一般職が主に担っていた事務仕事等は派遣社員の担当となる企業も増えました。しかし現在では再び一般職枠が増えており、東大・早慶上智・MARCHクラスの有名高学歴大学の女性が意図的に一般職を希望・選択するケースが珍しくなくなっています。
一般職というと、以前は特に「数年勤務してから寿退社」というイメージを持つ方が少なくありませんでした。しかし、有名高学歴大学の女性が一般職を希望する理由は寿退社を視野に入れているからというよりはむしろ「長く働き続けたいから」ということにあるようです。

総合職では長く働けない?

ワークライフバランスという言葉が広まる世の中になっています。筆者はカウンセラーとして就職相談にのる機会がありますが、「総合職か一般職か」迷う人の中には「結婚後も働き続けたいが、転勤が多いと家庭と仕事との両立が難しいのでは」「総合職は長時間労働も多く、出産・育児をしながらでは難しく結局退職に追い込まれるのではないか」といった悩みが少なくありません。
厚生労働省の「コース別雇用管理制度の実施・指導状況」調査によると、10年前に採用された総合職の女性離職割合は65.1%と、男性の2倍以上になっています。10年前に採用された総合職の女性が全員離職している企業も48.9%と半数近い結果です。もちろん離職理由が「家庭と仕事の両立ができない」というだけではないわけですが、割合としては少なくないことから、ワークライフバランスをとることを優先したいと考える方が総合職への応募を躊躇したとしてもおかしくはないでしょう。

一般職に求められることが変わってきた

一般職が「高卒・短大卒女性≒寿退社」という認識に代表されたころは、一般職はサービス残業や(転居を伴う)転勤から解放される反面、お茶くみやコピー取りなどの雑用や単純業務、定型サポート業務を行うことが主な役割として期待されていました。しかし、単純業務や定型サポート業務に関しては派遣社員、非定型的な業務を含むやや複雑で難易度が高い業務に関しては、コンプライアンス等の面で正規雇用者へ任せようとする風潮が強まりつつあります。
さらに、安倍内閣の「女性活躍推進」施策として、2020年に女性管理職比率を30%に上昇させる目標が掲げられています(2012年現在6.9%)。それゆえか、一般職からの管理職登用も増えつつあります。

女性が活躍できる社会とは

筆者は就職氷河期と言われ、女性の就職が大変とされていた時代に就職活動を行いました。その当時に比べれば、先述の通りワークライフバランスが声高に叫ばれ、国を挙げて女性活躍を推進し、育児・介護休業法なども改正されるなど、女性にとっては一見働きやすくなっているような印象を受けなくもないのですが、高学歴女性があえて一般職への就職を希望する現状は、必ずしも女性の活躍できる社会になっているとはいえないのではないでしょうか。
本来、男女の雇用機会を均等に設けることから始まったはずのコース別雇用が、女性にとっては「キャリアを選ぶなら総合職、結婚・出産と仕事とを両立させたいなら一般職」という形での選択になっているところも否定できません。特に高学歴女性で「結婚してからも長く働きたい」と考える人ほど一般職を選んでいる…しかしいざ選んだ彼女たちも、総合職で採用された大学の同期女性との待遇の差を目の当たりにすることで「これでよいのか」と悩む例もあります。
何を持って「女性活躍」とするかは難しいところですが、「総合職だから結婚・出産後仕事を両立しづらい」という理由で、優秀な女性が総合職を選択しない、あるいは早期退職してしまうのであれば、社会として非常にもったいないことではないかと思います。

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