自治体の革新を支援し、地域間格差のない社会を創る 地方発プラットフォーマーとして全国自治体のDX化を推進
GLOCAL MISSION Times 編集部
2022/02/24 (木) - 13:00

2022年4月、株式会社チェンジとコニカミノルタパブリテック株式会社は、愛媛県に本社拠点を置き、自治体向けDXサービスを提供する合弁会社「株式会社ガバメイツ(以下、ガバメイツ)」を設立する予定です。DXによって自治体職員の業務改善を実現し、行政サービスのレベル向上やコスト削減を支援することで、地域間格差のない社会の実現を目指すのだといいます。ガバメイツはどのような経緯で誕生することになったのでしょうか、

今回は合弁会社設立の背景から今後の展開、展望までを、株式会社ガバメイツ代表取締役就任予定の別府幹雄氏にうかがいました。

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はじめに、どのような思いで新会社設立に至ったのか、その背景と目的についてお聞かせください。

3年ほど前、私はちょうどこの事業(自治体業務のDX化)を始めたばかりで、自治体における業務改革(BPR)を提案できる 公務員経験者や、生産管理の経験のある人材を集めたいと考えていました。

発足当初のメンバーは約10人だったのですが、70人くらいまで増えまして。120自治体の職員約20万人規模のデータも集まり形になってきたのです。

ただ、私たちは政令指定都市や都道府県などの大きな自治体の案件はおさえていたのですが、ほかの自治体を一つひとつ入札しながらやっていこうとしたらキリがありません。

大きな自治体の案件はブランドづくりのために必要だと思いますが、最も重要なのは中小自治体の案件です。これを実現するには、コニカミノルタグループの人材だけでは、カバーしきれません。

その点、チェンジ社のネットワークや人脈、LoGoチャット(自治体専用ビジネスチャット)やLoGoフォーム(行政手続きデジタル化ツール)などと連携することで、人を使わなくてもローコスト、かつ短時間でDXサービスの提供ができると思いました。社内の説得には時間がかかりましたが、チェンジ社と一緒にやることに迷いはありませんでしたね。

コロナ対応等において自治体におけるDX化の遅れが指摘されています。この根本的な課題について、どのようにお考えですか?

よくお金の問題だといわれますが、私は人材の問題だと思っています。

DXはシステムを1回入れて終わるものではありません。システムの標準化などは、今後の環境変化の中で毎年ブラッシュアップしていく必要があります。

これを実行するときに、政令指定都市であれば人材が豊富だし、IT技術に特化して採用した人もいる。でも地方の10万人以下の自治体には、専門職が少ないのです。しかも、税収が減っていく中で、若者の採用人数も絞っていますから、継続的にシステムをブラッシュアップしていく仕組みを定着させるのは難しい。

システムベンダーの助言をそのまま受け入れるのではなく、 自分たちがこうありたいと言うのは不可能に近いと思っています。 

自治体の職員は基本的に2年ごとに異動しますし、DXのできる人材が同じ部署に居続けることは困難です。国も企業版ふるさと納税の仕組みを使ったり、DX人材を派遣したり、資金を出す施策をしたりしていますが、このような単発の施策では我田引水型のDXにしかならないのではないかと思うのです。

本当に必要なのは、自分たちの業務が今はどのような状況で、本来はどうならなくてはいけないのかを考え、どういう方法論のシステムが必要なのかを導き出すプロセスです。そして今こそ、それができるタイミングだと思っています。

ガバメイツは、「誰一人取り残さない自治体サービス」、つまり、場所や規模による自治体間ITリテラシー格差、住民サービス格差を解消することを標ぼうされています。お話いただいたような課題に対して、新会社はどのような効果があると思われますか?

たとえば、国は国民の利便性をあげるためにオンライン申請を推進していますが、大きな都市と高齢者の多い地方都市では、利用者のデジタル需要に違いがあると思います。スマホやパソコンを使わない高齢者が多い地方では、オンライン申請など喜ばれないですよね。またオンライン申請で来たものを、役所内で紙に出力して処理しないといけないとなると職員側が疲弊してしまうんですよ。

オンライン申請ひとつをとっても、それぞれの自治体の人口(年齢)構成に合った、利用者を満足させる方法であるべきだと思うし、また従業員(職員)の満足度から考えた働き方を変えるDXもあると思う。その掛け合わせで、システムのあるべき姿が決まってきます。

すべて個別ではないけれど、これまでに蓄積した120以上の自治体のデータを活かし、デジタルの需要度にあわせてマス・カスタマイゼーション* できることが、私たちの存在価値なのではと思っています。 

*大量生産に近い生産性を保ちつつ、顧客ごとの個別のニーズに対応した付加価値の高い商品やサービスを提供する取り組み

チェンジ社は、官公庁に向けたAI開発の実績や様々なデジタル活用支援、デジタル人材育成を強みにされているとのことですが、あらためてチェンジ社の特徴を教えてください。

私がチェンジさんと組みたいと思った理由は、チェンジさんには良い意味で“色がついていない”ところが魅力的だったからです。

私たちは、さまざまなITの大手企業様と仕事をしていますし、ありがたいことに私たちを担いでくれています。そういった企業様の中に敵をつくるわけにはいかないのです(笑)。

いろいろなところと仕事を推し進めていくためには、色がついていないパートナーが必要です。チェンジさんは多くの自治体とつながりをもち、さまざまなソリューションを持っているのに、すべての企業と等距離でつき合っているのが一番の魅力でした。どことも過度に近づかない、全方位戦略です。

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立上げにあたってヒントにしたことはあるのでしょうか?

ブランドは中央でやるけれど、デリバリーは地元でやることを考えました。つまりデータを取得し分析する部分は私たちがやるけれど、システムのデリバリー(たとえば、データがとれたらRPA(コンピュータによる業務自動化)が入る、OCR(光学文字認識)が入る、という手足の部分)は、地元にお金が落ちるように、地元のベンダーと協業してやっていくのです。それを私たちは地域共創戦略と呼んでいます。私たちは民間企業ではありますが、中立的な立場でこうあるべきといえるスタンスを持つことが重要だと思っています。

「地方発のプラットフォーマー」として愛媛県松山市に本社を構えておられますが、東京ではなくあえて松山に本社を置かれる意図について教えてください。

私たちは、デジタル田園都市構想を自ら体現することを目指しています。愛媛県は平成の大合併が進んでいて、自治体数が20に集約されています。システムの標準化やデータの共同利用の推進を実現するのに愛媛県は成果を出しやすいのです。

また、愛媛県の20自治体の人口規模別の内訳は、50万人:1団体、15万人:1団体、10万人前後:2団体、5-10万人:2団体、1-5万人:10団体、1万人以下:4団体と、人口規模別の内訳が全国の自治体の縮図といえます。

ひとつの自治体を徹底してやったら、あとは横展開するだけです。インプット情報、アウトプット情報が同じ。法令に基づいてやっているわけですからね。

加えて県知事が愛媛県のDX化にコミットしていることも理由の一つです。たまたま、私は愛媛県のDX化について、岸田総理大臣にプレゼンする機会をいただきました。私たちがやりたいことを最初にモデル化できるのは、愛媛県だと思いましたね。

総理へのプレゼンは、新会社設立が決まった後のことですか?

そうです。ですから、縁としか考えられません。

ガバメイツのロゴはオレンジなのですが、実は、松山を本社にすると決める前から色は決まっていました。私が愛媛県庁にいったとき、エレベーターの中に紅マドンナ(愛媛ミカンのブランド)の写真がありまして、それを写真に撮って福留社長に送ったところ、この色がいいということになったのです。

その後、愛媛で総理へのプレゼンが決まったのです。必然的に本社は松山でいいのでは?という話になっていきました。(笑)

真面目な話をすると、チェンジグループとしては地方創生といいながら、東京でのビジネスが中心となっている現状があり、関連会社を地方につくって、本気で地方創生をやるぞというメッセージでもあったのだといいます。 

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自治体DX支援プラットフォームGovmatesの業務内容についてお聞きします。「コニカミノルタパブリテックで培った自治体業務の整流化・標準化の手法、および累計120自治体から取得した業務データに基づき、両社の強みを生かし、業務の『可視化』、『業務分析』、『最適化』、『標準化』の4つのサービスを提供する」とございますが、こちらについて、もう少し具体的にご説明いただけますか?

まず「可視化」について。自治体がいろいろな手を打とうとしても、今、自分達がどのような状況かを把握している自治体はほとんどありません。なぜなら縦割りで仕事をしていて、業務全体を俯瞰する目を持っていないからです。誰がどのような仕事をしていて、どこに負荷がかかっているのか、見えるようにするのが可視化です。

次に「業務分析」。可視化の中で公務員にしかできない仕事と、公務員でなくてもできる仕事を分類します。人材もお金も足りない状況なのですから、公務員は公務員でないとできない仕事に特化するべきですし、そうでない仕事は外注(BPO)や、ロボット(RPA)の導入などと柔軟に考えていくのがDXです。

可視化によって、手をいれるべきポイントが見えてきたら深堀りし、ITの専門家などを入れてロボットのシナリオをつくるところまでが業務分析です。

次に具体的なソリューションの検討です。できたものに対して、RPAやOCRを入れたりするのが、「最適化」のサービスです。

小さな自治体がRPAなどを入れても費用対効果が悪いかもしれませんが、ほかの自治体と共同利用できたら、メリットが生まれる可能性があります。それぞれの自治体の業務フローが揃ったら、共通で負荷のかかる作業をコンポーネント化し、RPAで処理して、データセンターで共同利用するようにすれば、小さな自治体でもメリットが生まれるはずです。

定期的にメンテナンスが必要なデータも、データセンターのものを変えれば済みますし、DX人材難を抱えている中小自治体に対するサービスとして受け入れられると考えています。それが「標準化」です。 

これについては、自治体だけでなく、中小企業にも同様の効果が期待できるのではないでしょうか。

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『自治体の革新を支援し、地域間格差のない社会を創る』というパーパスを掲げられていますが、新会社設立後の中長期的なロードマップについて、どのようなステップで進められていくのかを教えてください。

2022年前半は、愛媛県で徹底して横展開モデルをつくっていこうと考えています。そのためにも、多くの人材を投入します。「愛媛でモデルをつくっていますから、待っていてくださいね!」と5月頃からは全国の自治体に告知し、情報を大々的に伝えていきたいですね。愛媛県における業務フローの標準化に対して、7月にはFit&Gap*を終えるスピード感です。23年度には、圧倒的、ディファクト・スタンダード*化を目指します。

Fit&Gap :パッケージシステムを導入する際に、業務や仕組みとシステムの機能が、どれだけ適合し、どれだけズレがあるかを分析する作業のこと。

ディファクト・スタンダード:公的な標準化機関からの認証ではなく、市場における企業間の競争によって、業界の「事実上の標準」として認められるようになった規格のこと。 

4月の新会社設立に向けて、どのような方に来ていただきたいと思ってらっしゃいますか?

年齢に関係なく、地元に帰って地元に貢献したい人や地元が大好きな人に来ていただきたいと思っています。また、ガバメイツの仕事は、国や自治体のルールに則って進めるものが多いですから、地方銀行など、金融業界の経験がある人や、製造業で生産管理や品質管理の仕事をしていた人の方が、業務を理解しやすいと思います。地方自治体に関わる仕事は、故郷のいいところを再発見できるとても良い機会になりますから、気持ちを持って入社していただけけると嬉しいですね。

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