地方移住の憧れをちょっとだけ実現。お試し移住の現在を紹介
GLOCAL MISSION Times 編集部
2021/11/08 (月) - 18:00

自然が豊かで、のんびりしていて、そこに住む人々も素朴でやさしく、趣味程度に農産物を作ったりして――。そんな田舎暮らしに憧れる方はたくさんいるでしょう。NPO法人ふるさと回帰支援センターの調査によると、地方移住を希望する首都圏在住者は、推計で309万人にのぼるといわれています。

地方移住の魅力といえば、やはり「豊かな自然」ではないでしょうか。山、川、海などに心が癒やされるのは、若者も高齢者も同じです。

しかし、仕事をリタイアしてセカンドライフを過ごす方はともかく、小さな子どものいる方などは、移住後の生活も考えなければなりません。ちゃんと生計が成り立つかが心配で、移住に踏み切れない方も多いでしょう。そういう方は、まずはお試しで地方移住を体験してみるのもおすすめです。

まずはどこに移住したいかを決める

まずはどこに移住したいかを決める必要があります。もちろん、候補ですので慎重になる必要はありませんが、ある程度の方向性はつけておきましょう。

代表的な移住の目的・理由には次のようなパターンがあります。

・配偶者の地元
・仕事や旅行で好きになった
・現在の職場に通える距離である
・自然環境がいい(海、山、雪など)
・観光地として有名

地方への移住で最もオーソドックスなパターンは、配偶者の地元に引っ越すというものです。地域のことはよくわかっているし、実家の両親と同居すれば、家賃がかからず子どもの面倒も見てくれるかもしれません。

仕事や旅行で訪れた時に気に入ったからという方も多いようです。その時に知り合った地元の方が移住後のお世話をしてくれることも珍しくありません。

「なんとなく耳にしたことがあるから」という理由もあるでしょう。要は、きっかけさえあればどこでもよく、大事なことは、本当にその地方で生活できるかを真剣に考えてみることです。

たとえ訪れたことのある地域でも、そこで暮らすことをイメージして行ってみるのとそうでないのとでは、その土地の見え方はまったく異なります。

公共施設、スーパー、学校、病院など、生活に欠かせない施設のチェックも必須です。希望する地域を見つけたら、そこが本当に自分に合ったところなのかを確認するために、まずは直接行ってみることにしましょう。

移住体験メニューを利用する

移住を検討している地域に行き自分であれこれ見て回るのもいいですが、移住を希望する人のために移住体験メニューが用意されていることもあります。まずは自治体が提供しているものをリサーチしてみましょう。

・ホームページをチェック
地方自治体の多くが都市部からの移住者を迎えるために、さまざまな取り組みを行っています。まずは自治体のホームページを見て、特設サイトはあるか、どんな移住者支援制度があるのかなどをチェックしてください。

自治体によって対応に温度差があるので、ある程度候補地を絞ることができます。

・移住体験ツアーに参加
年に数回、自治体や民間団体などが主体となって、1泊2日または2泊3日で移住体験ツアーが企画されていることがあります。その地域の観光地や地元の人気スポットなどを案内してくれたり、地元の人との交流会を開いたりしてくれます。

料金は自治体によって様々ですが、営利目的で提供するツアーではないので、かなり格安です。また、地元農家と協力して農業体験ツアーなども実施されることがあり、その地域を好きになるきっかけになるかもしれません。

・移住体験住宅
自治体や民間団体などが管理している一軒家や専用の住宅などを最長1週間程度借りて、移住体験をすることができます。住宅は一般的な暮らしさながらに家電や生活備品が用意されており、本当にそこに住んでいるような気持ちになれます。移住体験住宅を拠点に、その地域の環境が自分に合っているかをじっくり確かめられる施設です。

施設は多くの自治体が無料で提供しています。たとえ費用がかかるところでも、消耗品費程度の金額で利用できます。

ワーケーションやデュアルライフで部分的な移住

近年ではリモートワークが普及してきたおかげで、毎日会社に顔を出さなくても働ける時代になってきました。また、フリーランスという会社に縛られない働き方も一般的になりつつあります。

こうした働き方の変化は、仕事の拘束時間を激減させ、生活拠点を地方へ移す大きな動機づけにもなっています。

しかし、仕事や家庭の事情などから、いきなり完全に地方移住をするのは難しいという人もいるでしょう。そういう人たちに提案されているのが、ワーケーションやデュアルライフといった部分的な移住生活です。

・短い休暇でも旅行ができる「ワーケーション」
ワーケーションとは、仕事(work)と休暇(vacation)を組み合わせた造語で、仕事と休暇を両立させたワークスタイルです。例えば観光地や帰省先など、勤務地と離れた場所でリモートワークをしつつ、業務の空き時間を利用して温泉に浸かったり、森林浴でストレス解消をしたりといったリフレッシュができます。

リモートワークさえ可能であれば、休暇の前後日にリモートワークの業務日を設定することで非出勤日を長く取り、観光地などに1週間近く滞在できるようになります。

新型コロナウイルスで影響を受けた観光地の救済政策として、国でも補助を出して進められています。通勤がなく、普段と違った生活環境で仕事ができるので精神衛生面でのメリットがあり、業務日だけは仕事をするにしてもリゾート地に家族を連れていくこともできます。

・第2の生活拠点「デュアルライフ」
平日は都市部で仕事をし、週末は郊外の別荘でゆっくり過ごすのは、かつて富裕層の間で流行したライフスタイルですが、近年はそこまで裕福ではない若者の間にも浸透しつつあるのがデュアルライフ(二拠点生活)です。

以前は高額な別荘を買うしか選択肢はありませんでしたが、現在では住宅の利用方法は多様化しています。例えば、月額で泊まり放題のホテルサブスク、コワーキングスペースのある宿泊施設コリビングといった新しい事業を利用したり、従来の格安物件を賃貸・購入したり、親や親戚などの空き家を相続・譲受したり、今はさまざまな方法で二拠点目をつくることができます。

移動時間と交通費はかかるものの、オンオフの切り替えがしやすく、二拠点目で新しい出会いがあるなど、デュアルライフならではのメリットもあります。

「地方移住の憧れはあるけど、生活のすべてを地方に移すのはちょっと…」と考えている人は、ワーケーションやデュアルライフで部分的に移住生活をしてみるだけでも満喫できるでしょう。

国や自治体の制度・イベントを利用しよう

地方移住はただの流行ではなく、東京一極集中やメンタルヘルス、ワークライフバランスなどの取り組みを推進するために、国や自治体といった公的機関も推進しています。地方移住を検討している人は、手厚い公的支援を活用して移住に挑戦してみるのもいいでしょう。

・地域おこし協力隊
総務省が取り組んでいる移住促進事業です。地方自治体が受け入れ先となって、3年を上限に仕事をしながら移住先に基盤をつくることができます。2021年度から、新たに2週間~3カ月という中期間パターンが加わり、さらに利用しやすくなりました。

・各自治体独自の支援制度
移住をしてきた人や世帯に、各自治体が独自の制度で支援しています。直接現金で支給するところもありますし、定住促進住宅を格安で賃貸できるところもあります。20~30代の若者や子育て世帯だと、さらに支援額を加算する地域もあります。

早朝から終電の時間まで働くことも当たり前の都会生活。2019年の働き方改革をきっかけとした仕事とプライベートの見直しが図られる中、地方への移住は新型コロナウイルスによってさらに後押しされました。

またリモートワークの可能性は、従業員のワークスタイルだけではなく、企業の地方移転も促しています。

ライフスタイルを大きく変える地方移住は大変な部分もありますが、生き方や考え方を変えるチャンスでもあります。多様な選択肢が許されている今こそ挑戦してみてはいかがでしょうか。

(参考)

・ふるさと回帰支援センター「地方移住に関する調査結果公開」
https://www.furusatokaiki.net/topics/pressrelease20211007/

・壮瞥町「地方移住を決めた理由で多いのは?住む場所の選び方とは」
https://www.town.sobetsu.lg.jp/iju/kyo/2021/01/iju-riyuu.html

・室戸市「移住体験住宅 申し込み・ご予約状況確認」
https://inakagurashi.kochi.jp/experience

・ホテルサブスクのおすすめ11選!ホテルに泊まり放題の定額制サービス比較
https://subscription-teacher.com/recommended-hotel-subscription/

・コリビング(Co-living)ってなに?ハマる人続出!コリビングハウスを大紹介
https://share-park.com/column/archives/6779

・日本経済新聞「地方へ3カ月お試し移住 総務省、21年度から枠組み」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE289YX0Y0A221C2000000/?unlock=1

・企業の「脱・東京」は結局進むのか 課題や利点は何だった? 移転企業に聞いた
https://news.yahoo.co.jp/special/corporate-relocation/

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