地方企業が抱える「経営幹部人材ニーズ」・第2回
GLOCAL MISSION Times 編集部
2017/07/13 (木) - 08:00

第1回では、地方創生のラストワンマイルになる「人材ソリューション」と人材ニーズを引き出す地域銀行の「適切な事業性評価」について、佐々木琢也氏に語っていただきました。第二回では、地方で顕在化している「経営幹部人材ニーズ」の種類について、お話いただきます。

地域の銀行と企業の関係性から見る、 “地方創生”のいま・第1回
 

地方における経営幹部人材ニーズ

Q「地方の企業において顕在化している人材ニーズにはどのようなものがあるのでしょうか」

「社長の右腕」人材

われわれがご相談を受ける地方企業において、もっとも顕在化している経営幹部人材ニーズに「社長の右腕人材」が挙げられます。
地方において、特に創業社長の場合は、社長自身が、事業への強い想いを持ち、孤軍奮闘して経営にあたっています。一方で、社長が持つ戦略・アイデアが、生煮えの状態で失敗に至るケースや、日々の社長の指示が、現場に的確に伝わらずに、結果、実行されなかったりすることなどが往々にして生じています。
社長の右腕となって、社長の戦略・アイデアを、じっくりと聞き、論理的に整理する「よき相談相手」や、現場への指示を「翻訳」し、円滑な業務遂行ができるような「伴走型のサポート」が求められています。
この場合のポジションとしては、社長室、経営企画担当役員などがあります。
自ら考え自ら動ける人、混沌・未知・異文化を楽しむ姿勢、大企業だけでなくベンチャーや中小企業での実践経験を持つような人物像が適しています。

「事業承継」に関連した経営幹部人材

地方の企業が抱える大きな課題の一つに、事業承継が挙げられます。
後継者への円滑な経営承継が必要なケースや後継者自体が不在なケースなどです。
前者でいうと、例えば、現社長が70歳・後継者40代・首都圏の大企業に勤務後、最近になって入社したといった企業です。後後者が経営経験を積むまでの「リリーフ」且つ「後継者への指導役」として、経営者から二代目後継者へスムーズに橋渡しする人材のほか、後継者のブレーンとなる人材を求めている場合もあります。
より深刻度が高いのは、経営者が高齢にも関わらず後継者が不在のケースです。
この場合、会社をM&Aで売却する選択肢がありますが、域外の企業への売却となった場合、企業と地域との関係性は薄れてしまいます。
「所有」と「経営」を分離し、経営者を外部から招聘することも、選択肢のひとつとして検討してみることをご提案しています。

「事業再生」人材

地方においては、時代の変化に対応できず、成長鈍化~再生のステージにある企業も多く存在します。そうした企業でも、その地域では雇用の受け皿として重要な役割を担っていたり、社長が各種団体の要職を兼ねているなど様々な地域との関係性(しがらみ)を持ち、地域銀行としては簡単には見放せない、という企業も多いです。
事業性が存在しない企業であれば退場していただくしかないのですが、事業性はあるが、経営者の経営(改善)意欲が乏しいケースなどで、企業の建て直しを主導できる人材は、地域銀行から特にニーズが強く寄せられます。
メインバンクとともに企業の再生を主導するTAM(ターンアラウンドマネジャー)です。
事業再生人材の特徴としては、案件によっては、ファイナンスの知識、金融機関とのリレーションなど専門性が必要となることや、期間3~5年間での有期のプロジェクトになる傾向があることが挙げられます。

「CxO」/企業成長に向けたスペシャリスト

最後は「CFO(管理系)」「CSO(営業・マーケティング)」など、「CxO」と呼ばれる各部門のマネジメント人材です。

特に、事業成長ステージに位置する企業において、事業展開を加速するための、その会社の「要」となるセクションのスペシャリストを必要とするケースです。

経験やスキルなどで候補者とのマッチングできるため、人材サーチ(探索)はしやすいのですが、一般的に大企業に比べて、業務領域は広く、裁量は大きくなっていますので、候補者の方の人物像の見極めが求められます。

また、この場合、人材ニーズを有する企業の事業性評価が特に重要です。
企業の事業構造、競争優位性、社内組織・人員体制などをしっかりと診立てて、成長シナリオを共有し、その企業の成長に最も重要となる経営課題を抽出することで、CxOのxの特定を行うことが、人材要件の定義となります。

カギとなる「人材要件定義」

経営幹部の採用決定権は経営者自身にしかありません。
その経営者にコンタクトを取れるのは地域銀行の専売特許です。
地域銀行が、「適切な事業性評価」によって、その企業の「経営課題」を抽出し、課題解決にどのような人材が必要かといった「人材要件定義」ができれば、 私たち日本人材機構が提供する経営幹部人材ソリューションと両輪で地域企業を支えることに繋がります。

地域銀行の事業性評価の取組みには、まだバラつきがあると感じています。
事業性評価への取組みをあまり積極的に行っていないために、地域企業の経営幹部人材のニーズそのものを掴めていない地域銀行もありますが、なかには、地域産業支援への熱い思いを持ち、地域企業の経営幹部人材ニーズを掴んで、日本人材機構と「事業性評価」のプロセスを協業する地域銀行も出てきました。

我々は、経営人材ニーズを切り口に、地域銀行と協調したソリューション提供に取り組み、最終的には、我々の持つノウハウを地域で自走する形まで持っていくことを掲げています。地方創生のラストワンマイルを繋ぐ取組みはまさに始まったばかりです。

地域の銀行と企業の関係性から見る、 “地方創生”のいま・第1回

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