働きやすい職場は、コミュニケーションしやすい風土
久保田 一美
2018/11/29 (木) - 09:00

社員の多くが自分らしくいきいきと働く職場は働きやすい職場であり、多様な人事制度や就労規則だけでなく、職位に関わらずコミュニケーションがしやすい風土があります。長時間労働の是正に焦点があたりがちな働き方改革。並行してコミュニケーション改革の必要性について検討してみましょう。

長時間労働の是正だけではない

働き方改革が進むなかで、「長時間労働の是正」のみがクローズアップされ、そのことが目的になってしまっている企業があると聞きます。そこには従来から続いてきてしまった残業時間の多さが問題となり、まずはノー残業デーの実施を導入したり、強制的に定時に消灯したりと、労働時間を減らすことに焦点があたっています。

しかし、「働き方改革」とは何のためにするのでしょうか。前述の通り、残業時間のあまりの多さに社員の身体的、精神的な健康を害しているのは論外ですが、企業が存在する本来の目的は「利益」を上げることです。

つまり、企業においてはその目的に向かって業務のやり方を見直すことで、ムリ・ムダ・ムラをなくし、その過程で長時間労働が是正されて「働きやすい職場」となるからこそ利益が上がっていくことが、改革の核となるものです。

ムリ・ムダ・ムラは、どこから生まれてきているのでしょうか。仕事はコミュニケーションから始まって、コミュニケーションで終わるように、その過程における人と人との間に生まれる認識の違いから、業務の手戻りが生じたり、期待とは違った結果が発生してしまい、やり直しに時間がかかることが少なくありません。

限られた時間内や、目標の時間内に仕事の生産性を向上するための1つの手段として、コミュニケーションにおける課題について実際の現場からの声を聞いてください。

現場から聞こえてくる声

普段私は、企業や中央官庁、自治体などにて研修やセミナーを行うなかで常に感じていることがあります。それは、新入社員や職員、若年層など部下から多く聞かれる悩みの声は、「話しかけるときに、上司の顔色を伺ってしまいます」「上司がいつも忙しそうなので、話しかけるタイミングがないのです」という意見があまりにも多いということです。

一言で確認が済めば仕事が円滑にまわることが含まれていることもあり、これは問題です。先日は、「上司に聞きたいけど、ずっと話しかけられず2日も経過してしまいました」という方がいらっしゃいました。このような実例を聞くと、上司の立場からすると、「相談してこない部下に問題がある」と考える方も多いでしょう。

コミュニケーションには、非言語コミュニケーションという言葉があるように、視覚的、聴覚的なものから醸し出されるその場の雰囲気もとても重要です。部下は話しかけたくても、「話しかけづらい」というのが実際なのです。

このような話しかけづらい環境の一番の弊害は、会社にとって、組織にとって、自分にとって都合の良くないことを、報告しづらくする風土をつくり出してしまうことです。昨今の企業経営に関するコンプライアンスに関わるニュースは、少なからずこのような風土があったのではないでしょうか。

一方で管理職やリーダー研修などを行うときに「部下とどのくらいの頻度で面談していますか」と毎回伺うのですが、驚くほどに対面での面談の時間や機会を設けていないのです。なかには1年に1回という方もいらっしゃいました。定期的に設けることが形骸化しないようにするのはもちろんですが、1対1の面談だからこそ、部下の本音を聞くことができ、上司の一言がモチベーションに繋がります。

ITと人でつくる働きやすい職場

このような職場の上司と部下のコミュニケーションのすれ違い。前者は日々の業務で慢性的にあるようであれば大変な時間のロスとなり、職場全体の生産性が下がります。後者については、もし面談の機会を設けていないようでしたら、短い時間でも良いので始めてみるのはいかがでしょうか。

堅苦しくなくて良いのです。話しやすい雰囲気をつくるのは上司の役目です。日頃気がつかなかった部下の意外な一面を見つけることができたり、言い出しづらかった家族やプライベートの悩みを打ち明けてくれたりする機会になります。そのような上司からの小さな働きかけが、次第に部下との信頼関係を築き、コミュニケーションを取りやすくなったという例もいくつも見てきました。

コミュニケーション手段もメールからビジネス版のチャットを取り入れる企業も増えてきています。長く続いてきたコミュニケーションに関する手段も、働き方改革のなかでは時代に合わせて変わっていくでしょう。

働きやすい職場をつくるには、こうしたITを活用しながらも、人と人との対面のコミュニケーションを大切にする必要があります。変化のスピードも速い時代だからこそ、いつでも、誰もが、職位に関わらずコミュニケーションしやすい風土が求められているのです。

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