【地方都市の魅力】大分県・大分市 自然と都市が共存した環境を有する東九州の未来創造都市
亀和田 俊明
2021/08/27 (金) - 20:20

このほど発表された森記念財団都市戦略研究所が経済規模や文化度などを都市力として138都市を対象にした「日本の都市特性評価2021」によれば、1位は経済・ビジネス分野での高評価に加え、電子自治体推進度が1位になるなど大阪市が初めてトップに。2位に京都市、3位に福岡市と続いています。6位以下には過去に取り上げた神戸市、仙台市、金沢市、松本市、札幌市がトップ10にランクインしています。昨年4月から政令指定都市や中核都市について「移住と暮らし」という視点からさまざまな都市の魅力と実態をお伝えしてきていますが、今回は大分県「大分市」です。地方都市への移住を考える上で参考にしていただければと思います。

2020年の「都道府県『幸福度』ランキング」で全国3位

8月18日から大分市の野津原地区を舞台に周遊型のアートイベント「のつはるアートコレクション」が始まっています。人口減少や少子高齢化が進む周辺地域にアーティストを呼び込み、アートイベントや制作活動を通して文化芸術の振興や地域活性化を図る同市の「アートレジオン推進事業」の一環で、県内で活躍する6人のアーティストが、壁画やオブジェ、ARなどの作品を神社や道の駅、廃校などに展示し、9月20日まで開催されます。アートで地域を元気にしようとする大分市では、地域おこし協力隊のアート部門の募集も12月まで行われています。

さて、大分市を抱える大分県は、ふるさと回帰支援センターの「移住希望地域ランキング」では、2016年には7位にランクインするなど常に10位前後で推移する移住者にとって根強い人気のある県です。移住希望地として評価される大分県は、各都道府県の住民へのアンケートによって「幸福度」を明らかにしたブランド総合研究所の2020年の「都道府県『幸福度』ランキング」では宮崎県、沖縄県に次いで3位でした。

日本一の源泉量・湧出量を誇り、温泉大国として知られる大分県。同県の扇状県域の要に当たり、九州でも有数の広い市域を有する約47万人が暮らす県庁所在地の大分市は、東九州経済の中心地であり、「九州の東の玄関口」です。周辺部には高崎山などの山々の豊かな緑に囲まれ、市域の半分を森林が占めていますが、一級河川の大野川と大分川が南北に貫流しながら別府湾に注ぎ、東部沿岸は天然の良港として豊予海峡に面しています。

大分市は瀬戸内海式気候に属し年間を通して温暖で自然条件に恵まれた地域です。降雨量は1727.0mmで少ないほうで、年間の日照時間の合計値は1992.4時間です。周囲に600~800m級の山々が連なり、内陸部への入り口に当たるため、内陸性気候に属し、平地より気温が若干低くなります。1991年から2020年までの平均気温は下表のように16.8度で、2020年は17.4度と上がってきています。

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東九州自動車道や大分自動車道が整備され、高速交通網の基点になっているほか、豊後水道を経由して内外に通じる海上交通の発達と相まって東九州における拠点都市です。県外へは飛行機、鉄道、高速バスに加え、フェリーも利用可能で、九州各都市はもちろん、関西・四国方面へのアクセスの良さが魅力。国東市にある大分空港までは市内からリムジンバスで約1時間、羽田空港までは約1時間半の搭乗時間です。

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大分市内の公共交通機関はJR日豊本線・久大本線・豊肥本線の鉄道3線と路線バスです。路線バスは、市内で多く運行する大分バスと市以北の街と大分市を結ぶ大分交通があるほか、ワンコイン100円でJR大分駅からまちなかを通り、県立美術館、市美術館などを経由する循環バス「大分きゃんバス」も運行。なお、交通が不便な地域から最寄りの路線バスの停留所までを結ぶ登録制・予約制の乗合タクシー「ふれあい交通」が市内29ルートで運行されています。

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市民主体のまちづくりなど6項目掲げ各種施策を推進

2021年3月に国土交通省から発表された大分県の公示地価は、住宅地は0.6%と4年連続の上昇でしたが、上昇率は昨年の1.3%から半減して鈍化、商業地はマイナス0.4%と4年ぶりに下落に転じており、県内は大分市を除いて下落地点が増加。県全体を牽引していた大分市もプラスを維持しているものの、新型コロナウイルス感染症の影響により市場が停滞して住宅地も商業地も減少しています。

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大分市の事業所数は約2万、従業員数は約21万人で、いずれも九州圏では5位。2015年の国勢調査によれば、全就業者数の内訳では、第一次産業が1.4%、第二次産業が35.1%。第三次産業が63.4%でしたが、他地域と比べ第二次産業の割合が高くなっているのが特徴。従業員数では、「製造業」が最も多く、「卸売業・小売業」、「医療・福祉」、「建設業」の順で、有数の産業都市であることが分かります。

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大分市は新型コロナウイルス感染症への対応として、56事業に48億円が充てられているほか、下表のように重点政策項目である「3つの創造」に予算が計上されています。「誰もが安心して笑顔で暮らせる社会の創造」では防災力の向上、地域医療体制や子育て支援の充実、「産業力の強化による活力の創造」では中小企業の経営基盤の強化や企業立地の推進、「次なる時代を見据えた新たな魅力の創造」では、中心市街地魅力の進展や地域の活力の維持・増進等です。

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また、同市のまちづくりを総合的かつ計画的に進めるため、市政運営の基本方針として「総合計画」が定められています。同計画は、まちづくりの最も基本的な指針として、めざすまちの姿(都市像)と、それを実現するために行う必要がある対策(基本的な政策)を定める「基本構想」と「基本構想」を実現するための具体的な政策・施策の関係を体系的に示すとともに、個別の施策項目の内容を明らかにする「基本計画」によって構成されています。計画の基本姿勢として、「市民主体のまちづくり」など6項目が掲げられています。

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(出典:「おおいた創造ビジョン2024第二次基本計画」概要版より)

医療提供体制などが充実し、生活居住性の評価高い都市

総務省の「住民基本台帳人口移動報告」によれば、2020年の大分県は前年よりは減少しているものの、2233人の転出超過になっていますが、大分市の社会動態をみると、下表のように2018年を除いて2015年以降は転入者が転出者を上回る転入超過が続いており、2020年も597人の転入超過で、今後もその傾向が続くと予想されています。なお、移住については、東京では有楽町「ふるさと回帰支援センター」内の「おおいた暮らし相談窓口」にて相談が可能なほか、同市でも移住担当窓口を設置し、「おおいた魅力発信局」が担当。

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大分市への移住希望者には移住支援や住みやすさなどの情報を広範に提供する「“ちょうどイイがみつかるまち”大分市移住応援サイト」が開設され、県外で開催される移住相談会等のイベント日程や各種の役立つ情報を随時更新し、常に新しい情報を届けています。同市は県外から市内へ転入する移住者に向け、住宅の新築・購入・賃貸・引っ越し費用の補助を行っており、「大分市住み替え情報バンク」では、市内の空き家や空き地の情報を提供。

大分市の子育て支援サイト「naana」では、子育てに役立つ情報を掲載。子育て中の親子が交流できる「こどもルーム」は市内に11ヵ所設置されているほか、子どもの一時預かりや保育園のお迎えなどを依頼できる「おおいた子育てファミリー・サポート・センター」制度もあります。また、子どもが生まれた家庭に子育て支援サービスに使える「おおいた子育てほっとクーポン」(子ども1人につき10,000円分)を配布。

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「アイネス(大分県消費生活・男女共同参画プラザ)」では、結婚や育児などで退職した女性が再就職するための相談を受け付け、面接や就業講習に参加する際の一時託児サービスも提供しているほか、結婚や出産などのライフステージで希望する働き方が変化する女性を応援するサイト「おおいた働きたい女性応援サイト」では、働く女性を応援する企業の紹介やセミナーの開催など大分県、大分労働局が協力して働きたい女性の就業をサポートしています。fig9.png (6 KB)

病床数や病院数など医療提供体制が充実する大分市では、救命救急センターは大分県立病院とアルメイダ病院に整備され、ドクターヘリは隣接する由布市の大分大学医学部附属病院から運航し、県全域を20分以内でカバー。県内の医療機関・薬局や医療に関する情報を提供する「おおいた医療情報ほっとネット」は、留学生数2位の大分県ならではの多言語サービスに対応。なお、症状が急変しやすい子どものために小児救急ハンドブックが配布されています。

大分市は、森記念財団都市戦略研究所が経済規模や文化度などを都市力として138都市を対象にした「日本の都市特性評価2021」によれば、総合ランキングでは59位でしたが、豊かな自然環境に恵まれていることから自然環境の満足度が高い環境分野では27位でした。また、住宅コストや物価水準の低さから生活の余裕度が高く、刑法犯認知件数の少なさから安全・安心で、健康寿命などが高い生活居住分野では42位、文化交流分野では57位でした。

大分市は自然豊かな地域ではありますが、中心部においては高度経済成長期に新産業都市として重化学工業を中心に発展を遂げ、近年ではIT関連企業をはじめ、さまざまな産業が集積するなど都市的発展も進んでいることから、自然に囲まれた土地でありながらも都市機能が充実した生活するにはとても便利な地域となってきています。一日あたりの通勤時間は57分と東京に比べ20分程度短く、一般病院数も大都市に比べ多いなど暮らしやすい生活環境が整っていることから移住者ターゲットである子育て世代にとって暮らしやすい大分市は、地方都市への移住を考える上で有力な候補地の一つといえるのではないでしょうか。

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