65歳以上の兼業・副業者に朗報、雇用保険マルチジョブホルダー制度がスタート
GLOCAL MISSION Times 編集部
2021/12/23 (木) - 17:00

2022年1月1日から、雇用保険の一部が変わります。国内の雇用情勢を踏まえ、今までよりも柔軟な保険制度として「雇用保険マルチジョブホルダー制度」がスタートするのです。

この制度が適用されると、65歳以上の労働者はこれまでよりも安心して働くことができるでしょう。しかし新しい制度なので、広く認知されるまでには時間がかかるかもしれません。そこでひと足早く、マルチジョブホルダー制度について重要なポイントを紹介します。

雇用保険マルチジョブホルダー制度とは?

新しい雇用保険マルチジョブホルダー制度では、65歳以上で働いている被雇用者が対象になります。まず概要から紹介すると、これまでは雇用保険への加入要件を満たさなかった労働者にまで、雇用保険の適用が広げられることになったのです。ここから、その詳細について解説しましょう。

これまでの雇用保険制度のデメリット

今までの雇用保険制度では、以下の2つの条件を満たしていることが加入要件でした。

・1週間の所定労働時間が20時間以上であること
・31日以上の雇用見込みがあること(継続して仕事を続けられること)
出典:「雇用保険Q&A」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000140565.html

この条件を満たしていると、自動的に雇用保険に加入することになります。ただし、1人の労働者が1つの雇用先に勤務している場合です。例えばA社とB社を掛け持ち勤務している場合、どちらか単独で週に20時間以上働く必要があります。ABの合計労働時間が20時間を超えていても、雇用保険の対象にはならないのです。

これは兼業や副業をしている人にとっては、非常に不便な制度です。今後複数の仕事を掛け持ちする労働者が増えると、問題が起こることは目に見えています。

雇用保険マルチジョブホルダー制度のポイント

今回の保険制度新設では、複数の事業所で勤務する人に対して、それぞれ単独では20時間に満たなくても、雇用保険が適用されることになります。そのポイントと注意点について確かめておきましょう。

詳しい制度内容

加入要件に関しては、これまでの条件からの変更はありません。今回の制度で変わったのは、1週間に1つの事業所で20時間以上の労働時間が条件だったものが、2つの事業所での労働時間を合計できるようになったことです。

65歳以上の労働者が2つの事業所で働く場合、加入要件を満たした上でハローワークに申請すれば、その日から雇用保険の「マルチ高年齢被保険者」になることができます。

もしも失業した場合には、いくつかの要件はありますが、高年齢求職者給付金として基本手当日額の30日分、もしくは50日分の一時金を受け取ることができます。また高年齢求職者給付金は、どちらか1つの事業所を離職した場合でも受給できます。

出典:「雇用保険マルチジョブホルダー制度を新設します」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000838540.pdf

労働者にとっての注意点

マルチジョブホルダー制度では、ハローワークに申請しないと対象になりません。事業所が手続きをするわけではないので注意が必要です。また、3つ以上の事業所で働いている場合には、そのうちの2つで合計労働時間が20時間以上であれば要件を満たしますが、最低でも1つの事業所で週に5時間以上勤務していなければなりません。

マルチ高年齢被保険者に認定されると、当然雇用保険の納付をすることになります。給付に関しては失業した場合以外にも、育児休業、介護休業、教育訓練が給付金の対象になります。ただし、加入する2つの事業所を、任意で他の事業所に替えることはできず、自分の意思で制度から抜けることもできません。

事業主にとっての注意点

マルチジョブホルダー制度の対象者を雇用する事業所には、労働者の申請手続きに協力する義務があります。この制度を利用する労働者に対して、解雇や労働条件の変更など不利益になるような扱いをすると、法律上で処罰の対象になることもあります。

手続きや給付の流れ

本来なら雇用保険の手続きは、それぞれの事業主が行いますが、マルチジョブホルダー制度では労働者本人が行わなければなりません。手続きに必要な書類は、雇用の事実と所定労働時間が証明できるものです。これらを対象になる2つの事業所に発行してもらう必要があります。

書類が準備できたら、居住地を管轄するハローワークに直接出向いて、雇用保険の資格取得手続きを行います。今の時代で電子申請が認められないのは珍しいことですが、労働者にとってはメリットの大きい制度なので、必ずハローワークで手続きを行いましょう。

これからの社会のニーズに合わせて

65歳以上で本業を退くか、または雇用延長により労働時間が少なくなるなどして、今後はいくつかの仕事を掛け持ちするケースが増えると予想されます。社会全体での働き方も、ここ数年で大きく変わってきました。

その中で労働者に安心感をもたらす、雇用保険マルチジョブホルダー制度が新設されることは、これからの社会にとって大きなプラスになるはずです。高齢になると仕事の種類が限られる上、長時間労働も難しくなるでしょう。そのような状況で雇用保険に加入できるなら、万が一の場合の生活の支えが保証されることになります。

しかしマルチジョブホルダー制度には、直接労働者本人が手続きを行うことなど、まだ解決すべき課題があることも事実です。今後はフリーランスなどの新しい働き方も含めて、より働く側に寄り添った制度の創設が求められるでしょう。

参考

「雇用保険マルチジョブホルダー制度を新設します」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000838540.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000838542.pdf

「雇用保険Q&A」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000140565.html

「65歳以上の兼業・副業者への雇用保険マルチジョブホルダー制度」HR-Get
https://www.shalf.jp/hr-get/2021/11/4491/

「雇用保険マルチジョブホルダー制度が新設されます」ヒューマンプライム
https://humanprime.co.jp/20211005/

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