ナベヤ代表取締役社長 岡本知彦
【岡本知彦】オーナーが必要とする右腕/時流に適応し続け歴史を紡ぐ
ナベヤ代表取締役社長 岡本知彦
月刊事業構想 編集部
2019/01/17 (木) - 12:00

「東京の歯車ではなく、地方の心臓に」。そんな想いを描き、都会のビジネスパーソンが地方企業に転職する時代が訪れている。本編では、「地方企業の経営幹部」という働き方の魅力を、実際に地方企業で活躍する右腕人材や、企業経営の真剣勝負に挑むオーナー経営者たちを紹介する。

ナベヤは1560年(永禄3年)創業の岐阜県岐阜市の鋳造メーカー。時代のニーズに合わせながら発展を遂げ、現在は治具メーカーとしては国内トップクラスのシェアを誇る。自社ブランド「ERON」を持ち、経済成長著しいアジアへの進出を強化している。

鋳物屋は「人」こそが資源

――創業から500年になろうかという企業のトップとして、プレッシャーをお感じになることはありますか。

岡本:そういう立場でのプレッシャーというのはないです。500年を自分が生きるわけではないので。自分がやっている期間という のは、35歳で社長になってからの23年間になります。社員と社員の家族を守っていくというプレッシャーは他の社長さんと変わらないと思いますね。

――ホームページを拝見すると、人材育成への意欲があふれていました。

岡本:鋳物屋ですから技能職がベース。人材育成は遠い昔からやっていたことです。中小企業は大企業より人を大切にして育てていかないといけない。代わりがいないわけですから。弊社は素材から精密機械加工まで、非常に長い工程を社内で持っていますから、社内
生産活動の中で付加価値をつけていくことが必要です。工作機械では生み出せない、人の力が必要なのです。

――新しい人材を受け入れた経緯を教えてください。

岡本:これからの企業の将来を担っていくような優秀な人材、特に技術系人材を得ることは我々中小企業には難しいです。もう一つは、時代の流れが非常に早い中で、自前で人を育てていくことも当然大切だけど、即戦力の優秀な人材を日本全国から集め、来てもらうことはすごく重要です。例えば、そんなことはまずないですけれども、東大卒の優秀な学生が弊社に来たとして、モノになるまで5年はかかると思いますから。

――新しい人材はどのような効果を生んでいるでしょうか。

岡本:生産・技術と営業をリンクする営業技術という新しいポジションを担当してもらっています。技術面の分かる営業、その逆もそうですが、そういう人材が必要とされてきています。また、彼が入ってくれることによって、新しい「次世代治具推進グループ」を立ち上げました。今やっているうちの治具をいかに新しい標準化した製品の中で落とし込むのかというところに挑戦してもらっています。将来的に幹部として会社を引っ張っていけるリーダーシップも要求しています。

人材活用では「経営理念」が大切

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治具メーカーとしては国内トップクラスのシェアを誇るほか、航空部品製造などにも進出している

――御社は歴史が長い会社ゆえに、ものすごい熱意や愛着心、愛社精神を持った人材が多いと思います。そういう人材を使いながら、一方で外部から人材を採用し、そこで刺激を与えつつ環境に適応していくというのは、ある種のハイブリッドな形ですよね。

岡本:会社の経営理念を共有することが絶対に必要です。弊社でいうと、価値創造、堅実経営、時流適応。この三つを経営幹部にはよく理解をしてもらって、時代背景の中で必要な人材を取ろうと思っています。

例えばIoTなどの技術を活用することで、生産現場の効率化はもっともっと飛躍的に上がっていくけれども、それに対応した制御設計やエンジニアリングを提案できる人がいない。そういった人材を採用しようというコンセンサスを社内で作りました。また、ナベヤの企業理念や方針から始まって今の事業内容、将来ビジョン、製品戦略も含めて人材機構の担当の方と議論を深めていきました。そのプロセスがある意味大切です。そうでないとすれ違いが起きます。
 

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朝延から授かった「御鋳物師」の免状(ナベヤホーム ページより)

――どんな人材が地方の中小企業にマッチすると思いますか。

岡本:真面目で嘘をつかなくて一生懸命やる人。あとはコミュニケーション能力のある人。それが前提じゃないですか。中小企業だからこそ、仲間を裏切らず、コミュニケーション能力が高い人じゃないと。そういうところだと思います。

――地方企業だからこその悩みというのはありますか。

岡本:弊社というよりも岐阜全体のことで言うと、直近では岐阜の有効求人倍率が上がっていて、優秀な人材の採用は難しい状況にあります。

時流に応じた人材活用を模索

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新しく採用した人材のもと、ナベヤは自動化対応製 品を強化中(ナベヤホームページより)

――副業・兼業人材への対応について、どうお考えですか。

岡本:プロジェクト制を採用できる業務については、副業・兼業も考えられると思います。プロジェクトの完遂を目指し1週間に1回、進捗管理をしていく。また、自分も現場に入って当事者となって社員たちと膝を突き合わせてPDCAを繰り返していくことが重要だと思います。これからリニア中央新幹線ができてくると、東京から名古屋まで40分。そこから岐阜まで30分です。そうなると副業・兼業が、今能力のある人の、もしくはキャリアを持っている人の、知見を持っている人の新しい働き方として十分にある。地方の企業側にとっても、メリットは大きいと思いますね。時流に応じて人材をどう活用していくか、また考えなければいけないところに来ていると思います。

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nabeya okamoto

ナベヤ 代表取締役社長

岡本知彦(おかもと ともひこ)さん

1960年、岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒業後、29歳の時に第十五代岡本太郎衛門氏(現会長)の娘婿として、岡本・ナベヤグループに入社。95年に35歳でナベヤ社長に就任した。在任中にM&A等により岡本・ナベヤグループは7事業者に拡大。現在はナベヤのほか、株式会社岡本、株式会社ナベヤ精機の社長を兼務する。

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