リカレント教育の真価とは/働き方の最前線
月刊事業構想 別冊「ポスト平成の働き方」/監修 (株)日本人材機構
月刊事業構想 編集部
2018/01/18 (木) - 18:00

多様なサービスを活用し、まずはキャリア自律を人生100年時代を迎え、リカレント教育への関心が高まっている。社会人が大学院に入学したり、オンライン教育サービスで学ぶことは今や珍しいことではない。大切なのは「何のために学ぶか」だ。

職業寿命が伸びる一方、スキル賞味期限は短くなる

社会人の学び直し、すなわち「リカレント教育」のニーズが拡大している。共同通信と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によれば、書籍や各種スクール、社会人大学院などの「自己啓発」に関する国内市場規模は、2016年で推計9,049億円。これは1989年の約3倍の規模だ。企業の社内研修だけでは飽き足らなくなった社会人は、キャリアアップを目指し、自ら費用負担してスクールやセミナー、大学院に通うようになっている。

なぜ、これほどリカレント教育が求められるようになったのか。背景には社会人を取り巻く環境の変化がある。

これまで多くの人の人生は、教育(学校)、仕事(会社)、引退後の余暇という3つのステージで構成されていた。しかし、日本人の長寿化、いわゆる「人生100年時代」の到来によって、生きることと働くことはほぼ一体化していく。これにより、社会に出てから引退するまでの職業寿命は平均50年に伸びると指摘されている。

この状況に、IoTやAIの進化による「第4次産業革命」が追い打ちをかける。テクノロジーの進化によって生産性や事業スピードが高まると共に、スキルの陳腐化は加速。人が機械に負けず付加価値を発揮し続けるためには、知識とスキルのアップデートや、新しい知識とスキルの獲得が不可欠だ。

リカレント教育の現状

ジョブ型雇用が定着しているアメリカでは、労働者の63%が、過去1年間に職務スキルや専門知識の向上のために何らかの研修や教育を受けている(Pew Research Centerの調査)。
 
では、日本の社会人の「学び」に対する意識はどうなのか。内閣府が2018年8月に公表した『生涯学習に関する世論調査』(18歳以上の日本人が対象、有効回収数1,710人)では、「過去1年で何らかの学習をしたことがある」と答えた人は58.4%にのぼる。学習の目的は「教養を深めるため」(37.1%)が最多だが、「仕事において必要性を感じた」(32.7%)、「新しく就職したり、転職したりするために必要性を感じた」(10.6%)といったキャリア形成が目的の学習も多い。

また、社会人となった後に大学や専門学校で学習したことがある(学んでいる)人は、正規過程で9.9%、公開講座や履修証明プログラムなどの短期講座で9.4%に達した。
 
ただし、生涯学習をしたことがない理由として「仕事が忙しくて時間がない」(33.4%)や「きっかけがつかめない」(15.8%)、「家事・育児・介護等が忙しくて時間がない」(15.0%)という声も多い。学びたくても仕事や家庭と両立できない、そもそも何を学べばいいのかわからないという課題を、多くの社会人が抱えているのだ。

「何を学ぶか」が大切に

リカレント教育の提供者として真っ先に挙げられるのは大学院や大学などの教育機関だが、民間企業も拡大する市場を狙ってさまざまなサービスを投入している。スマートフォンで隙間時間に受講できるようなオンライン学習プログラムも充実してきており、学びと仕事の両立については、徐々にハードルが下がってきている。
 
一方で多くの社会人にとっての悩みは、内閣府の調査にも表れているように、スキルを身につける前段階として「どう生きるか」「何を学ぶのか」を考えることだ。キャリア意識やマインドセットを形成するためには、今までと違う環境に立ち、自分の経験や能力を発揮してみることが重要である。このため、兼業・副業やプロボノ、他社留学などの機会を提供するサービスもある種の「リカレント教育」として人気を集めている。
 
ポスト平成時代を生き抜くためには自発的な学び直しが不可欠だが、その前に「どう生きるか」を決めなければ、価値ある学び直しはできない。ビジネスパーソンには一刻も早くキャリア自律に向けた行動が求められる。

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