【地方移住の手引き】都会にいながら、地方暮らしを体験
GLOCAL MISSION Times 編集部
2020/07/03 (金) - 07:15

地方転職を考え始めた人にとって、「地方に住む」はセットとなる事柄。しかし大都市の会社に勤務し、住んでいると実感は薄いかもしれません。地方出身であっても、故郷に住んでいたのは何年も前のことでしょう。一歩間違うと地方転職のハードルともなりかねない「地方での暮らし」。転職・移住に踏み切る前に、どんな様子なのか掴んでおくのは大切です。このコラムでは、都会にいながら地方暮らしを知る方法をご紹介します。いきなり現地へ飛ぶ前に、情報収集と周到な準備を重ねつつ、移住実行への助走にしてみましょう。

住みたい町のリアルを知る──まず情報収集から

転職したい地方企業をいくつかに絞れた、それら地方の県民性や気候、特徴もある程度知った。次に起こす行動は移住……ではなく、さらなる情報収集です。地方移住を決行したら、そこでの生活が何年も続きます。つまり、移住はゴールではなくスタート。そこでどんな暮らし方が待っているか、自分(そして家族)は対応できるのか、ずっと住み続けられるのか、決行の前に情報を集める。まずはそこからです。
情報収集にはいくつかのステップがあります。

1. 移住候補地の風土、県民性の調査
2. 地方自治体による移住支援制度の収集
3. バーチャルな移住体験
4. 自治体担当者とのコンタクト
5. お試し移住により生活を肌感覚で知る

という具合に、段階を経て近付いていくわけです。一見まどろっこしく見えても、ここは石橋を叩いていきましょう。何しろ、一生を左右するかもしれない大イベントですから。

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移住ポータルサイトの活用

上で挙げた5つのステップのうち、ステップ1については、当サイトのコラム『住みたい県はどう決める? 1・2』も参考にして情報を集めてみてください。
ある程度候補地を絞ることができたら、移住のための情報収集。それらを集めたサイトが、いくつかあります。各地方自治体が移住人口を増やすために発信しているサービスなどを、まとめて掲載しているサイトです。こういったサイトをポータルとして、まずは情報を集めていきます。先に挙げたステップの1と2をここで達成することができるでしょう。例えば……

「一般社団法人 移住・交流推進機構」
https://www.iju-join.jp/
この団体は「企業と自治体が力を合わせて地方を元気にすることを目的とした組織」で、平成18(2006)年に総務省により発足した「人口減少自治体の活性化に関する研究会」が出発点となっています。さまざまな移住スタイルを提案していて、週末や季節ごとの滞在などにも対応した情報を発信しています。
ほかにも、

「自治体クリップ」〜自治体に特化したメディアサービス等を扱う会社(福岡市)の地方移住サイトまとめ(2017年掲載)
https://clip.zaigenkakuho.com/iju_site_pref/

「いなか暮らしはじめませんか?」〜内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局が発行している地方移住ガイドブック
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/info/pdf/panf_iju.pdf

「地域力の創造・地方の再生」〜総務省が開設しているサイトで、用語やデータからプロジェクト紹介、地域おこし協力隊募集までさまざまなコンテンツが集まる
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/index.html

といったサイトやPRメディアもあります。

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バーチャルな移住体験もできる

移住のポータルサイトで全国の移住情報、町情報を集めたら、次は「バーチャル体験」をしてみるのも手です。

「オンライン全国移住フェア」
http://loconect.com/

これは、ネットを通じて出展している自治体とオンラインでつながることのできる「移住フェア」。新型コロナ禍によりリアルでの移住セミナーなどが開催不能となったのを受け、山口県に本拠を置く「loconect事務局」が主催したイベントです。5月31日に開催されており、リンク先で当日のレポートを見ることもできます。
http://loconect.com/2020-5-31fair-report/
このページによると全国から38都道府県・138団体が出展、173名が参加したとのこと。リアルなフェアと比べハードルは低いわりに、モニター越しに現地の様子が見られたり気軽に相談できたりとたいへん好意的な意見が多く見られます。自治体や団体が主催するオンライン移住フェアも増えてきていて、新型コロナ禍が収まってもこういった形式の取り組みは続いていくのでしょう。

また、居ながらにしてその町の様子を見ることができるのが、「Googleストリートビュー」。一度は使ってみたことがあるでしょう。日本全国にその範囲を広げており、公道以外でも海岸や山道などもストリートビューに加わっています。
https://www.google.co.jp/maps/
屋久島の縄文杉までトレッキングしながらストリートビューを撮影している動画
https://www.youtube.com/watch?v=GIuayxQSVzc

自治体窓口担当者とのコンタクト

前述の「移住ポータルサイト」で紹介した「フルサト」を運営する「NPO法人ふるさと回帰支援センター」は、東京と大阪(名称は『大阪ふるさと暮らし情報センター』)に事務所を開設しています(東京は有楽町駅、大阪は堺筋本町駅が最寄り駅)。東京の場合は、東京と大阪を除く45道府県といくつかの市の移住相談員が常駐。それぞれの地域ごとに移住や定住に関する相談を受け付けているほか、移住支援や就職に関するセミナーも頻繁に開催されています。中には市町村の移住担当者と直接話ができる「出張相談会」もあり、より具体的・立体的な移住情報を得られます。
ここのメリットは、何と言っても自治体の窓口担当者とつながりを得られること。バーチャルな体験をしてきたら、次はリアル体験のステップです。担当者としては「ぜひうちの県へ」と売り込むことが職務ではありますが、話をしているうちに人間性や本音に触れることがあるかもしれません。

「ふるさと回帰支援センター」
https://www.furusatokaiki.net/

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移住候補地との相性を確かめるお試し移住

自治体の窓口担当者と面識ができたし、ある程度移住候補地も絞れてくる頃でしょう。気がはやり、すぐにでも引っ越しを、面接をという状態になっているかもしれませんが、もうワンステップ。「お試し移住」をしてみましょう、という提案です。お試し移住とは、文字通りテスト的にその町に住んでみること。住民票を移すまでもない、短期の滞在です。そこでの暮らしはどうなのか、環境はいいか、家族はどんな反応か、地元の人たちとはどんな関係を持てるか……あまり短いとすべてはわからないでしょうから、何回か通ったり1カ月程度住んでみたり。言ってみれば、その町との相性を確かめるマッチング期間です。さらに、あとで説明する「移住体験ツアー」を開催している自治体や団体もあります。
お試し移住はすべての自治体で実施しているわけではありませんが、調べてみるとかなりの数がヒットします。1泊から1年程度と滞在できる期間は幅広く、おおむね宿泊費も格安です。交通費を負担してくれるケースもあります。これらの情報をまとめているサイトもありますので、ぜひ参考にしてみてください。

「ホームズ」〜不動産情報大手が運営するサイトの中にお役立ち情報が。
https://www.homes.co.jp/cont/rent/rent_00461/

お試し移住の間の生活拠点は空き家やアパート、ゲストハウスなどを借り上げる場合が多いのですが、施設を新たに建造する動きも活発です。中には長野県信濃町のように新築かつ無料で提供するケースも。

「ありえない信濃町通信」〜信濃町が運営する移住情報サイト。
https://shinanomachi-iju.jp/503/

他にも検索してみるとかなりの数の移住体験施設が見つけられます。

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「ならでは」の体験ができる移住体験ツアー

先に述べた「移住体験ツアー」には、「パッケージ型」と「オーダーメイド型」の2タイプがあります。「パッケージ型」は、あらかじめ決められた日程の中で企画されたプログラムに沿って行うもの。言わば団体旅行的な感覚で参加できます。現地の自然に触れたり、住宅事情や生活環境を確かめたり、先輩移住者の話を聞いたり、農業・漁業の体験ができるなど内容はさまざまで、多くの自治体で開催されています。ツアー中、同じ思いを持っている人たちとのつながりも生まれるでしょうし、移住後の生活感もよりリアルにわかります。
一方「オーダーメイド型」は、文字通り自分で日程や内容を決めて動くことのできるツアー。ある程度の希望を伝えると、自治体職員などがそれに沿って内容を固めてくれる形式が多いようです。自分の都合に合わせて日程調整が利き、地元住民しか知らないようなスポットや施設を訪れることもできます。少人数なのでより深く交流ができるのもメリットです。
いずれも、個人ではなかなか訪れたり知り合えたりするのが難しい場所や人々がプログラムに組み込まれていることが、「ならでは」の特徴と言えるでしょう。
ツアー料金は無料の場合も多く(交通費は別)、「ぜひ当地へ」という各自治体が熱意を込めているのがよくわかります。

また、「お試し」という枠で考えれば定額で全国に住むことができる言わば「移住のサブスクリプション」もあります。

「ADDress」
https://address.love/

空き家や別荘をリノベーションして貸し出すサービスを行っている会社「ADDress」が実施しています。月額4万円の会費には光熱費やネット回線料金も含まれていて、それ以外は無料。予約はネットで完了します。2020年3月現在全国に40拠点があり、何拠点生活もできてしまいます。企業の福利厚生やリモートワーク拠点に、という使い方も可能です。地方で深刻化している空き家問題の解決にも大きく寄与するでしょう。
その他に、

「Hostel Life」〜登録している全国のホステルに泊まり放題となるサービス。
https://hostellife.jp/

「HafH(ハフ)」〜世界のホテル、ゲストハウスなどに定額で泊まり放題となる。
https://hafh.com/

といったサービスもあり、サブスクリプションの波は地方移住にも押し寄せそうです。

>>>こちらも合わせてご覧ください。
四国のマイナーだったまちを「住みたい田舎全国1位」に押し上げた仕掛け人たち

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グラデーションを付けた移住計画も

お試し移住まで経験してきたら、あとは移住の本番──でも、もう少し待ってください。今住んでいる都会の街とのあまりにも大きなギャップに耐えられる自信はありますか? 移住候補地が小さな町や村の場合、ある程度のお試し移住で経験値を積んでいなければ、「こんなはずではなかった」という想いが襲ってくるかもしれません。それが心配であれば、まずは県庁所在地クラスの大きさの市へ引っ越して、様子を見ることもお勧めします。そこに住みながら時間のあるとき候補地へ通い、移住後の生活をシミュレーションしてみるのです。お試し移住の仕上げ、ですね。もしかしたら、他にも住みたいところを発見できるかもしれません。
こんな、グラデーションを付けた移住計画のもとに地方での生活を始めてみる──何度も言いますが、石橋は叩いて渡った方がいい結果につながるはずです。

さあ、次はいよいよ行動を起こすステップ。自治体の支援制度も利用して、賢く実現させるノウハウをお伝えします。

*2020年7月3日現在、新型コロナウイルスの影響によってほとんどの移住体験ツアーや体験施設は休止となっています。ご利用の際は各自治体にご確認ください。

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