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熱意を計画力が支えて、夢に向かってまっすぐな道が拓ける──「みんなの夢AWARD8」
鳥羽山 康一郎
2018/04/11 (水) - 08:00

夢を語ること──だれもが一度は経験したことがあるだろう。そして、この夢が叶えば世界はもっとよくなる、人々が幸せになる。そんなことを思っている、あるいは思っていた人も、少なからずいるに違いない。自分が抱いている夢をプレゼンテーションし、叶えるための支援を受けられるイベントが、「みんなの夢AWARD」だ。8回目を迎えるこのイベントは2018年2月26日、舞浜アンフィシアターで開催された。最初から最後まで熱気に満ちた会場のレポートをお届けする。

「世界をよくする夢」から始まった

この「みんなの夢AWARD」は、「未来の名刺」というサイトに投稿されたさまざまな夢を、実際に語るステージとして誕生したものだ。「5年先の夢を名乗って、未来の名刺を作ろう」というコンセプトで始まったこのサイトには、「世界をちょっとよくする夢」がたくさん集まってきた。それらを実際に支援するため、渡邉美樹氏(ワタミグループ創始者、参議院議員)が創設した「みんなの夢をかなえる会」が主宰となり「みんなの夢AWARD」がスタートした。2010年のことだ。翌年の東日本大震災に際しては、復興イベントを開催。被災地最大規模のイベントとなった。以降、回を重ねて国内最大のソーシャルイベントとして大きくなって来た。集まった夢の中から選抜されたファイナリストたちがプレゼンテーションを行い、応援したい協賛企業がプラカードを掲げる。そして審査員や来場者の投票などで毎回グランプリが選出される。グランプリ受賞者には企業との出資交渉権と副賞の「夢支度金」が授与され、実際の起業や活動につながっていく。8回目は2018年2月26日(月)、千葉県の舞浜アンフィシアターで開催された。

7人のファイナリストによるプレゼン

夢と若さは親和性があるゆえに、「みんなの夢AWARD」には、数多くの学生団体も関わっている。と言うか、インターカレッジの祭典のように見えるくらい若い世代の観客が多い。団体で来ている高校生も目立った。半円形のステージ上では司会者たちの軽妙なやり取りで、会場は盛り上がる。アトラクションとして神奈川大学チアリーディング部や陸前高田の氷上太鼓が客席を暖め、7人のファイナリストによるプレゼンテーションが始まった。プレゼンテーマに関連したそれぞれの「5年後の肩書」も付けられており、ルーツである「未来の名刺」のDNAを感じられる。

●1組目:観光を通じて、日本代表を増やす──岩井友美氏
5年後の肩書:観光事業展開のハブ
京都で学生通訳ガイドを行っている岩井氏は、インバウンドも含めた観光ガイドの可能性に着目。一人ひとりの個性や自我を持ち、その人にしか語れないことを観光客に伝えることで「日本代表」になれると語る。そしてガイドの育成専門事業を立ち上げ、マッチングまで行うプランを提唱した。応援企業は8社が手を挙げた。

●2組目:伊勢型紙の産地、三重県白子を世界中のクリエーターが集うまちにする──木村淳史氏
5年後の肩書:伝統工芸を産業に戻す! 伝統工芸の復活請負人
後継者不足、需要の衰退で、日本の伝統工芸は消滅の危機に瀕している。木村氏の関わる伊勢型紙もそのひとつだ。そこで三重県の白子に型紙職人を体感できるゲストハウスを開設。そこから職人を育てる試みを既に行っている。これらを地方創生と絡め、工房やコワーキングスペースを整備して新たなツーリズムも創生したいと訴求した。応援企業は5社。

●3組目:『できないこと』ではなく『できること』にフォーカスできる職場を増やす──尾中友哉氏
5年後の肩書:音のない世界とある世界の架け橋役
聴覚障がいのあるご両親に育てられた尾中氏。コミュニケーションにおいてハンディばかりではなく「聞こえないからこその強み」を実感した。それが一般社会で価値になることを証明するため、無言語コミュニケーションを提唱。これによって壁を取り払うことができ、本気で伝え本気で相手を理解する力を得ることができるとプレゼンテーション。応援企業は10社。

●4組目:全国に広がる貧困家庭やシングルマザーの家庭を応援する『命をつなぐ飲食店協会』の拠点を全国に作る──八木大介氏
5年後の肩書:命をつなぐ飲食店協会長
そば店「そば助」を経営している八木氏は、「命をつなぐ飲食店協会」というNPO法人の設立を目指す。全国に広がる貧困家庭やシングルマザーを応援するためである。また、支援した人々がフランチャイズチェーンとしてそば店に加盟した場合は、高比率で利益を還元したいとのプランを述べた。応援企業は最多の12社が手を挙げた。

●5組目:釣りを通し魚への興味を持ってもらうために釣りガールを増やし、全国の漁業と漁村地区の活性化へと繋げていく!──松原淑美氏
5年後の肩書:漁村再生釣りガール
全国的な魚離れが進む中、釣りの楽しさを通して魚に触れ、美味しさを知ってほしいと訴求するのが、釣りガール・松原氏。南伊豆をモデルケースとして、漁業を広めるため首都圏の企業と連携するほか釣りガールを増やすためのツアー企画を進める。そして全国の漁業活性化から地方創生へつなげていく計画を発表した。応援企業は9社。

●6組目:副業から複業、そして“福業”へ! 働き方改革を推進することで地域(田舎)を元気にしたい!──竹本勝紀氏
5年後の肩書:地域を元気にする鉄道マイスター
千葉県銚子市の銚子電鉄は、廃線の危機を「ぬれ煎餅」の発売で回避した実績を持つ。その社長である竹本氏は、新たな施策として「電車の運転士」を養成して銚子電鉄を運転してもらおうというアイデアを披露した。ぬれ煎やイベントからの収益も確保しつつ養成の学費も柱として組み込み、総合力で生き残るプランを説明。7社が手を挙げた。

●7組目:『ともにつくるを楽しむ人』を日本中にふやしたい──くわばらゆうき氏
5年後の肩書:KUMIKI PROJECT代表
東日本大震災をきっかけに、集会場を住民とともに再建する取り組みを開始したくわばら氏。国産材を使い、家具や内装をキット化して販売するプランを提唱する。「DIT(Do It Together)」「DIO(Do It Ourselves)」をコンセプトに、ワークショップなども開催し地域コミュニケーションの創出にも寄与。インストラクター養成も視野に入れる。10社が応援企業として挙手した。

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ファイナリストたちはそれぞれ工夫を凝らしたコスチューム、スライドを使い、印象に残るプレゼンテーションを行った
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審査員席と、その後ろは協賛企業の担当者席
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来場者の反応は、「いいね」のアイコンを掲げて

グランプリは、尾中友哉氏に

7組のプレゼンテーション終了後、6名の審査員による協議と来場者の投票などにより、グランプリと準グランプリが決定した。グランプリを獲得したのは尾中友哉氏。自身が育ってきた環境からアイデアを得て、無言語コミュニケーションを発展させた新たなコミュニケーションを提唱。社会から「孤独」をなくしたいという熱い気持ちが、特に来場者から多くの共感を得た。尾中氏にはソーシャルビジネスとして展開していくための最大2000万円の出資交渉権と、副賞として100万円の「夢支度金」が授与された。
そして準グランプリは、竹本勝紀氏。実は、審査員による投票は同点だったと審査員長の渡邉氏が明かす。ビジネスの視点から、高い可能性を見出したようだ。地元の生命線であるローカル線を守り、さまざまなアイデアで銚子を盛り上げたいという強い意思も感じ取れた。賞状と、副賞10万円が授与された。

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グランプリの尾中友哉氏と、審査委員長の渡邉美樹氏
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準グランプリの竹本勝紀氏は、銚子電鉄の運転士の出で立ちで

夢を夢で終わらせないために

「みんなの夢AWARD8」の審査委員長は、渡邉美樹氏。叩き上げの経営者であり、学生時代から「社長になる」と夢を抱いてきた人物だ。ファイナリストたちのプレゼンテーション後に、「このビジネスプランの数字的根拠は?」といった実務に即した質問を放つのも渡邉氏らしい。夢を語ることは誰にでもできる。しかしそれを叶えるためには、具体的なプランやロードマップが欠かせない。夢に浮かされるだけではなく、一度熱を冷まして客観的に見直さなければ、少なくともここに立つファイナリストにはなれないだろう。夢の温度や理念の高さを旗頭に、現実的でしたたかな計算を胸の中に。グランプリを獲らずとも、その両者をアピールすることができれば、大きなチャンスの扉を開けるパワーになる。彼らが夢を叶え、「ちょっといい世界」がたくさん実現すれば、「とてもいい世界」になっていくはずだ。今までの夢はどう叶ったか、来年はどんな夢がプレゼンテーションされるのか、また確かめに来てみたい。

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「スペシャルプログラム」と銘打って、審査委員長・渡邉美樹氏、審査員の面白法人カヤック・柳沢大輔氏、LIFULL・井上高志氏のトークショーも開かれた
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会場のボルテージを上げた神奈川大学チアリーディング部のパフォーマンス。この他にも早稲田大学と同志社大学による東西よさこい対決も

みんなの夢AWARD
http://www.yumeaward.org/

公益財団法人 みんなの夢をかなえる会
http://www.minnanoyume.org/

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鳥羽山 康一郎

鳥羽山 康一郎

ライター/コピーライター/プランナー

文字を通じてのコミュニケーションを真ん中に置きながら、映像、画像などにも手を出しつつ活動。数多くのインタビューを通じ、その人の数だけの生き方に感動し感化される。自身もオフィスを持たない生き方を模索している。

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