移住推進後発の西条市を「住みたい田舎第1位」に押し上げた秘策とは
GLOCAL MISSION Times 編集部
2021/09/30 (木) - 12:00

愛媛県西条市。南は石鎚山、北は瀬戸内海という自然に囲まれた人口11万人のこの街は、宝島社の月刊誌『田舎暮らしの本』2月号で発表された「住みたい田舎ランキング」の大きな市ランキングで、総合・若者世代・子育て世代・シニア世代の全部門で第一を獲得しました。

西条市が本格的に移住施策に取り組み始めたのは、2018年度。全国的にみても後発組であったにもかかわらず、どのようにして、ここまで人気の市に押し上げたのでしょうか。西条市移住推進課の柏木潤弥さんと篠原彩さんにこれまでの取り組みを伺いました。

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西条市の魅力をPRする市の職員たちが発案した秘策とは

西条市移住推進課の柏木潤弥さんと篠原彩さんは、移住推進課が発足する直前からのコンビ。お二人は平成2018年(平成30年) から移住に特化した業務を任され、2019年(平成31年)4月に、4名の職員による移住推進課が発足。移住者の拡大を目指すことになりました。

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西条市移住推進課の柏木 潤弥さん

―西条市の魅力はどんなところにありますか?

西日本の最高峰・石鎚山を擁する西条市は水が豊富で、市内のあちこちからは「うちぬき」と呼ばれる地下水が湧き出ます。市内中心部のほとんどの家庭で蛇口をひねれば、このうちぬき水が味わえ、エリアによっては水道代無料のところもあります。

豊富な水資源があるからこそ、瀬戸内海に面した海岸地帯には、四国で最大規模の工業地帯が発達し、大手の半導体メーカーや化学メーカーなどの工場が並んでいます。そして、それらを支える中小企業も集積しているのです。

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西条市総合文化会館横の水汲み場。「うちぬき水」の湧き出るところは市内でなんと3000ヶ所以上。

―西条市は教育への支援にも力を入れていると聞きます。

西条市は日本ICT教育アワードの最優秀賞も受賞しているほど、ICT教育に力を入れている市で、2015年度(平成27年度)からは、西条市内の全ての小・中学校の普通教室等に、電子黒板などを設置する「小中学校ICT教育推進事業」を展開してきました。文部科学省が打ち出しているGIGAスクール構想の取り組みにも力を入れ、2021年(令和3年)からは市内の全校でタブレットを活用した授業がスタートしています。

特にお母さん方は教育熱心ですし、学校のことや病院のことなどトータルで移住するかを判断します。お母さんの気持ちをどうつかむかが大きなポイントだといえます。

―全国各地の移住希望者に西条市の良さをどのように伝えているのですか?

西条市の移住推進課が始めた秘策が、移住者目線にたった体験ツアーです。わたしたちは移住のプロジェクトを任されたとき、あえてモデルをつくらず、自分が移住する立場になった場合を考え、推理しながら、取り組みを考えていきました。

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そこで発案したのが、羽田空港から西条市までの往復の交通費や、宿泊費、食事代など、すべての費用が無料、1泊2日、完全オーダーメイドの「移住体験ツアー」でした。テレビ局の関東ローカルの番組にお願いをして、西条市が無料体験ツアーをやっているよと、告知してもらったところ、予想以上に申し込みがあり、初回から約100組から申し込みが殺到したのです。

このツアーの魅力は名所めぐりではなく、放課後児童クラブの見学や移住者さんが運営しているカフェ、就職を検討している人には企業訪問など、人に会うことに重点を置いたところにあります。ネットワーク作りが大変で、普段から挨拶へ行って、何回も顔を合わせて、私たちの仕事を説明し協力してもらいました。

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―オーダーメイドとは、大変ではないですか?

実は、はじめは若い30代のご夫婦と、5〜6歳のお子さんがいる家族を4〜5組招待しようと思っていたのです。しかし、実際は、単身の方もいれば、新婚さんもいるし、すでにお子さんが小学校へ上がっているような人たちもいました。どうしようかと思案していたとき、ツアーを予定していた日に台風が近づいてきまして。結果的にこれが個別型オリジナルツアーになるきっかけになりました。

四国全体に警報が出たため、体験ツアーを中止することにしたのですが、やめてしまうわけにもいかず、参加が決定していた4組に対し、日程を別々にして、行きたいところもその人たちに合わせて個別に招待することにしたのです。それが好評で、その後も全て個別でやっていくことになりました。

―体験ツアーではどのようなことに気を配っているのですか?

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私たちは当たり前のように西条市に住んでいますが、参加者はそもそも西条市に来たことがないという方が99%。不安に思われている方も多いのです。不安を取り除きながら、実際に生活するイメージをしてもらえるよう心がけています。

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西条市移住推進課の篠原 彩さん

あるご夫婦は体験ツアーから9か月後に、西条市に移住してきました。一貫してサポートしてくれるところが心強かったと言っていただけて。1組1組に向き合って、移住していただくまでサポ―トすることは労力がかかりますが、やっていて良かったと思いました。

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シングルマザーの参加者を担当したことがあります。お子さんと2人で地方へ引っ越してくるというのはハードルがあるはず。そこで、同じように移住してきたシングルマザーの方がホスト役になって、家族で交流していただき、結果的に移住を決めていただけました。この取り組みが移住のきっかけになったことがありがたいと思っています。

―西条市の課題はどんなところにあるのでしょうか。

大きな課題は人口減少。特に若い人、子どもたちの減少が深刻です。移住という言葉の概念の中に、結婚支援や子育ても加えて、移住推進課の中で取り組めないかと考えています。

―最後に、移住転職を考えている読者へのアドバイスをお願いします。

まずは、西条市のいろいろなところを見ていただき、地元の人と触れ合って、この街のことを肌で感じてもらうことが大切だと思います。いろいろ検討した上で、最終的に西条市を選択してもらえたら嬉しいです。

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知らない地方への移住を考える場合、大きなネックになるのが、人脈やネットワークです。そういった不安を払しょくし、移住後のネットワークまでサポートしてきたことが、西条市の魅力の向上につながったといえるのではないでしょうか。

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西条市移住推進課 柏木 潤弥さん 篠原 彩さん

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