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コミュニティを掘り起こし、古民家から町や経済をデザインしていく(後編)
株式会社NOTE 代表取締役 藤原 岳史さん
GLOCAL MISSION Times 編集部
2019/01/16 (水) - 08:00

兵庫県篠山(ささやま)市*といえば、黒豆や栗が名産で、「デカンショ節」に地名が登場するような山間部の町というイメージだ。古い歴史を持ち、伝統的建造物群も残るが、市内にいくつもある集落は人口減による空き家の増加に悩んでいる。それらに命を吹き込み再生させる事業に取り組んでいる、新しい動きがある。その中心で地域再生を牽引する株式会社NOTE(ノオト)代表取締役の藤原岳史さんに話を聞いた。
(*2019年5月1日より丹波篠山市に市名変更予定)

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コミュニティを掘り起こし、古民家から町や経済をデザインしていく(前編)

「時空間的な付加価値」で、不動産としての価値を生み出す

古民家をリノベーションし、宿泊施設や飲食店、ショップなどとして運営していくには、当然まとまった資金が必要だ。NOTEではそれをどうまかなっているのだろうか。
「銀行なんかは、不動産の価値を見て融資額を決めますよね。日本の場合、不動産は土地と建物をセットで考えています。滞在施設の場合、木造建築は築後17年で法律上は0円になる。他の用途においても最大24年。伝統的建造物でも、建物の価値はゼロ。200年前は価値があったんですが今はね…と。これはおかしいと思ったんです」

そこで藤原さんは、「古民家の空き家をリノベーションした場合」の価値をプレゼンテーションした。長い時間の中で刻まれてきた暮らし文化と、現在では建てられない空間を活かすことで、1泊5万円で月100人のお客さまが泊まると、500万円の売り上げが生まれる不動産となる。テナントの箱になるようなもので、社会的な異議もある。すると、それまで知らん顔をしていた銀行が興味を示した。
「ひとつでも多く実績をつくっていって、金融機関や投資家さんが出資する形にしたいと思っていました」──しかし、当時の事業主体は一般社団法人ノオトだった。非営利であるがゆえ、せっかく投資の話にまで運んでも、基金や寄付金という形など、資金の集め方にすぐに限界がきてしまう。
「ならば、融資や投資をしてくれる人のためにも、株式会社NOTEを別に設立しようと考えました。社会的な側面は社団法人に、収益事業は株式会社でと、機能の使い分けを図ることができるようになったのです」

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補助金に頼らず、事業として持続できる仕組みを

藤原さんが仕掛ける古民家再生によるまちづくりには、当然雇用も生まれている。旅館には欠かせない女将を誰に任せるかを考えたとき、大阪や東京に出ていっている村の出身者が有力候補となる。しかし、戻ってきてもらうためにはある程度の経済的ベネフィットを提示せねばならない。
「大都市で働く20代前半の手取り額がたとえ20万円くらいでも、地元ならば可処分所得は意外に残るんです。それだったら帰ってきた方がお小遣いが貯まるし、時々都会に遊びにも行けるじゃないですか」
さらに規模が大きくなってくると、地元採用の数も増える。都市部から人を送り込むよりもその方が管理コストも下がってくる。

マーケティング部門、企業の上場を経験してきた藤原さんだが、まちづくりという業種と向き合ったときは「みんなほとんどボランティアベースだった」と言う。
「NPOやまちづくり会社って地方行政からの補助金を頼りに活動していて、それが切れたら終わりです。行政サービスに頼りきりなんて、それは事業じゃない。イメージも良くない。ならば、逆につくりがいがあるなと思いました」
若い人たちがわざわざ来て就職するような市場や会社をつくっていこうと決めた。ここでやっている仕事がカッコいいとなれば、人は戻ってくる。収益を生んで、持続させなければ──地方創生という大きな枠組みの中では、「事業としての魅力」が大きな吸引力となるのである。

空き家が、町をデザインする

「天空の城」で有名な竹田城を擁する、兵庫県朝来(あさご)市。2013年、ここに「竹田城 城下町ホテル EN」がオープンした。母体となっている建物は、大規模な酒蔵である旧木村酒蔵場だ。創業400年の歴史を持つ。すでに当主から朝来市に寄付されていた。
「規模が大きいので、プロパティマネジメントと同じような考え方で企画を進めました」
大きなショッピングセンターをどうやってつくり、どうテナントエリアを仕切っていくか、勉強と並行しながらだったという。こういった建物にカフェは付きものだが、それだけでは弱い。ギャラリー、フレンチレストラン、ショップ、マルシェなどを併設し、「複合商業施設」と呼ぶにふさわしい規模となった。竹田城観光の拠点でもあり、歴史を紹介する資料展示室も併設されている。

竹田城ホテル ENは自治体が建物を所有していたが、民間の建物を使って行ったケースが「篠山城下町エリア」。集落丸山の成功を受けて手がけたプロジェクトだ。
「資金調達も民間から。REVIC(地域経済活性化支援機構)のファンドも使うことができました。その頃、古民家投資案件が多くなり、政治家の間でも『これは面白いね』ということで視察も増えてきたんです。官房長官が視察に来たときいろいろと訴えたおかげか、旅館業法、建築基準法、文化財保護法も見直されることになりました」
民間の資金を使い、補助金はほぼ使っていない。これが全国モデルとして広がっていけば、古民家や歴史的な建物が残り、大きな市場も形成される。いわば、眠っていた空き家が町や経済をデザインしていくと言えるだろう。

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丹波篠山 河原町妻入商家群

懐かしくて新しい日本の暮らしをつくる

藤原さんは「暮らしと文化はひとつの言葉」を哲学として掲げている。生活の中にある文化、それをしっかりと紡いでいくこと。
「あと、懐かしくかつ新しい、というのが重要です。たとえば、ここに外国人が移り住んだとしても50年経ったら融合する。耳慣れない言葉を喋っていたって、村の人たちがその意味を理解したらみんなそれを使い始める。やがて方言になっていくかもしれません」
村自身も進化し、そこに新しさが生まれる──時が醸しだす異文化のブレンドは、変容しながらも持続していくというわけだ。

さらに、「都市部一極集中だと集落は壊死してしまいますが、融合した暮らし文化ができていけば、経済の循環にもなります。地方に血液を送り込むことができ、壊死による切り捨てを回避できるんです」と続ける。
地方に血を通わせると、人が行き交い始め交流人口となる。泊まる個人は毎日違っても、交流人口は増えていく。「旅行者はしょせん立ち去るもので、その町に移り住んだ人こそが重要」と誰もが思いがちだが、新たな旅行者が絶え間なく訪れるなら、彼らが血液となってくれることを改めて教えられた。
「1000年2000年は残せないかもしれませんが、せめてあと三世代後、100年後にこのバトンをつないでいけば、また次の世代にそれを託していってくれるでしょう」
行かふ年も又旅人なり──そんな一文が頭によみがえってきた。

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撮影:松村 隆史 

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株式会社NOTE 代表取締役

藤原 岳史(ふじわら たけし)さん

兵庫県篠山市出身。大学を卒業後、大阪の外食産業に就職しマーケティング部門を担当。IT企業に転職後、ITベンチャーに入社。2008年から故郷篠山市の再生に関わる。2009年一般社団法人ノオトを設立し、現在理事。株式会社NOTE代表取締役

株式会社NOTE

一般社団法人ノオトが培ってきたノウハウや知見を元に、収益事業を担う組織として設立。産業化を加速させる役割を担う。社が掲げる重要目標達成指標は「30,000棟を再生」。全国の歴史的建築物の空き家149万棟の20%は採算が合うように再生できる、そのうち10%を受け持とうとの思いで定めた。

住所
兵庫県篠山市立町190-6
会社HP
http://plus-note.com/

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