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台湾における再生事業最前線2019/その2:地域文化・産業、若者支援を組み合わせた「甘楽文創」
木下 斉
2019/11/29 (金) - 08:00

台湾は台北市郊外に位置する三峽老街という古い町並みが残るエリアで、地域文化・産業と若者支援を組み合わせた特徴的な取り組みがあります。ソーシャルビジネス的な側面の強い取り組みながら、地域産業再生、エリア再生といった視点も踏まえられているという複合的な要素に富んだ取り組みとなっています。

地域食文化をテコにした、甘楽食堂

この地域に残る伝統建築を保護しながら、食堂やパン製造、藍染製造販売、イベントスペースを複合的に盛り込んだ場の運営をされています。訪問したのが夏ということもあり、川沿いにあるこの施設の緑は生い茂り、その中で、地元伝統の定食をいただくことができます。

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地域分野ではありがちな文脈こそしっかりしているが、食事があまりおいしくないコミュニティレストランではなく、とてもしっかりとした定食であり、非常においしいものばかりでした。野菜、穀物ともにこだわり地元の食材を用いながら、調理方法も伝統的なものを採用されていますが、決して物足りないものではない、かといって味の濃いものばかりではない滋味深いものでした。

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この地域に古くから盛んだった藍染商品を作るために、染料を作るためのツボが庭先に置かれていて、スタッフの方が定期的にかき回していました。伝統的な藍染商品も販売されており、私もトートバックを一つ購入して使っていますが、非常にしっかりとしたものです。

子どもたちの学習や食事支援をする、小草書屋

さらにもう1軒、小さな建物をリノベーションした「小草書屋」という施設を経営しています。こちらは子どもたちの学習支援や食事などを地域の人達で支援をしている場となっています。日本でいう、学習支援施設とこども食堂のハイブリッドタイプの場です。子どもたちはこの施設内で様々な貢献をしたり、勉強をするとポイントが貯まって、様々なことに使えるという面白い仕掛けになっています。

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実際に訪問したのも午後4時頃だったのですが、多くの子供達が集まると共に、学習支援を担当する大人たちの研修も行われていました。もともと長く空き家だったものを、家主などもこのような活用に共感して貸してくれたものとのことです。

古い病院をリノベーションした、合習聚落

さらに、もともとは甘楽食堂の脇にあった豆腐工場がより人気になったということで、戦前からあった近隣の古い病院をリノベーションして、豆腐製造工場とカフェの複合施設などにした合習聚落を訪ねました。

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内部は大規模にリノベーションされ、豆腐工場とおしゃれな豆乳カフェがあります。頂いた豆乳ソフトはとてもなめらかで豆乳の旨味が凝縮されたものでした。台湾ではもともと豆腐や豆乳をよく食べる地域でありますが、最近ではビーガンなども流行っていることで若者向けのこのような店も増加しているそうです。

そしてこの施設の向かいには、さらに面白い創業支援施設があります。

地域産業技能研修を通じた若者創業支援、青草職能学苑

このエリアは前述の通りに藍染めなどを含めたものづくりの集積があったことで、近年までも様々な職人が住み、働いていたそうです。しかし事業継承などは難しく、途絶えそうになっていた木工や金属加工などの技術を若者に教え、独立開業させる教育と創業支援を行っています。地元の中学生や高校生などが放課後に来て、技術を身に付け、最初は請負をしながら、中には独立開業して立派に稼ぐ職人になっている方もいるというのですから驚きます。

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実際の作品をみると大変立派なものばかり。講師となっているのはもともと職人だった方ばかりで、もう一線を退いたものの技術などがそのまま失われるのは寂しいということで、学苑の先生として技術継承をしているという方ばかりでした。若者に技術を教える楽しみと共に、その弟子が技術を身に付けて独立することを前向きに支えようとするベテラン職人の皆さんの姿勢も素晴らしい限りですが、拠点を作り、これらをしっかり営んでいるのも素晴らしい限りです。

稼ぎ、支える独自の仕組み

甘楽文創は、このような各種施設開発、飲食店の経営などを通じて利益を生み出し、その一部で子どもたちの支援や地域産業振興などの財源として投資する仕組みを作る先駆的なビジネスモデルを有しています。さらに台湾内の様々な企業や財団の寄付も受けるなど積極的なファンドレイジングも行っています。

事業型組織である甘楽文創と、グループ内に存在する各種非営利組織が連携しながら、利益の再投資と寄付などを組み合わせるというソーシャルビジネスセクターでも興味深い運営をしているものです。地域再生という文脈でも十分に面白く、地域文化をもとにした飲食経営、伝統建築のリノベーション、若者支援など多角的な要素を含んでいるものばかりです。日本でもここまでしっかりと複合的な事業を回し続けているものは、かなり稀有なものと言えます。

地方創生文脈だけでなく、多様な要素で学ぶべき点の多い取り組みであり、その複合性は2006年から続く15年間にわたる挑戦で形成されてきたものでもあります。台北に訪れる方にはぜひ、少し足を伸ばして三峽老街を訪れ、甘楽文創の取り組みを見て、食べて学んで欲しいと思います。

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