【地方都市の魅力】北海道札幌市 緑が多く自然豊か、交通インフラ充実した都市
亀和田 俊明
2020/07/17 (金) - 07:00

6月に公表された内閣府の新型コロナウイルスを受けた生活意識の変化に関する調査で、テレワーク経験者に地方移住への関心度を聞くと「高くなった」(6.3%)、「やや高くなった」(18.3%)を合わせ、関心層が約25%にも上りました。半年間にわたり12の中核都市について「移住と暮らし」という視点からさまざまな都市の実態をお伝えしていますが、地方都市への移住を考える上で参考にしていただければと思います。7回目は北海道の「札幌市」です。

住民にとって住み続けたい、住みたい生活環境が魅力

東京・大阪・神奈川・埼玉に次いでコロナウイルス感染者が多い北海道ですが、6月1日からのテイクアウトやデリバリーを対象とした「札幌市飲食店未来応援クラウドファンディング」第1弾では、362店舗が参加し、9,424万円の支援が集まりました。7月1日からは第2弾が市内の全飲食店を対象に始まっています。札幌市が食事券に付与される30%のプレミアム分とクラウドファンディング手数料を負担するため、参加飲食店は負担なく参加することができるものです。

さて、第7回で取り上げる札幌市を抱えた北海道は、ふるさと回帰支援センターの「移住希望地ランキング」で2018年の3位から2019年には4位へと順位を下げていますが、すべての年代で5位以内をキープ。一方で、全国のビジネスパーソンを対象に「生活の利便性」、「生活のインフラ」など8分野で調査した日経BP総合研究所の「住みよい街2019」では、「街の活力」分野の評価が高く、札幌市は全国341自治体で21位、北海道・東北エリアでは1位でした。

日本最大の面積の北海道は人口密度が最も低く、住民1人当たりの都市公園面積は全国1位と他都府県にはないゆとりのある空間が魅力です。南西部にある札幌市は日本で5番目となる約197万人の人口を誇りますが、多くの企業や商業ビルが集まる街並みは美しく整備され、市内中心部も緑豊かな大都市。地下鉄やJRなど公共交通機関が整備されているため、市民の9割以上が「ずっと住み続けたい」と答えるなどハイレベルな生活環境が魅力です。

札幌市は日本海型気候に属しており、梅雨もなく、台風の接近もほとんどないので、降水量が少なく、さわやかな気候といえます。1981年から2010年までの平均気温は下表のように8.9度で、2019年は9.8度と上がってきていますが、30℃を超える日は数日のみです。年間6mほど雪が降りますので、日射量の年平均値は 12.1MJ/㎡ ・日であるほか、日照時間の年間合計値は 1,740.4時間で、他の主要都市と比べても短くなっています。

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(出典:気象庁資料を基に筆者作成)

札幌駅から電車で最速36分の距離にある新千歳空港から東京までは飛行機で約1時間30分。札幌市内はJRと地下鉄が各3路線ずつ走るなど公共交通が発達しているほか、市内を一周する市電やバス、道路網も充実し、市内を始め道内の移動もスムーズな交通環境にあります。また、混雑率も関東圏に比べて71%も低く(2015年)、通勤にかかる時間も30分以上短いことからストレスも少ないほか、平均帰宅時間も1時間早いといいます。

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(出典:国土交通省調査より筆者作成)

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(出典:国土交通省調査より筆者作成)

ホテル需要や再開発への期待で商業地は7年連続上昇

3月に国土交通省から発表された札幌市の商業地は前年比10.2%の7年連続で上昇でした。中央区を中心に複数の地点で20%以上の伸びとなっており、訪日外国人旅行者の増加を背景に大通り公園やすすきの地区などでホテルや飲食施設の需要が拡大していることに加え、北海道新幹線のホームが設置される札幌駅の東側の地区で再開発への期待から需要が高まっていることが伸びにつながったと推察されます。

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(出典:国土交通省資料より筆者作成) ※カッコ内は前年実績

札幌の街の中央を横断する大通付近には大きな公園も点在しており、都心の利便性と自然、文化がほどよく調和した居心地の良さが魅力です。ファミリータイプの賃貸物件の数が充実している都市ですが、家賃や物価は東京都心部の半分以下で、地下鉄やJRの駅から徒歩圏内にも多くの物件がそろうため、通学や通勤には便利。再開発が進んでさらに便利になる札幌駅周辺や落ち着いた住宅街が広がる「円山公園」周辺は人気です。

また、市内総生産は名目6兆7301億円(平成28年)、実質6兆5907億円で、名目は4年連続、実質は2年連続のプラスです。札幌市の事業所数は約7万8千、従業員数は約84万人で、事業所数、従業員数ともに全国の市町村ランキング6位で、従業者1~4人が全体の約54%と半数以上を、事業所規模9人以下の事業所が、全体の約4分の3を占めています。全国に比べ製造業などの二次産業の割合が低く、三次産業が中心です。

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(出典:「平成28年経済センサス」より筆者作成)

札幌市では、「誰もが安心して暮らし生涯現役として輝き続ける街」と「世界都市としての魅力と活力を創造し続ける街」の2つのまちづくりの実現に向け、「アクションプラン2019」の取り組みのうち、都市の強靭化や健康寿命の延伸、女性活躍の応援や子どもの見守り体制などの更なる拡充を図るほか、産業人材の育成や観光施策など経済の活性化や世界都市としての魅力づくりなどを積極的に盛り込んでいます。

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(出典:「札幌市令和2年度予算の概要」を基に筆者作成)

札幌市では、健康寿命が政令指定都市の中でも低いことを課題視しているほか、地域交通衰退も問題となっていることから自然と歩きたくなる環境を築き、市民の健康促進と地域活性化を目指すウォーカブルなまちづくり「ICTにより健康・快適を実現する市民参加型スマートシティ実行計画」を策定しています。GPS、WiFiなどから移動情報を取得してインセンティブとして市民に健康ポイントを付与したり、データを活用して道路や交通計画に活かそうとしています。

子育て環境が充実し生活・居住性の高い健康志向の街

下表のように前年に比べ転入者数が増加(1,156人)し、転入超過数も拡大(1,529人)している札幌市ですが、女性の転入超過数が男性の転入超過数より1,184人多くなっています。転入者が増えるなか、移住者が知りたい生活環境や気候、厳しい冬の過ごし方などの情報は、「移住リーフレット」や「さっぽろ圏移住ガイド」、市のサイトでも公開されています。市内だけでなく、東京でも定期的に「北海道さっぽろ圏移住相談会」が開催されています。

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(出典:総務省統計局の「住民基本台帳人口移動報告」を基に筆者作成)

札幌市には認可保育所が265カ所にあり、待機児童数も0人(2020年)、小学校の放課後児童クラブの待機児童数も0人となっており、子育て環境は充実しているといえます。また、お子さんと一緒に楽しめる子育てサロンも約300カ所に設置されており、無料相談も受け付けています。これらの情報は「さっぽろ子育て情報サイト」にまとめられているほか、市が配信するスマホアプリ「さっぽろ子育てアプリ」で各種の子育て情報の管理も手軽に行えます。

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(出典:札幌市HPより筆者作成)

「北海道女性の活躍支援センター」では、女性相談員がコンシェルジュとなって、起業や就労、仕事、子育て、介護など女性のライフステージに応じたさまざまな相談を受け付けているほか、女性の採用に積極的な企業の紹介やセミナーも開催。こうした子育て支援情報は「北の女性☆元気・活躍・応援サイト」にまとめられています。また、東京にある「札幌UIターン就職センター」では就職だけでなく、住宅・子育て等の相談にも応じています。

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(出典:厚生労働省資料より筆者作成)

札幌市は、人口10万人あたりの病院数・病床数は政令指定都市の中で最も多い都市で、医師数も高い水準にあり、国内でも有数の高度な医療機能が集積されています。24時間365日、市民からの救急医療相談に看護師が対応する電話による相談窓口「救急安心センターさっぽろ」も運営されています。また、同市では、市立札幌病院、北海道大学病院、札幌医科大学附属病院、手稲渓仁会病院、北海道医療センターの5病院の協力を得ながらドクターヘリ、ドクターカーの運用を行っています。

北海道は、「都道府県魅力度ランキング」で10年連続トップ(2018年)ですが、森記念財団都市戦略研究所が経済規模や文化度などを都市力として72都市を対象にした「日本の都市特性評価」によれば、札幌市は総合ランクでは8位なものの、特に交通・アクセス(都市内交通)では堂々の1位、文化・交流(ソフト資源)は2位。生活・居住(安全・安心)において3位と高い評価を得ており、こうした住みやすさが市民からも支持されているのでしょう。

駅周辺や中心部にもにぎわいが生じ、産業人材の育成や観光施策など経済の活性化や世界都市としての魅力づくりなどに同市は積極的に取り組んでいます。次世代を担う若者の起業支援、さらに雇用創出や産業基盤の強化を図るために企業誘致の支援も強化しているので、仕事、ビジネス面からも多様性に対する許容度が高い札幌市は、地方都市への移住を考える上で有力な候補地の一つといえるのではないでしょうか。

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