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世の中に不可欠な「インフラ」を創る。東日本大震災をきっかけに立ちあがったロボットベンチャー(前編)
Haloworld株式会社
GLOCAL MISSION Times 編集部
2018/05/07 (月) - 08:00

東日本大震災によって引き起こされた「福島第一原発災害」。7年間未だに続く廃炉作業は人体に危険を伴うため、人の代わりにロボットを使う “無人化施工”の必要性が叫ばれている。そんな現場のニーズに着目し、資材商社から一転、ロボット開発に乗り出した経営者がいる。福島県に本社を置く「Haloworld株式会社」の司馬天風さんだ。思い切った“転身”の背景には、どんな思いがあったのか、お話を伺った。

「ビビったら、とりあえず行け!」。商社経営者が乗り出したロボット開発

ーまずは、事業を立ち上げるに至るまでの経緯を教えて下さい。

もともと僕は、原子力発電所向けに難燃シートなどを取り扱う資材商社「CANTEC」(本社:新潟県)の代表を務めており、福島第1、第2原発でも仕事を増やそうと、2011年3月、福島県富岡町の夜ノ森に事務所を構えました。しかしその後すぐに東日本大震災が来て、その事務所は10日でダメになりました。でも、新潟から傍観しているのが逃げいるようで「もう片足ツッコんだも一緒だ!」と自分に聞かせ、すぐ隣の福島県いわき市で、1人で福島営業所を始めることにしたのです。当時、原発にはまだまだ瓦礫が散乱していて、大手ゼネコンがいわき市を拠点にして、作業に取り組んでいました。CANTEC福島営業所としては一般土木・建築資材から特殊資材(遮蔽材など)を渡すところからやっていましたが、現場ニーズが高線量下になる程、そもそも体を守る「高比重材」にも限度がある。そのことを考えた時に、現場で動くのは、もはや私たち人間ではなく、ロボットだという考えに至ったんです。国のプロジェクトで作られる高性能ロボットが現場投入される一方、3Dプリンターで製作したクローラーにスマートフォンをつけただけの、そんなに高度ではないロボットでも現場で使われているという話を聞き、これならロボット経験の無い自分にもできそうだな…と思い、2016年にHaloworldを立ち上げました。

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代表取締役 司馬 天風(しば てんぷう)さん

ー創業された時、どんな思いがあったのでしょうか。

創業前は正直ビビっていたところもあったんですけど、このマーケットには確実にロボットのニーズはあるという自信はありました。まずは商社として扱えるものを探し、「現場で使えるもの」を増やしていきました。途中、“人工筋肉”という技術で重機を遠隔操作できるロボットを開発していた豊田(晃央さん)にも事業に加わってもらい、オリジナルのロボットを創り始めました。そもそも僕は、資材商社の経営を始めた10年前から、「自分がなりたいもの・やれること」「世の中が求めるもの」「その後大きくなる可能性がある産業」の3つが重なりあうようなビジネスを新たにやりたいと思っていた。そういった意味で、ロボット開発はまさに、その3つを満たしているものでした。

―ロボット開発へと向かわれたスピード感が凄いですね。

実はずっと考えていて、溢れ出たから行こう!という感じです。新事業の立ち上げについては、資材商社やっている当初から「10年以内に実現できたらいいな」と思っていたんですが、いろんな環境をふまえた結果、もういけるんじゃないか、だったらやってしまおう、と思い至りました。あとは“直感”と“行動”です。あれこれ考えすぎると思考はマイナス方向(自己擁護、行動しない理由)しか考えないので。もう、自分で自分のケツを叩くというか。ビビったら、とりあえず行け!と、常に走り続けている感じです。

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途絶えたら世の中から怒られるような「インフラ」を創りたい

―今取り組まれておられる具体的な事業内容についてお聞かせください。

福島第1原発で働く人たちのニーズに基づいて、ロボット開発に取り組んでいます。たとえば、まだ開発途中ではあるのですが、配管検査ロボットの「Larvae」は既成の10cm程度の配管ロボットを3分の1まで小さくし、クラウドのシステムを使って携帯でも動かせるようにしています。「Bison(バイソン)」は、バルブハンドルが錆びつき高汚染水を抜くことができないかもしれない福島第一原発の状況を考えて創ったバルブハンドル開閉ロボットです。IoTにも取り組んでいて、発電所内で有事の時に動く救急車やガスタービン、注水車などの位置や作業内容を把握できるようなIoT環境を考えたり、電力会社が全国に無数に持つ蓄電池の劣化診断検査をクラウド上でオンタイムに済ませられるようにし、人件費など検査にかかるお金を格安で済ませられるようなサービスを提案したりもしています。今後は、データ管理をブロックチェーンにも取り組みたいと考えています。

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配管検査ロボット「Larvae」。パイプ検査用のロボット。Proto Type-0に続き、Type-1、Type-2を開発

―現在の社員数は?

自分も含めフルコミットは3人ですが、技術顧問・非常勤もいれると6人。さらに管理部門など、バックオフィス的な部分は基本的にCANTECでまとめて兼業で行っています。CANTECでは営業もします。その意味でHaloworldもCANTECも僕にとっては一緒です。

―会社の理想(vision)を「人類の『新しいインフラ』を創る」とされていますね。

2004年の日経新聞に、各国のGDPと企業の売り上げをランキング形式で紹介した記事があったんです。そのなかで、オーストリアのGDPの次に、アメリカの大手スーパーの「ウォルマート」が28兆円で紹介されていて。これを見た時に、小売業だとしても、人に必要とされるものという意味で、全部“インフラ”だな…と思ったんです。その意味では、過疎地のスーパーは、その地域に住む人からすれば歴とした「インフラ」。僕たちも、「このサービスを買ってください」ではなく、このサービスが途絶えたら怒られてしまうような、そんな「インフラ」いわゆる“必要不可欠”を創り出したいと思っています。

行動指針に“ビジネスネーム”…ユニークな社風に込められた思い

―理想(vision)と同時に、理念(mission)も掲げられています。

ビジョンとミッションって、起業家さんや経営者さんがよく間違えられる部分ですが、理念(Mission)は、毎時毎分毎秒、思っていなければならないものです。僕らのミッションは「世の中を『さらに1㎜でも』よく」。平たく言えば、今に満足するな、もっと先を目指そうぜ、ということなんです。ただそればっかり言っていると、どうもメンバーが疲弊することが分かって、お金だけじゃなく、精神的にも成長しましょうね!っていうことをよく言っています。これはCANTEC含めてなんですけど、たとえば営業中に困ったおばあちゃんとか犬がいたら助けるようにして、と言っています。また、マインド的なところで言えば、ミッションのほかにも「行動指針」というものがあって、それを毎日謳って、何か問題が起きたときはそこに立ち返るように、とメンバー達に言っています。

―行動指針とは?

「スピード×3」「できる人ができるコトをする」「細事に尽くす」「現状を疑う」「徳ありき」「感謝を稼ぐ」という6つのルールです。「スピード×3」は、一回、単発でスピードが速かったから良いのではなく、「できるまで何度でもスピード感をもってやれ」ということ。いいかえれば「早くて、しつこい」です。「現状を疑え」は、100点取ったつもりでも、実はまだ60点かもしれない。だったら自分を疑って「落とし」がないか調べて、さらには周りも「落とし」がないか疑ってあげるということ。また、「仕事って何?」と言われると、僕は「持続可能な人助け」と言っているのですが、それを反映するのが「感謝を稼ぐ」という行動指針です。「助け(ニーズ)に応える⇒対価を得る⇒持続可能になる⇒価値を向上させる⇒さらに高い感謝を得る」の繰り返しです。

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―行動指針もユニークですが、御社で採用されている“ビジネスネーム”も面白い制度ですね。

CANTECからですが、ビジネスネームはもともと効率的な理由から始まりました。というのも、第1号社員が、僕の本名(品田)と同じ姓だったんです。そうなると結構大変で、「あのー、下の名前はー?」って電話掛かってくるたび毎回聞くのもどうかと。さらに、その人の前職(社員3000名全員ビジネスネームにしている会社)でビジネスネームが既にあったので「それ面白い!」と思って、自分もフルネーム変えちゃって弊社でもビジネームを採用したんです。やってみると結構キャラ立ちするんですよ。例えば、メンバーに「峰 不二雄」っているんですけど名前だけでウケますよね。あとは、すごくガタイが良くって、ホワっとした雰囲気の営業が入社したので「熊野風山(くまのふうざん)」という強そうなビジネスネームにしました。そしたら営業先では「プーさん、プーさん」って言われていたりしていて。ふざけてますけど、この結果、その人“らしさ”を円滑に印象づけることができているんです。

―確かに、名前は最初の接点できっかけになりますもんね。ところで、司馬社長のビジネスネームの由来も教えてください。

「司馬遼太郎」と「中村天風」です。僕は大学を卒業した後、なんとなく起業した方が良いのかな、と思って、ITソフトウェアの会社で営業をやりながら、ビジネススクールに通ってたんです。そこでいろんな経営者の方とお会いしたり、著書を読んだりして「なぜそのビジネスを始めたのですか?」と問い続けてました。結局、その答えは千差万別で、ひとつの答えがある訳ではないことに気付いたんです。あたりまえですけど。その中でも「働く意味」から「人として生きる意味」の答えに強い影響力があったのが、無能唱元さん、中村天風さん、そして司馬遼太郎さんの3人。このうち、名前の響きから司馬遼太郎さんの苗字と中村天風さんの名前から頂いたわけです。

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ペットとして購入した犬型ロボット「aibo」は社員の癒しの存在に

 

チョコレートカフェに転身。その後、父の右腕となり売上9億の企業へ成長

 

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