【地方都市の魅力】長野県松本市 自然・居住環境や文化的な魅力持つ健康寿命延伸都市
亀和田 俊明
2021/04/01 (木) - 07:00

県外の訪問者、出身者の移住や訪問、地域貢献につながる意識などを数値化したブランド総合研究所の「関係人口の意識調査」において、最も「関係人口」が多かったのは福島県で1229万人、居住人口の6.8倍だったといいます。以下、南の沖縄県が2位、北の北海道が3位と続き、長野県は313万人で10位でした。昨年4月から政令指定都市や中核都市について「移住と暮らし」という視点からさまざまな都市の魅力と実態をお伝えしてきていますが、今回は長野県「松本市」です。地方都市への移住を考える上で参考にしていただければと思います。

2020年の転入超過数369人は長野県内19市で最多に

新型コロナウイルス感染症が広がった昨年4月以降、東京から長野県への転入超過は6ヵ月連続となりました。なかでも顕著なのが、松本市です。2020年の人口移動調査によれば、松本市では転入者が転出者を369人上回っており、県内19市の中で転入超過数は最多でした。同市では、2019年4月に移住・定住の総合相談窓口として「まつもと暮らし応援課」が新設され、情報発信や動画開設などSNSの本格運用をはじめ、市の魅力を積極的に発信しています。

さて、松本市を抱える長野県は、2020年のふるさと回帰支援センターの「移住希望地域ランキング」の窓口相談者では3位、20歳代以下から60代まで各世代で5位以内にランクインし、セミナー参加者でも5位でした。まち暮らしも里山暮らしも同時にかなえる魅力があります。長野県は安心して子どもを産み、育てられるよう多子世帯の保育料を減免。女性の就業率全国 2位や高齢者就業率は日本一(2015年)など誰にでも居場所がある県づくりを進めています。

松本市は、長野県のほぼ中央に位置する県内2位の人口約24万人の都市。北アルプス、上高地、美ヶ原など雄大な自然を有する一方、古くは信濃国府が置かれ、現在でも国宝松本城を中心とした城下町の風情を残す町並みや快適な都市機能を有するバランスの取れた街です。市街地は自転車で一周できるほどコンパクトですが、県内最大の面積を誇るので、エリアによって多様な表情や魅力を見せる都市でもあります。

夏は東京や大阪などに比べ気温が低く、湿度も低いため、カラッとしています。冬は冷え込むものの、四季がはっきりしているだけに、季節感を感じられます。平年の積雪量は20~30cm程度と多くなく、雪が長期間残ることはありません。年間の日照時間の合計値は2097.5時間と日照量も多く、年間の降雨量も1031時間と少ないため、過ごしやすい気候です。1981年から2010年までの平均気温は下表のように11.8度で、2020年は13.1度と上がってきています。

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県内唯一の「信州まつもと空港」は松本市中心部から南西約9kmにあります。長野県が設置・管理する地方空港ですが、定期便は国内線のみで、国際線は就航していません。日本の空港で最も標高の高い657.5mに位置し、長さ2,000mの滑走路1本ですが、国内線はフジドリームエアラインズが、新千歳や福岡などに就航し、いずれも約1時間半の搭乗時間です。日本航空は大阪へ夏季便を運行しています。2019年度は、利用者数は増加傾向にありました。

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東京・新宿まではJR中央東線で約2時間半、名古屋まではJR中央西線で約2時間の距離です。松本市内を走る鉄道はJR3路線とアルピコ交通です。バスは市街地循環バスやコミュニティバス、市営バスが運行。車を主な移動手段とする家庭も多く、自動車渋滞の緩和や交通事故のリスク回避、自動車に過度に依存する暮らしを見直すパークアンドライド事業も導入されています。なお、車で東京まで約220㎞、名古屋まで約200㎞の距離にあります。

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基本構想2030のキャッチは「豊かさと幸せに 挑み続ける 三ガク都」

2021年3月に国土交通省から発表された長野県の公示地価は、住宅地で前年よ0.4%下落、商業地でも1.1%の下落でした。松本市も商業地の平均変動率はマイナス0.7%、と3年ぶりに下落に転じました。数年前から回復傾向にありましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により観光客の減少や消費の低迷などの影響が出た結果と思われます。一方で、住宅地は5年連続で上昇をみせています。

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また、松本市の事業所数は約1万3千、従業員数は約12万人で、いずれも長野県では長野市に次いで2位で、同市在住の男性は製造業、女性は医療・福祉に従事している人が突出して多くなっています。従業員数では第3次産業が約75%と多くを占めていますが、事業所数も従業員数も「卸売業・小売業」が最も多く、次いで事業所数では宿泊業・飲食サービス業、従業員数は、「医療・福祉」、「製造業」の順となっています。

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松本市は、魅力あるまち、選ばれるまち、住み続けたいまちであり続けるために、「基本構想2020・第10次基本計画」において、「健康寿命延伸都市」を将来の都市像に掲げ、6つの基本目標への取り組みを軸に予算編成を行ってきました。令和3年度予算においては、重点的に取り組むべき事業を下表のように「子育て・教育」「交通・まちづくり」「産業・経済」「防災・SDGs」「市役所・住民自治」の5つの分野に整理して予算計上されています。

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また、新たな「基本構想2030」では、「豊かさと幸せに挑み続ける三ガク都」をキャッチフレーズに、基本理念として、三ガク都に象徴される松本らしさを「シンカ」(進化・深化)させるとしています。三ガク都とは、上高地や美ヶ原に代表される「岳都」、セイジ・オザワ松本フェスティバルやスズキ・メソードを育んできた「楽都」、旧開智小学校など古くから教育を重視してきた土地柄である「学都」のことですが、これら松本の地域特性を最大限に活かした循環型社会の実現、そして、一人ひとりが豊かさと幸せを実感できるまちを目指す行動目標が示されています。なお、都市政策やデジタル化を一気に進める有用な制度として「スーパーシティ構想」を捉え、「国家戦略特別区域」への申請に向けた準備も進められています。

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(出典・松本市)

働く女性や子育て支援も充実した有数の住みやすい街

松本市は、2001年から2009年まで転出超過で推移していましたが、近年は転入転出が均衡し、2018年からはプラスに転じ、以降は転入超過が続いています。2020年は転入者、転出者ともに減少したものの、例年に比べて転出者が少なかったことから、下表のように近年にない369人の転入超過となっています。この要因としては、コロナ禍で今まで以上に地方への移住に関心が高まっていることも影響しているといえるでしょう。

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同市の基本情報や移住者の体験談等を掲載したパンフレット「信州松本 Life Style Book」は、市のホームページからダウンロードできます。首都圏をはじめとする県外から移住を考えている方の総合相談窓口は、前述の「まつもと暮らし応援課」内に設けているほか、東京・有楽町には「松本暮らし応援ブース」を設置。東京や名古屋、大阪などで移住セミナーも開催しています。なお、同課では移住に関する情報をLINEやYouTube、Instagramなどで発信。

松本で少し暮らしてみたいとき、移住先を探してみたいとき、移住の先輩に話を聞きたいときに活用できるよう同市では、市内にUIJターンした人が営むゲストハウスと連携し、移住希望者向けの「お試し滞在宿泊プラン」も紹介しているほか、移住定住希望者のための短期限定住宅の紹介も。また、2020年度は「UIJターン就業・創業移住支援事業補助金」も交付しています。

松本市での子育て支援や相談窓口についての情報は、「2020松本市子育てガイドブック」や特にお産に関する情報を詳しく掲載している「松本地域 出産・子育て安心情報Webサイト」などで閲覧可能ですし、父親向けの情報を集めた「パパノート」も充実しています。市内4ヵ所に設置された子育て支援センター「こどもプラザ」は遊び場としてだけでなく、保護者同士の交流や子育ての悩みを保育士や看護師に相談したりする場所としても市民に重宝されています。

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女性の就業率全国2位(2015年)を誇る長野県では、働く女性に向けた支援が充実しています。女性の就業支援情報サイト「ナガママ」では就職支援情報や社会復帰の第一歩として利用できるインターンシップ受け入れ企業を紹介しているほか、女性就業支援員が配置され市と連携して子育て支援センター等に出向いての就業相談も行われています。松本市には子育てしながら働くことを希望する女性のハローワーク「マザーズコーナー」の窓口も。

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夜間および休日等の診察に対応する急患センターは、2005年に開設された松本市小児科・内科夜間急病センターがあります。判断に迷ったときは、小児救急電話相談や子どもの救急ホームページ、お子さんが急病になったとき等を活用しましょう。最寄りの医療機関を探すには、県が運営する「ながの医療情報Net」が便利です。市内の救急指定病院は、松本市立病院やまつもと医療センターなど10病院で、ドクターヘリは信州大学医学部附属病院を基地病院に運航。

森記念財団都市戦略研究所が経済規模や文化度などを都市力として109都市を対象にした「日本の都市特性評価2020」によれば、松本市は10位です。環境分野ではCO²排出量の少なさや自然環境の満足度などが高い評価を受け1位。生活・居住分野も「健康・医療」における平均寿命・健康寿命や「居住環境」における住宅のバリアフリー化率で高評価を得て4位、文化・交流分野で15位、経済ビジネス分野でも27位と有数の住みやすい街といえるでしょう。

松本市には恵まれた自然環境と優れた居住環境に加え国宝松本城や国宝旧開智学校など歴史や文化的な魅力もあふれています。近年、東京圏からの移住者が増えていることでも分かるように、相談窓口やさまざまな移住支援も充実しています。多様性への寛容度が高く、地域コミュニティでも受け入れる風土があるなど移住者にも優しく、自然がある静かな環境で仕事ができるほか、治安の良さなど安心して暮らせる要素も揃っています。また、現在「スーパーシティ構想」を掲げ、「国家戦略特別区域」への申請に向けた準備も進められていますが、都市の利便性を享受できる上に自然環境が共存した暮らしやすい松本市は、地方都市への移住を考える上で有力な候補地の一つといえるのではないでしょうか。

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