「地方企業の経営者と伴走する」ために必要な資質とは?
GLOCAL MISSION Times 編集部
2017/10/30 (月) - 08:00

地方の経営者に寄り添い、幹部社員、従業員とともに経営課題の整理・解決に取り組む「伴走コンサルティングサービス」。今回は、創生事業本部マネージャーの田部井智行より、当サービスの経験を通して見えてきたコンサルとしての資質や要点についてお伝えします。今後、地方転職を考えている方々に、ぜひ参考にしていただければと思います。

自分自身の「覚悟」無くして伴走サービスは成り立たない

私の日本人材機構(以下、当社)における現在の業務は、大きく分けて3つあります。
ひとつ目は、地域金融機関の本部や営業部門の方々とともに、地域金融機関の取引先企業の経営課題、特に人材における経営課題のソリューションを一緒に考え、提案するアドバイサリー業務です。
ふたつ目は、歴史的建造物の再生を切り口に地域活性化を進めている急成長企業の成長戦略や経営課題のアドバイザリー業務です。今後は、各地域のプロジェクト単位での地域活性化プロジェクトのマネジメント業務にも派生していく可能性があります。
そして、最後の一つは、対象となる地方企業に、多い月では10日間程度常駐し、地方の経営者に寄り添いつつ、幹部社員、従業員とともに経営課題を整理し、課題解決に取り組み、会社の変革を進めていく業務、いわゆる「地方企業の経営者との伴走コンサルティングサービス」(以下、伴走サービス)になります。
上記の3つの業務は、どの業務においても、当社としては、数名単位のチームで取り組んでいる案件ではありますが、3つ目の伴走サービスは、自分自身が地方企業に常駐し、その会社において、ある時は経営者、ある時は幹部社員、ある時は一般社員の目線で業務に取り組むという非常に責任が重い業務でもありますし、ヤリガイのある業務になります。
約半年間にわたる伴走サービスの経験を通して、自分なりに伴走サービスに必要な資質とは何か?自分なりに心掛けていることは何か?を、この機会に振り返り、まとめてみたいと思います。その資質や心掛けは、今後、首都圏から地方企業に転職を考えている方々にも参考になるのではないかと思います。
まず、最初に大切なことは、自分自身の「覚悟」です。「腹を括る」とも言うのかもしれません。伴走サービスとは、地方企業に単身で乗り込み、その会社の経営課題や強み弱みを見極め、成長戦略を立案し、経営課題に優先順位をつけ、PDCAを回してく。。。と言葉にすれば、そのようなサービスになるのかもしれませんが、戦略立案うんぬん以前に、伴走サービスを契約して頂いた地方企業の社長の本音に迫り、社長に対して、本気で会社を変えるという「覚悟」の確認、会社を変革するためには、社長にも痛みが伴う、耳が痛い提案も受け入れて頂ける「覚悟」の確認をする事が非常に重要であり、その「覚悟」の確認の儀式無くして伴走サービスは成り立たないと思っています。その「覚悟」を社長に求めるという事は、自分自身の本気度、「覚悟」が必要なのです。

先入観を持たない「現場感覚」が、リアルな経営課題の見極めを可能にする

次に必要な資質は、地方企業に常駐を開始する時点で、先入観を持たない徹底的な「現場感覚」だと思います。当社は、伴走サービス実施前に、対象となる地方企業についての成長戦略や経営課題の仮設を立て、検証を行います。具体的には、外部調査会社、国勢調査、シンクタンク等々のデータや、状況によっては、取引先金融機関からも資料を提供頂き、ディスカッションを重ね、事前に対象企業の理解を深めます。その仮説検証結果を踏まえつつ、対象企業に常駐を開始した直後に実施することは、本社、工場、店舗等の店舗視察に加えて、社長を皮切りに経営陣、幹部社員、一般社員とのインタビューになります。
伴走サービスの開始時点では、社長や契約担当窓口となる役員の話、取引先銀行の意見や問題意識を念頭に置いて面談を実施していきますが、実際には、事前の私達の想定とは違う経営課題が見えてくることも多いため、当初思い描いたストーリーに「あてはめていく作業」ではなく、その企業の企業文化や社風、現場により近い従業員の意見等を「吸い上げていく作業」を怠らない事で、よりリアルな経営課題の見極めが可能になります。
このリアルな「現場感覚」や従業員との対話を疎かにせず、対象となる地方企業の現場に潜む根本的な問題に迫っていく姿勢こそが非常に大切だと痛感しております。

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「当事者意識」と地方企業に「溶け込む力」が不可欠

次に必要だと思う資質は、やはり、地方企業に「溶け込む力」でしょう。私達が、地方企業に溶け込む前のハンデキャップとして、「あの人はコンサルタントらしい」「東京の会社から来たらしい」という自分自身が意識しなくても、警戒心を持たれてしまいます。
警戒心を持たれた相手から、本音を聞き出すのが難しいのは容易ではないと想像はできると思います。その警戒心を持たれることを前提に、どうすれば、その地方企業の経営者、従業員と本音の対話ができるのかを、常に意識し、方法論を模索することが大切です。それでは、どうすれば良いのか、とすぐに答えを求められても、簡単な答えがある訳ではありませんが、自らが積極的に溶け込もうとする姿勢と、一方で、これまで培ってきた価値観やビジネススキルそのものが通用しない事を想定し、その企業の風土や価値観に自分を変えられる柔軟さが不可欠だと言えるでしょう。
伴走サービスのゴールは、当社のメンバーがずっと常駐をして、サポート業務を推進していくことではなく、一定の期間内で、成長戦略を立案し、経営課題を解決し、最終的に当社の関与が無くなったとしても、対象の地方企業が自立、自走し、成長し続ける体制を構築する事です。常駐をしている私自身、いつかは離れていく立場であり、事業責任、結果責任を問われない立場ではあるものの、自分が責任を取るぐらいの当事者意識と上手く物事が進まないときに、「地方企業だから」という言い訳に逃げる事無く、最善の解決策を考え続けることが必要な心掛けだと考えています。

会社変革を加速させるキーワードは「ワクワク」

最後に、私が、今最も大切にしているキーワードがあります。それは、「ワクワク」という言葉です。現在、私が伴走させて頂いている地方企業では、同社を取り巻く外部環境そのものが非常に厳しく、業界全体の売上も低迷しており、同社の業績も低迷しているという状況でしたが、私が関与後、社長と私の会社変革に対する強い「覚悟」の確認の儀式を経て、変革に取り組む意志のある社内外のメンバーが集い、意欲溢れた若い後継者もいるという大変、恵まれた条件が重なり、取引金融機関も驚くほどのスピードで業務改革を進めております。
その改革を推進する部署を、経営企画室からワクワク企画室に名称変更し、この「ワクワク」というキーワードを掲げていることで、閉塞感のあった社内の空気を変えていくことが可能になり、常に前向きに考える思考が伝播し、これまでの同社では発想することも無かった商品が企画され、営業や生産メンバーのモチベーションアップに繋がっております。
我々の主たる業務である地方企業への外部(特に首都圏マーケット)からの経営幹部人材登用促進の狙いは、地方企業の生産性を上げ、今よりも高い賃金が支払える仕事を創り出すために、事業モデルの改革や新規事業の開拓など、従来の延長線上にはない事業展開を地方企業が行えるようにするためです。一方で、そうした経営幹部人材を採用しただけでは、地方企業の企業風土や価値観も含めた企業の根本的な課題を変えるのは容易ではないという事実も十分に認識しています。より効果的に、スピーディーに会社の改革を進めていくためには、外部から登用された経営幹部人材とともに、地方企業の社内の既存メンバーにおいて、自社が有する様々な強みを再認識、再定義し、「ワクワク」マインドで前向きな雰囲気や組織作りに着手していく事が、非常に大切なのではないかと実感しております。
「ワクワクは、地方を変える、日本を変える」をキーワードに、今後も当社の素晴らしいい仲間とともに「ワクワク」しながら地方創生プロジェクトに取り組みたいと思います。

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