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究極の地方創生モデル。それは結果を出し続けること。
富士市産業支援センター「f-Biz」センター長 小出宗昭×株式会社日本人材機構 小城武彦
GLOCAL MISSION Times 編集部
2017/12/11 (月) - 08:00

行列が絶えない「地方中小企業支援の極意」を訊く──第二回:現場編


全国から注目を集めている静岡県富士市の経営相談所「f-Biz」。前回の「第一回:概要編」では、小出宗昭センター長がいかにしてf-Bizをつくり上げたかの足跡を語ってもらいました。今回は、今まで扱った実例を紹介しつつ、「行列をつくる」ためにセンター長にはどのような資質と訓練が必要なのかも掘り下げます。聞き手は同じく(株)日本人材機構取締役社長の小城武彦です。

<第一回:概要編>「仕事」と「作業」の違いを悟り、大企業での価値観がすべて変わった

「試作品の特急製作」により、新規取引先が50社増加

小城:相談に来る企業とは、1回にどれくらいの時間話をしているんですか?
小出:1回につき1時間と決めています。それを何回か繰り返しながら、具体的な成果を上げていきます。
小城:今まで、どんな事例が記憶に残っていますか?
小出:私たちf-Bizがオープンして10日目ぐらいのとき、ある金属加工会社の社長が相談に来ました。自動車部品の加工をしているのですが、バブル期を頂点として売上が下がってきたそうです。自分たちの技術はあるのだけれど、仕事がない。ついに倒産寸前となってしまいました。社長は決算報告書を持ってきていましたが、そういったものは一切見ない。既に取引銀行が決算報告書に基づいてアドバイスしてるはずですからね。だから私たちは徹底的に話を聞きました。無理してでも優秀な工作機械を導入して、本来は鋳型をつくらねばならないような部品も、削りの技術で製作できるということがわかりました。本業の金属加工のほかに、試作品も頼まれてつくっていたんですが、これは受注から3日で納品できるということなんです。試作品を1日でも早くつくって納品してくれる会社をさがしているところはいっぱいあります。そこで「試作特急サービス3Days」という新サービスを立ち上げ、チラシをつくったりサイトで告知したりしてもらいました。
小城:それはその場で提案したんですか。
小出:はい、相談に来てから50分ぐらい経った頃でした。提案したとき、彼らの顔が瞬間的に変わったんですよ。それならすぐできる、と。その後、新規取引先は50社にまで増えました。自動車メーカーからの受注も来るようになり、現在の取引は上場企業3社とのものがほとんどです。
小城:設備投資などはかからなかったんですか。
小出:おカネは使っていません。大切なのは知恵です。本当のセールスポイントをいかに活かすかという。おカネを使わずに流れを変えるというコンサルを、我々はやっているんです。この会社は後継者問題も抱えていたんですが、業績がよくなり、女性の部長さんに事業承継をしました。

小ロット生産で活路を見出したレトルト食品会社

小城:倒産するギリギリの会社を、見事に建て直しているわけですね。問題点の指摘というより、セールスポイントの発見がそのキーになっていますね。
小出:そうですね。問題点なんてすぐに見つけられますから、敢えて指摘しません。それよりセールスポイント。見つけると、とにかく褒めまくります。あるレトルト食品製造会社は、設備が古くて小ロットの生産しかできないので受注がなくなり、廃業の仕方を教えてほしいという相談に来たんです。つくれるロット数は100個程度とのこと。一方、地域で人気の洋食屋さんがレトルトをつくりたいという相談も来るんですが、大手メーカーに頼むと、最低ロット数は5000個なんですね。そこまでさばききれないけれど、100個からつくってくれるのなら、好都合です。しかも、その会社は長い歴史の中でレシピもたくさん持っています。『すごいじゃないですか!』と褒めまくり、レシピ開発から製造までできる「レトルトクリエーション」という名前で、小ロットでのレトルト食品を開発できるセールスポイントを強調して、売上を回復しました。ここも後継者問題になやんでいましたが、引き継ぎたいという会社も現れたと聞いています。
小城:具体的な提案をして、今までの流れを変えるわけですね。
小出:我々のアドバイスは、地方企業が壊れるのを救うために、うまくサポートすることです。そのためには具体的なアイデアが大切ですね。

01

「焼きそば」という宝、「バタークリーム」という財産

小城:具体的な提案、つまり思わぬセールスポイントを引き出す秘訣は何なんでしょう。
小出:その会社の歴史を聞くことですね。この間、業績不振の洋菓子屋さんが相談に来ました。そのお店では昔、焼きそばも売ってたんです。でも新たに移転したとき、洋菓子専門店のイメージを邪魔するんでメニューから消したと言います。それはもったいない、焼きそばは宝ですと。焼きそばは創業記念祭として復活しました。自信を失っていたご家族全員が元気になりました。
小城:お店の歴史は生命線なんですね。
小出:同時に発掘した歴史は、バタークリームです。昭和40年代頃まで、貴重品だった生クリームの代わりに使っていました。当時のレシピが残っていて、それを使った新商品を売り出しました。もうバタークリームは近年あまり見ませんから、昔からのファンを惹き付けるんです。
小城:そうやって具体的な提案をして、結果が出せたとき、やっぱり並々ならぬ感謝をされるんじゃありませんか。
小出:この仕事での一番のやりがいは、ありがとうと言われることです。やる気が出た、元気が出た、頑張れる……顔つきも変わります。
小城:先ほど『相談に来た人の顔が変わる』とおっしゃいましたが、そういうことなんですね。

03

起業提案は「コスプレオーボエプレイヤー」

小城:f-Bizでは経営相談のほかに、起業家の相談にも乗っているんですね。
小出:先日、面白いケースがありまして。地元大学の音楽学部出身の女性が、オーボエ講師として起業したいという相談に来ました。オーボエで生計を立てるには、演奏するか教えるかしかありません。ビジネスとしてなかなか難しいわけです。その後のミーティングで、彼女の趣味がアニメだとわかりました。しかもコスプレをしてアニメソングをオーボエで演奏するという。クラシックのオーボエ奏者は世界にたくさんいるけれど、アニメのコスプレをしてアニソンを吹く人は彼女だけ。そこで、富士山をバックにしたコスプレのアニソン演奏を撮影し、プロモーションビデオとしてYouTubeに上げました。するといきなり、香港の音楽祭から招待状が届いたんです。いきなり世界デビューですよ。この間は台湾にも呼ばれました。
小城:音楽プロデューサーのようなことまでやってるんですね。ちなみに、そのときは何人のスタッフが関わったんですか。
小出:私と副センター長、ITアドバイザーと研修生2人の5人だけです。先ほどのバタークリームケーキでは、5人関わりました。最初に方向性を決めて、副センター長がコンセプトの見直し、クリエイティブディレクターが看板や什器などのデザインをアドバイス、プロジェクトマネージャーが販路や接客などをアドバイス、マーケティングディレクターがSNSなどの戦略を立てます。こういうプロのスタッフが連続的に関わりながら進めていっています。

02

行列のできるセンター長になるための資質とは

小城:f-Bizはセンター長の小出さんが率いているわけですが、スタッフもとても優秀な人材揃いです。どうやって集められたんでしょうか。
小出:資格や経験よりも、適性を重視しました。ビジネスセンスとコミュニケーション能力があること、情熱を持っていること。こういった人たちは、ビジネスの最前線で活躍できているということです。例えば、副センター長の本業はコピーライター。プロジェクトマネージャーは税理士なんですが、前職は百貨店の販売のプロです。
小城:やっぱり資格や経験の長さでは計り知れないものなんですね。f-Bizをモデルにした『○○ビズ』が全国に誕生していますが、それらのセンター長を決めるときにも当然適性を見るわけですね。
小出:はい。とは言え、大手老舗陶器会社の社長、第一線のマーケッター、有名広告代理店の役員、人気ブックカフェの経営者とキャリアはさまざまです。面接は非常に厳しく、実際の地元の経営者から悩みをぶつけられ、それに対する解決策を出してもらいます。矢継ぎ早に次々と飛んでくる相談にどう答えるか。その反応を見て、実力を判断します。最終的に、地元の経営者が誰に相談したいかで決めるという形です。
小城:小出さんたちと経営者の意見は一致するんですか。
小出:ほとんど一致しますね。選ばれた候補者は、f-Bizで2〜3カ月厳しい修行を積んでもらいます。
小城:どんな修行ですか。
小出:私たちが実際に相談を受けているのを隣で聞かせ、あとで徹底的にディスカッションさせるんです。ポイントがわかる人は、そこを突いてくるんですね。だんだん的中率が高くなると、本人に案件を任せてしまい、わたしは隣で見ています。そうやってノウハウを共有していくわけです。でも一番重要なのはスピリットの部分ですね。まず、来た人をリスペクトしようと。来る人はチャレンジャーですから、絶対に上からの目線では見ないこと。どんなに困ったことがあっても、なんとかしようと。我々がアドバイスすることで、その会社や従業員の家族がハッピーになります。それをベースにしながら、公の産業を担う人として、地域興しのリーダーになる心得を徹底的にレクチャーするんです。

f-Bizスタイルは究極の地方創生モデル

小城:そういったセンター長に選ばれている人たちはキャリアや実力もあり、もっと高収入の道も選択肢としてあったはずですよね。
小出:先ほども話題に出た問題意識の強さだと思います。敢えてこちらを選んでいる人たちですから。世の中のために何かしようと思って応募してきたんです。
小城:日本は中小企業支援に力を入れていますが、思うような結果が出ていません。それは小出さんたちのような支援人材がいなかったからですね。
小出:私は結果の出せる支援センターを最初から目指していました。一つの案件を複数のスタッフでアドバイスするようにしたら、飛躍的に実績が向上したんです。ノウハウが上がってそれらが組み合わさるから、f-Bizはどんどん進化していきます。自分が50代で成長するなんてまったく思っていませんでしたから。
小城:地元の経営者も、『あそこに行けば何とかなる』と集まってくるわけですね。
小出:ええ、ですから絶対に失敗はできません。『何とかなった』という意義は大きいです。我々のプロジェクトは、地域の全てが対象ですから、小さなイノベーション、チャレンジャーを生み出すんです。面で捉えることができるわけです。究極の地方創生モデルだと思っています。
小城:これからもf-Bizスタイルの『行列のできる相談所』が各地に開設されるでしょう。自分が何のために生きているのか、何のために仕事をしているのか、もう一度わかりやすく伝わる仕組みだとも思いますから、もっといろいろな流れができてくるだろうと、信じています。

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