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「地域活性学会」と「地域活性機構」の目指すもの
一般財団法人地域活性機構副理事長・事務局長、地域活性学会常任理事 尾羽沢 信一
2018/02/23 (金) - 08:00

前回は、地方創生や地域活性化の究極の目的について、徳島県神山町などのリーダーたちの言葉を引きながら皆さんと共に考えてみました。今回は私が「地域活性」の世界と関わるようになった直接のきっかけである地域活性学会と地域活性機構についてその歩みを振り返り、今後目指すところをお伝えしたいと思います。

「地域活性学会」の歩みを振り返る

当学会は2008年11月に設立されました。私が初代事務局長として関わり始めたのはその2009年からですが、当時の設立趣意書では次のような思いが述べられています。

 今日の少子・高齢化や経済のグローバル化は、わたしたちの生活を根底から変え、地域固有の豊かな文化や営みが急速に失われつつあります。いにしえよりこの国を支え、礎(いしずえ)ともいえる地域が、今まさに崩壊の危機に直面しているのです。

 このような事態に対処するため、平成17年4月には地域再生法が成立、「地域再生」にむけて、国をあげた取り組みが始まりました。一方、全国各地の自治体や企業、住民らもまた、それぞれ創意工夫を重ねながら、地域を元気にする活動に精力的に取り組んでいます。しかしながら、その政策づくりや実際の活動現場においては、いまだ確固とした理論や方法論がなく、手探りあるいは試行錯誤の状態が続いているのが現状です。

(中略)

 私たちには、従来ある地域経済の活性化関連の学術活動では疲弊した地域への原因を追究するのみで、その後の解決策を提示するという活動が希薄であるという共通認識があります。そのため、本学会では学術研究者の分析とともに地域で実際活動をおこなっている種々民間団体、さらに制度・予算の面で支援する行政主体の参加も募り、より実践的な政策提言・地域活性化の取組支援につながる学術研究活動を目指す所存です。

具体的な活動としては、

  1)地域活性化を担う専門的な人材の育成 (教育)
  2)地域活性化の理論と方法の学際的な探究 (研究)
  3)地域活性化に関する研究成果の地域への還元 (地域貢献・政策提言)
  4)地域活性化に関する国内外の研究ネットワークの構築 (国内連携・国際交流)

の4点を柱に据え、活動してまいります。

発足した当時の会員は100名を超える程度でしたが、10年間で会員数が順調に増えて、現在では約1,000名の方々が活動に何らかの形で参加してくださっています。
会員の構成は下記の通りで、研究者以外の民間企業や公務員の方にも幅広くご参加いただいています。

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毎年夏に開催している研究大会も9回を数え、回を重ねるごとに発表内容や議論も深まり、白熱してきました。
特に第8回の小布施大会は大学キャンパスのない小さな町での開催、第9回の浜田大会は東京からの移動に半日以上要する場所ということで、学会としてもかなりチャレンジングな開催地選定であったのですが、「地方の問題を真剣に考え、議論するためには地方に身を置いて語り合うことこそに意味がある」ということが実感できました。

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昨年の浜田大会開催時の主催者側の問題意識は次のようなものでした。

人口減少社会・超高齢化社会への対応が当面の日本の最大の課題とされ、地方創生が国の最重要の政策課題となって久しい。こうした中で、離島や中山間地域の地域活性化のモデルケースといえるような事例が中国地方から数多く提示され、注目を集めるようになってきている。
離島や中山間地の集落において、地域資源を活かして域内の小さな経済循環を創り出し、それが広がることで地域での持続的な生活基盤が形成される可能性が示されている。そうした新たな活力の創出には、地域の人財とともにUIJターンで都市から流入し、定着する若者の活動が上手く連動しているケースが多い。
第8回研究大会は、初めて大学のキャンパスから離れて、長野県小布施町の庁舎、小学校を開催場所として、町と学会が一体になった研究大会が開催された。「小さなまちの挑戦~地方創生とまちづくり」をテーマとする新たな試みは、修景手法をもちいた小布施のまちづくりを参加者が肌身で感じ、若者によるスポーツやPPPなどの新たなまちづくりの潮流も感じられる現場感覚に溢れた研究大会となった。
今大会では、浜田市と島根県立大学の共催という、新たな開催方式を試みる。課題先進国日本の中でもその最先端を行く島根県及び中国地方から様々な挑戦の試みが報告され、その解決手法の一般化など各種のテーマをめぐって、全国で地域活性化に取り組み、研究する産学官の参加者で白熱した議論が展開されることを期待したい。

終わってみると小布施大会の参加者数は360名、浜田大会の参加者数は463名でした。いずれもアクセスの良いとは決して言えない地方で、果たして皆さん来てくれるのだろうかという心配はあったのですが、学会史上最高記録を更新しました。
もちろん大会開催地のリーダーや役場の皆さん、住民の皆さんの大変なご努力もあったのですが、地域の現場で格闘している最前線の担い手の生の声をその地域で聞きたいという参加者たちの思いが年々強くなってきていることを強く感じます。

メイン会場の初日は、海士町、邑南町、雲南市、地元浜田市のリーダーに語っていただき、さらに2日目は現場で具体的な事業を創り推進している方々のお話と会場の皆さんとの熱いやり取りがありました。

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大会実行委員長でもある久保田浜田市長から参加者に熱いメッセージ
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島根県各地で活躍する担い手の方々の報告とディスカッション
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交流懇親会参加者数も過去最高を記録

これからの地域の在り方とは? –成長から定常へ–

特に小布施と浜田での大会を終えて、いくつか感じ、またこれから私たちが取り組まなければならないと思っているのは次のようなことです。

①これからの地域が目指すのは、経済や人口の成長ではなく、次の世代に残せる場と価値を伝えていくことではないか。
②その基盤となるのは、地域への愛着であり、それはとりもなおさずその地域の歴史、伝統、文化、自然、そして地域の人々の支え合いである。
③地域の価値を図るのに、グローバル競争基準や市場原理のみを適用してはいけない。
④スモールサイズやジャストサイズ、すなわち身の丈にあった地域づくりが発想の起点となるべき。
⑤志のある若者、よそ者、都会人が移住してでもその地域で暮らしたいと思うのはこのような深さやよそ者に対してオープンな土壌を持った地域である。
⑥また、そのような地域では商品やサービスをお金で買う以外の、物々交換、労働やお世話によるお返しなどが組み込まれている。
⑦他方で、どんな地域でも、これからも市場経済部分は残るので、一定の稼ぎは必要である。
⑧この世界で盛んに言われるイノベーションについては、その地域のレガシーを生かしたイノベーションについてまず考えてみる必要がある。
「成長から定常へ」は、内田樹さんの新著「ローカリズム宣言」からお借りしました。

次世代に伝えていくべき地域の価値とは

それでは、地域のリーダーやローカル・イノベーションの担い手は、どんな環境の中で、具体的に何に取り組み、難問をどのように解決しているのでしょうか。
地域活性学会の小布施大会の時にお願いして、小布施町の取材、神山町の取材、そして山陰いいものマルシェの取材をしました。教育コンテンツとして下記にアップされていますので、ぜひご覧ください。(「事例に学ぶ地方創生の歴史的意義と現代的課題」)

https://chihousousei-college.jp/e-learning/basic/introduction/040.html

また、浜田大会の時には久保田市長や島根県立大学の先生方、市内事業者の皆さんのご協力を得て、取材許可をいただき、これも1月末から一般公開されています。(「課題先進地域における地方創生を考える」)

https://chihousousei-college.jp/e-learning/basic/introduction/116.html

いずれも内閣府事業「地方創生カレッジ」の中のコンテンツです。
見て楽しい、でも地方創生の本質論について考えるきっかけになる、そんなコンテンツ作りにしてあります。これらは地域活性学会の姉妹団体である地域活性機構で作りました。ご関心のある方はご覧になってみてください。

地域の将来や地方創生に少しでも関心のある方に対して開かれた地域活性学会を目指していますが、どんなことを研究してきたのか、もう少しお知りになりたい方は、下記の地域活性学会ホームページをご覧ください。どのような職業、キャリアの方でも思いのある方の入会を歓迎いたします。

http://www.hosei-web.jp/chiiki/

また、地域活性機構は、学会の実践面を担う団体として、地域の課題に応じて、さまざまな事業を手掛けています。
どんな小さな地域の小さな課題でもできるだけご相談に乗るようにしています。
ご関心のある方は下記ホームページを覗いてみてください。
www.c-kassei.com/

尾羽沢 信一

一般財団法人地域活性機構副理事長・事務局長、地域活性学会常任理事 尾羽沢 信一

1957年生まれ。株式会社インテージ主任研究員、法政大学地域研究センター特任教授などを経て現職。10年ほど前から「地域活性学会」の運営などに携わり、「地域活性」や「地方創生」の意味と条件について考えている。

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