「働き方改革」は個人の成長を止める!?自分の仕事の捉え方が重要
渡部 幸
2019/08/13 (火) - 08:00

2016年より政府が大きく推進し、国の重点施策として取り組まれている「働き方改革」。雇用される側にとって、よいことばかりのように思えるこの改革ですが、実は働く側にとっても、さまざまな選択を迫られる仕組みだということを考えたことがあるでしょうか。今回は、その重要な捉え方について伝えたいと思います。

改革による企業の模索とは

残業時間の削減によって長時間労働の疲弊や過労死を防ぐ、という長時間残業をなくす施策ばかりが「働き方改革」の重要な方針ではありません。その他に「非正規雇用と正規雇用の格差を少なくし、多くの人が働きやすい環境をつくる」「高齢者社会における深刻な労働者不足を補うために、働き手を増やす」つまり、今や労働人口の中の4割を占めるまでになってきた非正規雇用の人たちの賃金を上昇させ、消費を押し上げてデフレ脱却を図ること、高齢者や家庭に入っていた主婦など今までは働いていなかった人たちにもこれからの労働力になってもらうこと、も施策の柱です。

このような改革により、企業は組織の変革を求められています。事業を存続させ、利益を出していくには、残業は少なくする代わりに時間内にいかに効率的に労働の生産性を上げるか、あるいは、残業では業務を進められなくなった分、1人当たりの賃金を下げてでも雇用を確保し、ワークシェアリングをいかに進めるか、ざっくり大きく分けるとどちらかの方法、または両方を併用して企業は模索することになるでしょう。

たとえば、「非正規雇用でも正規雇用の人と同じ仕事をしていたのなら、同一賃金にする」という変更を行ったとしても、今までの正社員の人の給与が、今までの制度で昇給し続けるわけではありませんし、非正規雇用だった人の給与が今までの制度の正社員と同じように昇給するわけでもないでしょう。企業の規則によるでしょうが、全員無期雇用だけれども、全員が同じようなゆるやかな賃金上昇カーブのなか(つまり、あまり給料は上がらず)働く、という制度に変わる可能性もあるのです。

企業で働く人に必要な意識

このような改革が進むなか、企業で働く場合、自分はどう仕事をしていきたいのか、仕事に何を求めるのかをしっかりと考える必要があります。

「自分は、企業の中でやりがいを感じて仕事を続けていきたい」という人には、今後ますます「残業は少なく、しかし与えられた仕事はやり遂げる」働き方が求められるでしょう。いかに短い時間で効率的に仕事を進めるか、個人のスキルを磨いていく意識がもっと必要になってきます。契約社員のような有期の雇用は今後少なくなり、雇用については一旦安定するかもしれませんが、昇給やボーナスの額、仕事の担当などは、もっと評価によって変わってくることが考えられます。スキルをつけていかないと、ある日、会社側から他の人への仕事の分担を要求され、自分のやりたい仕事は任されなくなってしまう可能性があるのです。

自分の生き方を考える必要も

また、始めから賃金の上昇を抑え気味にワークシェアリングを行う会社もあるでしょう。今でもすでに始まっていますが、専門性の高い仕事は自社ではなく、他の会社へアウトソーシングされることも多くなります。今後は労働力不足や残業時間を補う代わりにAIが仕事をすることも増えてくるでしょう。

このとき、自分自身の働き方、生き方をどうしていきたいのか、もっと自分で考えていくことが必要になってきます。

1.できるだけ仕事のスキルアップを自分自身でも努力し、企業の中で生産性を上げて重要な人材として評価を高め、働いていくやり方。いわゆる総合職として濃く働く。

2.企業の中では割り切って、短い時間で一部の仕事を行い、他の生きがいや楽しさをメインの仕事以外で見つけていくやり方。その代わり、企業の仕事では高い給与は期待できない。副業を同時に行っていく、パラレルキャリアなどもこれに当てはまる。

3.今の企業ではなく、自分のスキルを活かせる、もっと専門性を高められる仕事に転職する、専門性を活かして起業する。

といった働き方が考えられます。全員がどのように働いていくか、どのように生きるか、自分で選択を迫られているのが「働き方改革」なのです。

まとめ

「長時間労働の削減」「非正規雇用の格差是正、同一労働同一賃金」「労働者不足を補う高齢者の雇用促進」という改革がどんどん進むと、今までの日本の企業にあった「終業時まで会社にいればお給料はもらえる」「残業代も必要だから仕事はそんなにないけどなんとなく残ってお金をもらう」というような働き方は、今後できなくなっていくでしょう。「働き方改革」とは、企業で働く人にとって、楽で、仕事がしやすくなることばかりではありません。もっとその方針を把握し、自分自身でどう仕事をしていくか決める必要があるのだ、と理解しておくことが大切なのです。

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