巨大な成長産業、人材ニーズも大/地方転職・起業の先駆者
巨大な成長産業、人材ニーズも大/地方転職・起業の先駆者
月刊事業構想 別冊「ポスト平成の働き方」/監修 (株)日本人材機構
月刊事業構想 編集部
2019/02/05 (火) - 08:00

2018年上半期の訪日外国人客数は1589万人と過去最高を更新した。観光ビジネスは地方の資源・ポテンシャルが発揮できる産業であり、今後の成長も期待大。移住・兼業などで観光ビジネスに挑戦する人材も増えている。

ファンランで5万人集客/ベンチャー経営者の地方“兼業”

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東北風土マラソン&フェスティバル」の模様。走りながら東北各地のグルメも楽しめる

3月に宮城県北部、岩手県との県境にある登米市で開催される「東北風土マラソン&フェスティバル」。「風土」は「フード」でもあり、湖畔を巡るコースに設けられた10カ所のエイドステーションでは、東北各地のグルメが一口サイズで提供される。
「今年は東北6県の50以上の事業者がフードを提供しました。同時開催の東北日本酒フェスティバルでは、日本酒とワインを合わせて東北6県の21の酒蔵が参加し、102銘柄を試飲できるようになりました」と話すのは、発起人会代表の竹川隆司氏。教育系ベンチャーを率いる経営者でもあり、本業の傍ら、東北での観光プロジェクトや起業家人材育成にも取り組む。 

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竹川隆司 東北風土マラソン&フェスティバル発起人会代表

東日本大震災からの復興を目的に2014年にスタート。右肩上がりで参加者、来場者数が伸び、今年はマラソンのエントリーが6,800人、来場者数は2日間で5万3,000人を記録した。
 
イベントの手本となったのが、フランスのメドック地方で毎年開催されるメドックマラソンだ。ワイン用のブドウの収穫時期にあたる9月に開催され、ワイナリーを巡るコースでは走りながらワインの試飲ができるほか、現地ならではの食事が提供される。

東北風土マラソンは「競技を目的としないファンランとして尖った大会にしたい」という意向もあり、フルマラソンやハーフマラソンのほかに、障害者が伴走者とともに走る「KIDSスマイルラン」、ベビーカーでも参加できる「親子ラン」なども実施している。
イベントへの外部からの関心は高く、さまざまな自治体や団体が視察に訪れるという。竹川氏は、これが日本の地方を元気にする一つのモデルになればと期待する。 

「美しい風景と豊かな文化がある地域ならば、メドックマラソンや東北風土マラソンのような地域振興モデルが可能だと思います。地方の生産者が笑顔で頑張るきっかけを作るためにも、日本中で開催してほしい」

沖縄に惚れ込み起業したMICEのプロフェッショナル

MICE(国際会議や見本市、企業研修などのビジネストラベル)開催地として大きな魅力と可能性を秘めた沖縄で、2006年に設立されたDMC沖縄。
DMCとはMICEなどの目的地・開催地で発生するあらゆる業務を提供する企業を指すが、同社は日本でその草分け的な存在だ。ビーチや離島、首里城や琉球古民家などを活用した、チームビルディングやパーティのための独自プログラムが人気を集めており、企業の報奨・研修旅行を中心に国内外から多数のMICE誘致に成功している。
 
徳田博之社長は、日本を代表する大型複合コンベンション施設パシフィコ横浜の立ち上げに関わって以来、1,000件以上のMICEの企画・運営に携わってきた。MICEのプロである徳田氏は、沖縄の可能性に惚れ込み、同地での起業を選んだ。
 
「東アジアの中心に位置する沖縄は、各国から人が集まりやすい環境にあります。さらに日本の中でも少し異質な気候や文化を持つ沖縄は、特別なブランドです。沖縄の地域資源は、国内だけでなく海外のお客さまにも訴求力があります」と徳田氏は言う。実際にDMC沖縄でも、グローバル企業のアジア太平洋地域会議や同地域からの報奨旅行の受注が増えている。

プログラムの開発や実施では、積極的に地元事業者と連携。例えば人気チームビルディングプログラムでは、三線など沖縄の伝統的な楽器4種類を使い、2時間で楽器と曲をマスターし、合奏に挑戦するといった内容だ。
 
ほかにも、離島やビーチ、首里城など沖縄ならではの空間を活用したアクティビティや、琉球文化に焦点を当てたレクリエーションなど、地域の素材を活用したプログラムを多数開発している。このようにビジネストラベルは、地域×観光の未開拓領域であり、沖縄だけでなく各地の資源を有効活用できる可能性を秘めている。

ホテルはメディア/女性経営者率いる新興企業

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北海道層雲峡にオープンしたホテルクモイ

北海道の大雪山の麓にある道内有数の温泉街、上川町層雲峡で一軒の古びた旅館が2018年4月、「ホテルクモイ」としてリニューアルオープンした。
温泉宿といえば「癒し」をテーマにした和風の内装を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、「ホテルクモイ」に一歩足を踏み入れると、ヒビの入ったコンクリートやメタリックなステン素材が目に入る。食堂はビリヤードが並ぶプレイラウンジに、フロント前のロビーは暖炉のあるシアタールームに変わり、ホテル内で水タバコを吸えるスペースも用意されている。
 
「ONSEN2.0」と称してこの新感覚ホテルをプロデュースしたのは、若干20代の龍崎翔子氏。京都でホテル企画・運営のL & G G L O B A LBUSINESSを立ち上げ、ほかにも北海道の富良野、大阪、京都、湯河原でホテル経営に携わる。社員はパートを含めて約60人。「ホテル業界出身の人はあえて採用していません。異業種のノウハウを持つ人を重視しています」といい、メーカーや金融、人材、インフラ、不動産などバラエティに富んだ業界から、続々と挑戦者が集まっている。
 
「ホテルは宿泊客と町、人、文化が出会うメディアだと捉えています。ホテルを通して町の空気感を伝え、いろいろな背景を持つ人の出会いの場となり、文化を提案する。私はどの町でもよそ者だけど、ホテルビジネスを通じて、結果的に地域に貢献できればいい」と龍崎氏は語る。
 
地域観光ビジネスでは、観光資源の発見からマーケティング、クリエイティブ、プロモーション、品質管理や資源管理などのマネジメントと、広範囲なビジネススキルが求められ、関わる職種も幅広い。全国で観光DMOの設立も相次いでおり、首都圏人材の転職・起業の余地は大きいだろう。

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