こゆ地域づくり推進機構代表理事 齋藤 潤一氏
地域で活躍できる人材の「条件」とは/「プロトタイプ力」を身に着けよ
こゆ地域づくり推進機構代表理事 齋藤 潤一氏
月刊事業構想 編集部
2019/02/04 (月) - 08:00

地域にはどれほどビジネスチャンスが溢れているか、そして、地域で活躍するために必要な能力とは何か。全国各地で地域資源の商品化やブランディングを多数成功に導き、地域の起業家育成にも携わる齋藤潤一氏(こゆ地域づくり推進機構代表理事)に聞いた。


齋藤潤一氏は地域ビジネスプロデューサーとして、これまで宮崎県日南市の伝統工芸品「飫肥杉」製品の海外展開や、鹿児島県三島村の特産品「大名筍」のリブランディングなど多数のプロジェクトを成功させてきた。現在は全国各地で起業家育成事業に携わりながら、宮崎県新富町の地域商社・こゆ地域づくり推進機構(こゆ財団)の代表理事としても活躍している。

「まず、やってみる」という力 

地域ビジネスと地域起業家人材育成の第一人者にずばり聞いた。地域で成功する人材に必要な能力は何なのか。
「①自分がワクワクすることを持っていること、②自身や地域に対し危機感や課題感を持てること、③プロトタイプ力、の3つだと思います。最も大事で、かつ日本人に欠けているのはプロトタイプ力、まずやってみる力ですね。日本企業は、協調性を重視し個性を閉じ込め、自身の課題感ややりたいことではなく上司からの指示が重視され、チャレンジよりもリスクヘッジが求められる。イノベーションを起こすために必要な要素と真逆のものが、企業では求められるわけです。それではプロトタイプ力は育たないですよね」
 
では、プロトタイプ力を養うにはどうすれば良いのか。「内的要因としてはマインドセットを変えることですが、外的要因=企業の不寛容さは1社員では変えられない。そうすると、自分を『寛容な環境』に持っていくしかない。それはどこにあるのかと言えば、地域です」
 
地域=しがらみが多い、閉塞感が漂う、というイメージを持つ人もいるかもしれない。しかし齋藤氏は「地方創生が始まってから、地域はずいぶんオープンに、寛容になってきました。住民や移住者のチャレンジを積極的に後押ししてくれる『新しい地域』がどんどん可視化され、そこに人が集まるようになってきています」と言う。

都会のエース級の人材が、地域を選ぶ時代

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こゆ財団が東京で開催する地域起業イベントには、毎回100人近い応募があるという

齋藤氏が活躍する宮崎県新富町も、まさに可視化された『新しい地域』のひとつであり、移住者や起業志望者が続々と押し寄せている。2017年末からこゆ財団が実施している起業家育成塾は、定員20人に対して全国から86人の応募があったそうだ。東京で開催する地域起業イベントも100人近い応募がある。
 
また、こゆ財団では移住中途人材が多数活躍しており、スタッフ16人のうち75%以上をUIJターンが占める。「採用の応募は、毎週のように届きます。多くの人はチャレンジの場を求めています」と齋藤氏は言い、2018年の転職事例を紹介してくれた。
 
料理教室最大手で広報に従事していた女性は、新富町と2拠点生活を開始し、こゆ財団の広報と商品開発を担当。新しく開発した『新富茶ジェラート〈緑茶・ほうじ茶〉』が大ヒットしている。また、この7月に上場ネットマーケティング会社から転職してきた30代の男性は、ふるさと納税の売上をどんどん伸ばしているという。「他にも、コンサルティング会社で国や自治体のマスタープランをバリバリ作っていた30歳の人材が、『新富町で一発当てたい、自分の名前で飯が食えるようになりたい』と入社してくる予定です。都会でエース級の人材が、自らの夢と成長のために地域を選ぶ。もうそんな時代なんです」

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東京の料理教室最大手から財団に転職した女性。広報と商品開発を担当している

採用応募が殺到する秘訣とは

こゆ財団のように、都心から優れた人材を呼び寄せられる企業や地域は、どのような工夫をしているのか。
 
「まず大前提として、先述した『寛容な環境』を提供することです。来た人材の個性やワクワク、やりたいことを尊重する。地域おこし協力隊が良い例ですよね。隊員のやりたいことを後押ししている自治体もあれば、嘱託職員として一般事務の仕事を依頼する自治体もある。どちらに人材が集まるか、どちらの地域にイノベーションが起こりやすいかは明白です」 

もう一つ、大切なことは「人材に対する『ずっといて欲しい』という認識を捨てること」だという。
「僕は、こゆ財団に新しく入ってきた人材にいつも『2~3年で辞めてもいいよ』と話します。うちをスキルアップ・キャリアアップの場として使い潰してくれ、という意識です。もちろん、ずっと働いてもらいたい気持ちもあります。しかし、よそ者は、よそ者だからこそ力を発揮できるという面もある。いずれ去るからこそ、その地域で、しがらみを気にせず目一杯挑戦できるのです。新しい力を身に着け、他の地域に移り、また活躍する。そうやって時間と場所にとらわれない働き方を実践してほしい。イノベーションを起こす人材は『風の人』の方がいいんですよ」
 
齋藤氏は「地域はブルーオーシャン」と強調する。「東京の商品の売上を10倍にすることは難しいけれど、地域ならばその可能性があります。手付かずの資源が残っているし、熱い想いや危機感を持った地域住民もいます」。一方で地域に足りないものは、稼ぐノウハウとビジネスマインドを持った人材だ。
 
「一度、海外で住んでみるとよく見えるのですが、こんなに豊かで多様性に富んだ文化を持っている島国は、ほとんどありません。日本人らしい生き方、ワクワクする働き方を実践したい人は、ぜひ様々な地域を訪れ、自分の個性を発揮できる環境を探してみてください。僕もいつでも相談にのります」と齋藤氏はエールを送る。

※こゆ地域づくり推進機構(こゆ財団)とは
宮崎県中部の新富町(人口約1万7,000人)が2017年4月に設立した地域商社。「強い地域経済をつくる」というミッションのもと、特産品による外貨獲得と、起業家育成で町への再投資を行う「稼いで町に再投資する」新富モデルを推進。1粒1000円の国産ライチのブランド化や野菜・果物の販促、起業家育成塾、「こゆ朝市」をはじめとする観光イベントなど、様々な活動を実施する。移住者・起業家の増加や、ふるさと納税額の倍増など、多数の成果を生み出している。
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saito jyunichi

こゆ地域づくり推進機構代表理事 地域ビジネスプロデューサー 

齋藤潤一(さいとう じゅんいち)

1979年大阪府生まれ。米国シリコンバレーのITベンチャー企業での勤務を経て、2011年の東日本震災を機に、ソーシャルビジネスで課題解決を行うNPO法人まちづくりGIFTを設立。全国で起業家育成を通じたビジネス創出に取り組む。2017年4月こゆ地域づくり推進機構代表理事に就任。慶應義塾大学大学院非常勤講師。経営学修士(MBA)。スタンフォード大学在学中。

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